応答無し
「シュン..嘘だよね?起きてよ..」
だが、何の反応も返ってこない。
その静寂が、彼の心にじわりと重くのしかかる。
ケイラは目の前の光景に衝撃を受け、言葉を失っていた。
ライトはようやく事態を理解し始めたが、まだ現実感が薄い。
村田が自分を守るために犠牲になった。
その思いが、胸の中でじわじわと広がっていく。
「僕は..また....守れなかった..」
ライトは自責の念に駆られ、つぶやいた。
「彼はもう死んだけど..安心して、今度は僕が君を守るよ」
マラキは柔らかく微笑んで、ライトに近づきながら糸を強く引き締めた。
「そもそも、イブ、まだ子どもである君が大の大人を守るだなんておかしな話だ、普通逆だろう?」
マラキは嘲笑うように言った。
彼の目には愉悦が溢れ、ライトの無力さをあざ笑っている。
「違う..僕には守る力があるんだ..それなのに」
ライトは震えながらも、必死に否定の言葉を絞り出す。
「力の使い方なんてこれから僕と覚えていけばいいじゃないか。君は一緒に、僕と暮らすんだ、永遠にね..」
その声は愛情に満ちたものでありながら、背筋が凍るほどの狂気をはらんでいた。
一方、ケイラはその場で震えながら、必死に立ち上がろうとしていた。
だが、失血により体は思うように動かず、片腕を失ったことによってバランスも取れない。
血が床に広がり、彼女の視界はぼんやりと揺らいでいた。
それでも、ライトを守りたいという一心で、彼女は足を踏み出す。
「何動いてるの?」
マラキは冷淡な声で言い放つと、魔法銃を素早くケイラに向ける。
その瞬間、銃声が部屋に響き渡り、ケイラの右膝が無惨にも撃ち抜かれた。
「ぐあっ…!」
ケイラは痛みに叫び声を上げ、その場に崩れ落ちた。
貫かれた膝からは血が流れ出し、激痛が彼女の体を襲う。もはや立ち上がることすら叶わない。
「邪魔しないでもらえるかな?君の体にもちょっとばかし興味はあったけど、もういいや..」
マラキは銃口をケイラの頭部に向けた。
「....ん?」
マラキは引き金に指をかけようとした瞬間、違和感を覚える。
ライトを拘束していたはずの糸に急に張りがなくなり、力が抜けたのだ。
彼はすぐに後ろを振り返るが、そこにライトの姿はなく、糸がぐったりと床に落ちていた。