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ゲノム~失われた大陸の秘密~  作者: Deckbrush0408
第四章【メガラニア王国編】
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いざ診察へ

村田はメガラニア総合病院の広大な正面を見上げ、あまりの大きさに思わず息を飲んだ。

建物のレンガ造りの外観は重厚で、歴史さえも感じさせるような立派さを漂わせている。

入り口には大きな赤い十字架のマークが掲げられ、その存在感に圧倒される。


「いやでかすぎんだろ..診療科目コンプリートしてんじゃないか?」

建物の大きさに思わず声が出てしまう


つい独り言が口をつき、村田は苦笑しながら自分の反応に少し照れを覚える。

パシフィス王国の病院ですら見劣りするほどの規模に、一瞬で彼の心は引き込まれてしまっていた。


早朝にもかかわらず、ロビーにはすでに多くの患者が座っており、

どこかざわついた雰囲気が広がっている。

村田は少し眉をひそめながら、順番を待つ患者たちの列を避けるようにして受付に向かう。


(とりあえずは受付だな..)

受付にたどり着くと、紹介状を取り出して窓口の係員に渡す。

係員は淡々とした表情で書類を確認し、村田に3階への案内を告げた。

問診票を渡されると、村田はペンを手に取り、淡々と問診票に記入を始める。

だが、思いのほか細かい設問が多く、何を書けばいいのか少し迷う箇所もあった。


そんなとき、突如、看護師の女性の鋭い声が廊下に響いた。

「む、ムラタさんいらっしゃいますか!?先生がお呼びです!」

看護師の声には明らかに緊急性が感じられ、村田の動きが一瞬固まる。


「村田は私ですが..すみません、まだこれ書いてる途中ーー」

村田は慌てて立ち上がり、未記入のままの用紙を片手に説明しようとしたが、

看護師はそんなことに構っている余裕もない様子だった。


「そんなのいいから!早く!」

彼女は村田の腕を軽く引っ張り、急かすようにして促す。

その焦りに押され、村田は用紙を脇に挟み、彼女に従って急ぎ足で診察室へと向かった。


「えっちょ、なんなんだ一体..」

村田は案内されるがまま、看護師に押されるように診察室へと入った。


「おお!君が噂の村田君だね?」

その声の主は、ロングパーマの赤髪にブラウンのフチなしサングラスをかけ、

剃り残した顎髭が特徴的な医者だった。

彼は緩く巻いた赤いネクタイに、羽織っただけの白衣をまとい、全体的に崩したスタイルで立っている。

その一風変わった風貌に、村田は思わず一歩引いてしまう。


「は、はい。あの、何か私変なことでもーー」

村田が状況を把握しようと恐る恐る質問すると、医者は突然両手を大きく広げ、顔を輝かせて叫んだ。


「魔力ゼロキターー!」

診察室に響き渡るその声に、村田はしばし言葉を失った。

圧倒され、彼が本当に医者なのかと疑いたくなるような勢いに呆然と立ち尽くしていると、

医者はそのまま勢いよく村田に詰め寄ってきた。


「握手しないか?ていうかしよう!してくれ!」

村田の返事を待つまでもなく、医者はずいと村田の前に立ち、

興奮で顔を輝かせながら手を差し出している。


「ええと..まぁいいですが」

村田は戸惑いつつも手を差し出すと、

医者は彼の手をがっしりと握り、そのまま思い切り引き寄せて抱きしめた。


「え....そんないきなり」

村田は驚きに目を見開きながら、顔が少し赤くなるのを感じた。

あまりの歓迎ぶりにどう反応して良いのか分からず、

軽く背中を叩かれるたびに体が緊張で強ばっていく。


「おお、すまない。最近ずっとルクス病患者の血液ばかり見ていたからね、魔力無しの患者が来ると聞いてつい..」

医者は名残惜しそうにハグを解き、村田の肩に手を置いて顔を覗き込むように微笑んだ。


「そちらに座ってくれ。診察を始めよう」

医者はようやく落ち着きを取り戻し、村田を椅子に案内しながら軽く頭を下げる。


「あぁ申し遅れた、私は血液内科担当のカルテだ。ま、紹介状に書いてあったから知ってたとは思うがね」

村田はようやく息を整え、改めて椅子に座り直した。

紹介状を手にするカルテの顔には相変わらず興味津々な表情が浮かび、

その目の輝きは少しも冷めていない。

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