交代
「ケイラ!!すまん、助けるのが遅くなって..」
村田は急いでケイラのもとへ駆け寄り、彼女の傷の止血を始めた。
「いいのよ..私が一人でやるって言ったんだから。キネティック・サージで動脈も締めた..なんとか大丈夫よ」
ケイラは痛みに耐えながらも、力なく笑ってみせた。
「おねえちゃん..」
ライトはその姿に心配そうに声をかけた。
「ごめんね..私はライト君への愛が足らなかった。だからあいつに負けた..ふふ、もうこんな奴、ライト君には必要ないでしょ?」
ケイラは自嘲気味に笑い、ライトに問いかける。
「確かにおねえちゃんはどうしようもない変態..だけど、今のようにいざって時は全力で僕たちを守ってくれるかっこいいおねえちゃんだよ」
ライトは真っ直ぐにケイラを見つめ、優しく微笑んだ。
その言葉はシンプルだが、真心が込められていた。
「ありがとう、やっぱりライト君は優しいわね。なんか..余計な言葉があった気がするけど..」
ケイラはその言葉に一瞬戸惑いながらも、笑顔を浮かべた。
「それにおねえちゃんにも僕が必要なんでしょ?さっきも約束したじゃん、僕の血をいっぱい飲ませろってさ!」
ライトは、少し照れながらもケイラを励ますために言葉を続けた。
「そうだった..私たちは相思相愛..ね。じゃあ、後で覚悟しておきなさい」
ケイラは笑みを浮かべ、震える左手でライトを指さす。
息が荒く、痛みに耐えているが、その瞳にはまだ希望が宿っていた。
ライトは笑顔で快く頷く。
「じゃあシュンはおねえちゃんをよろしくね」
その瞬間、ライトが静かに前へと一歩踏み出した。
「..ライト?まさか――」
村田が慌ててライトを制止しようとするが、その言葉は届かなかった。
「今、あの人を止められるのは僕しかいない。怖い..けど、守ってみせるよ」
ライトはその言葉を正直に告げ、決意を固めた。
村田もケイラも、言葉を失い、その小さな背中を見つめる。
彼の決意に触れた二人は、もう彼を引き止めることができなかった。