糸
「よそ見してんじゃないわよ!!」
ケイラがすかさず斬りかかる。
マチェーテが仮面の魔人に向かって勢いよく振り下ろされた。
「っと..これくらいの魔力か」
彼は冷静に糸鋸を持ち上げ、ケイラの斬撃を見事に受け止めた。
だが、ケイラが見たのは、刃がないはずの部分で攻撃が防がれているという異様な光景だった。
「なっ!?どうして!?」
ケイラは驚愕し、瞬間的に動きが止まった。
存在しないはずの刃で受け止められた事実に、頭が混乱した。
「どうしてだろうね?」
仮面の魔人は冷たい笑みを浮かべ、挑発するかのように答えた。
(どうやって受け止めたの!?わからない..けど、早めに決着をつけた方がいいわね..)
ケイラは混乱しながらも、戦いを優位に進めようと警戒を強めた。
彼女は素早く構えを変え、マチェーテを体の後ろに隠すようにし、
ステップを踏みながら再び斬りかかる。
そのステップはまるで酔っ払ったかのような不規則さを見せ、
相手に動きを読ませないための工夫だった。
「構えを変えたね、でも無駄だよ。体の動きに連動して魔力が変換されているのが丸わかりだよ?」
仮面の魔人は不敵に笑いながら、ケイラの攻撃を再び容易く受け流した。
彼は糸鋸を軽々と操り、彼女のすべての動きを見切っているかのようだった。
「その目、そこまで見えるの?気持ち悪いから勝手に見ないでくれる?」
ケイラは挑発するように言ったが、内心の焦りは隠せなかった。
「仮面を取ったのは君だろう?というより、逆に君は見えてなさすぎじゃないかな?」
仮面の魔人はまるでケイラを嘲るかのように、冷たく答えた。
そう言いながら、彼はゆっくりと何かを引っ張るような動作をした。
「なっ!?」
突然、ケイラの右手首が強い力で引っ張られ、彼女はバランスを崩した。
その瞬間、戦闘の流れが一変した。
(手首が引っ張られる!?一体何が..)
そのとき、仮面の魔人の糸鋸が彼女の右ひじに向かって振り下ろされ、迫ってきた。
ケイラの瞳が鋭く輝き、その刃を見据える。
(刃の部分に何か張られて..これは..糸?)
ケイラは、糸鋸の刃に極細の糸が張られていることに気づくが、遅すぎた。
糸鋸は、彼女の右ひじに深く食い込み、次の瞬間右前腕が無情にも切断された。
「ほら、『よく切れる』だろ?」
仮面の魔人は冷淡に言い放ち、
切断面から大量の血が飛び散るのをじっくりと観察しながら感想を述べる。