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ゲノム~失われた大陸の秘密~  作者: Deckbrush0408
第四章【メガラニア王国編】
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首都アストリア

車が雪に覆われた一本道を進む中、やがて白銀の街が目の前に広がり始めた。

アストリア――雪国の首都は、まるで時間が止まったかのように静寂に包まれ、

常に降り積もる雪が町全体を覆っていた。


「ここが首都アストリアか..綺麗だな」

村田が運転席から街を眺め、重たい雪雲が広がる空を見上げる。

日の光は薄く弱々しく、それでも街全体を青白く照らし、

雪に包まれた建物や道路に幻想的な輝きを与えていた。

彼の肩にはダークブラウンのダッフルコートがしっかりと掛かり、

手には手袋をはめているが、寒さがじわじわと体に染みてくる。


色鮮やかな建物が連なる中、雪の重さで屋根がしなり、どこもかしこも凍てついた雰囲気が漂っていた。

建物の間には、精巧に彫られた石像や時計台が立ち、特に特徴的な大時計がその中央にそびえている。

大規模な病院も見えてきたが、その古めかしい建物は静かで、

まるで雪に飲み込まれたかのように沈黙していた。


「わぁ、これが雪!?白くて冷たい!」

ライトは興奮した様子で手を差し伸べ、ふわりと積もった純白の雪を掬い上げた。

彼はベージュの厚手のフード付きロングコートを着込み、

青いマフラーが首元にしっかりと巻かれているが、雪の感触に心を躍らせていた。


「さっむ、久々に来たけど相変わらず馬鹿みたいに雪が降ってるわね..」

ケイラは白い息を吐きながら、体をブルっと震わせた。

彼女の茶色のロングダッフルコートにはトグルボタンがしっかりと留められており、

白のニット帽が彼女の頭を覆っている。

首には白いマフラーを巻き、顔の半分近くまで覆われているが、

それでも冷たい風が彼女の頬を刺すように吹き付けていた。


「私はこの車停められるところ探すから、二人はそれ返却してきちゃって!」

ケイラは、後続の村田とライトに向けて大声で指示を飛ばす。

雪の降る静かな街の中に、その声はしっかりと響いた。


「わかった、じゃあ終わったらあの時計台の前に集合しよう!」

村田はケイラの方に顔を向け返事をした。


無事に返却を終え、村田とライトは時計台の前でケイラを待っていたが、

しばらくしても彼女の姿が見えない。


「あれ、まだ来ていないな..仕方ない、少し待つか」

村田は時計台を見上げつつ、雪で覆われた街並みを見渡しながら言った。


その間、ライトは興味津々に周りを見回していたが、突然、

「ねぇシュンこっち見て―!」と元気な声を上げた。


「ん、どうし――」

村田が顔を向けたその瞬間、何かが顔面にぶつかり、冷たさが一気に広がる。


「いぇえええい!引っかかったね!」

ライトは手を叩いて、満面の笑顔でこちらを見ていた。

彼の瞳には雪遊びの無邪気な楽しさが宿っていた。


「まぁ..雪見るのも触るのも初めてだもんな..そりゃやりたくもなる」

村田は顔に付着した雪を手で拭いながら、ライトが街の子供たちを見て真似たのだろうと考える。

それでも、彼は笑みを浮かべながらも、反撃の意志を固めていた。


「けどな、ライト。俺に当てたってことはだ、自分も当たる覚悟があるってことだよな?」

村田は低くしゃがみ込み、手に雪を掬い取り、それをぎゅっと握り固めた。


「あ..うぇ」

ライトはその動きを見て、嫌な予感を察知したように、言葉を詰まらせる。

後ずさりしながら、視線が怯えたものに変わっていく。


「大人の力をなめるなよっ!」

村田は野球の投手のようにフォームを決め、全力で雪玉を放つ。

弾丸のような雪玉は、恐ろしい速度でライトの小さな顔に一直線に飛んでいった。


「ぐぇえぇぇえ!目、目がぁあああああ!」

ライトは顔に直撃した雪玉の冷たさに叫び、両手で顔を押さえながら、じたばたと地面に倒れ込んだ。


「いい戦いだった..」

村田は勝利の余韻に浸るように、誇らしげに微笑んだ。


しかし、そこにケイラの冷たい声が響いた。

「いやあんたら何やってるのよ..周りにすっっごい変な目で見られてるわよ?」

ケイラは腕を組み、時計台の近くでじっと二人を見ていた。

彼女の表情には呆れが滲んでおり、周囲の人々の視線を指摘する。


「ん....あっ。き、気づいてたなら止めてくれよ!」

村田は周りの人々の視線に気づき、顔が少し赤くなった。

恥ずかしさに苛立ち、ケイラに少し荒い口調で返す。


「嫌よ..こうして話しかけるのも正直躊躇したんだから」

ケイラは冷ややかに微笑みつつ、肩をすくめた。


「....いっ行くぞライト!そうだケイラ、腹減ったから昼飯にライトしよう!」

村田は話題を変えようと、少し慌てた様子でライトを引っ張り上げ、話を切り替える。

まだ顔に雪をつけたままのライトを急いで連れて行こうとする。


「はいはい、いいお店知ってるからそこ行きましょ」

ケイラは少し呆れたような表情を浮かべつつ、

軽くため息をついてから、二人を先導するように歩き出した。

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