守るべきもの
夜も更け、辺りは静まり返っていた。
車の中で、疲れた身体を休めながら、村田は重い口を開く。
「俺が撃たれた後、ライトはどうやってあいつを..?」
村田は自分が意識を失っていた間に起こった出来事を理解しようとしていた。
ケイラは、一瞬目を伏せて、撃たれた後の光景を思い出しながら、できる限り村田に説明し始めた。
「ライト君はまるで別人みたいだったわ。急に彼の周りに炎の刃が現れて、マラキを圧倒したの」
「まじか、そんなことが..」
村田はケイラの話を聞きながら、目を丸くし、驚きを隠せなかった。
ケイラは、少し誇らしげに笑みを浮かべたが、その表情はすぐに曇った。
「とてもかっこよかったわ!でも、それと同時に恐怖もした」
彼女の声は次第に落ち着いたトーンへと変わり、明るさが消えていった。
誇りと不安が混じり合った表情で、村田を見つめる。
「得体の知れない力、それに..私の目の前にいた彼は本当にライト君だったのか..それとも、全く別の何かが彼の中にいたのか..」
ケイラは、真剣な眼差しで遠くを見つめ、静かに続けた。
村田はしばらく黙って考え込んだが、静かに口を開いた。
「でも、ライトはその力で俺らの事を守ってくれた、まだ10歳の子どもが大人の俺たちをだ。その事実だけで十分だ」
彼は確かな口調で言い、ライトを信頼する思いを強く表明した。
ケイラはその言葉を聞いて、少しうなずいた。
「..そうね、まずは私たちが彼のことを信じてあげないとダメよね。でも、もし彼が暴走でもしたら..」
彼女の声には心配と不安が混ざっており、表情は再び険しくなった。
村田は静かに、しかし力強く応えた。
「その時は俺らが間違った道に進まないように導いてやる、それが大人の役目だ」
彼の言葉には決意が込められており、彼自身もライトを支える覚悟を持っていた。
ケイラはその言葉に静かに賛同し、ゆっくりとうなずく。
不安は完全に消えたわけではないが、村田の決意に支えられ、少しだけ心が軽くなった。
二人は静かに目を閉じ、疲れ果てた体をシートに預ける。
車内には静かな寝息が響き、夜の静寂が再び彼らを包み込んだ。