宿探し
三人は『ノルデン』での食事を終え、次に宿を探しに街を歩き始めた。
アストリアの街は、雪に覆われた美しい景観が広がり、
石造りの建物や時計台が堂々とそびえ立っている。
ケイラが率先して道案内をしており、
ライトはその後を楽しそうについて歩き、村田は一歩下がって二人を見守るように進んでいた。
「宿、すぐに見つかるかな?」
ライトがケイラに不安げに問いかける。
その声には若干の焦りが感じられ、彼の小さな体が寒さで少し震えているのがわかった。
ケイラはそれを聞き、心配を払拭するように笑みを浮かべて答えた。
「えへ、私に任せれば秒よ秒!」
彼女は自信満々に胸を張り、ライトに向けてウインクを飛ばす。
その明るい態度に、ライトも少し安心した様子でにっこりと笑った。
しかし、現実はそう甘くなかった。何件も宿を当たってみたものの、どこも満室だった。
冷たい風が肌を刺すように吹きつける中、彼らの希望は次第に薄れていった。
「全然見つかんねぇな..他にあてはあるのか?」
村田が雪道に立ち止まり、眉をひそめながらケイラに問いかけた。
焦りの色が見え、彼の声には少し苛立ちも混じっていた。
「仕方ないでしょ..あと一つだけあるわ。そこがダメなら今日は野宿ね..」
ケイラの声には、どこかしら自信を失った弱さが滲み出ていた。
彼女の肩も少し落ちており、道案内をする足取りも以前より重く感じられる。
「こんな寒いのに!?風邪ひいちゃうよ!」
ライトは目を見開き、驚いた様子でケイラの方を見上げる。
彼の表情には焦りがはっきりと見て取れ、その小さな体が再び震え始めた。
「いや風邪じゃ済まないだろ..その最後の一つに賭けるしかないな」
村田は冷静さを保ちながらも、
早く解決策を見つけたいという焦りが心の中に渦巻いているのを感じていた。
ついに三人は、最後の希望である宿にたどり着いた。
玄関のドアを開け、冷たい空気を背にしながら空き状況を確認する。
心の中で祈るように期待を込めて待つ三人。
「え!一部屋だけ空いてる!?ほら..すぐに見つかったでしょ!」
ケイラは一瞬安堵の表情を浮かべたが、すぐにそれを取り繕うように、
自信満々な笑顔に切り替え、二人を見た。
彼女の声は高揚しており、心の底からほっとしたように感じられた。
「わぁよかった!おねえちゃんすごい!!」
ライトはその知らせに大喜びし、目を輝かせながらケイラを見上げて拍手を送った。
寒さを忘れ、彼の小さな顔には純粋な喜びが広がっていた。
「..ここにするしかなさそうだな」
村田は『一部屋』という言葉に内心焦りを覚えた。
ケイラがライトに何かしらの「イタズラ」をするのではないかという不安が脳裏をよぎり、眉間にシワが寄る。
しかし、宿の混雑状況を見てやむを得ないと判断し、渋々条件を飲んだ。
「はい決まりね!あぁよかった..」
ケイラは決断が下りたことにほっとしたように、ぼそっとつぶやいた。
その言葉には、少しだけ疲れと安堵が混じっていたが、同時に彼女のいつもの明るさが戻っていた。