突入
「これをジレ救出前にあいつら目掛けて投げて血をまき散らす、作戦は以上だ」
村田が簡潔に作戦を説明した。
「なるほど、ライト君の血には魔素が大量..だからそれで攪乱しようってことね」
ケイラは理解した様子で頷いた。
村田はさらに頷き、
「まずは小屋まで向かおう。リオ、先導してくれ」
と指示を出した。
四人は慎重に進み、何事もなく小屋まで到着した。
周囲には静寂が漂い、ただ風の音だけが耳に届く。
小屋の扉の隙間からはわずかな光が漏れ、そこにジレがいることを確信させた。
村田が慎重に周囲を見回し、低く声を出した。
「..ジレ以外の魔力は感じるか?」
ライトが目を閉じ、集中して魔力を探った。
「中には一人しかいないと思う..リオさんどう?」
「あぁ、俺も兄貴の魔力以外感じない」
リオも同意した。
「よし、開けるぞ..」
村田は緊張を抑えつつ、扉にゆっくりと手をかけた。
古びた扉が軋む音を立て、ゆっくりと開かれていく。冷たい空気が四人を包み、緊張が走る。
薄暗い部屋の中央には、ベッドが一つ置かれており、その上には肩に血をにじませたジレが横たわっていた。
「兄貴!!」
リオは真っ先にジレのもとへ駆け寄り、心配そうに彼を揺すった。
「ん....リ、リオ..どうして..ここに..」
ジレがゆっくりと目を開け、か細い声で弟の名前を呼んだ。
「助けに来たに決まってるだろ!」
リオは涙をこらえながら、必死に言葉をかけた。
「肩からの出血が止まっていないな、早く安全な場所に連れて行こう」
村田はジレの様子を観察しながら冷静に言った。
「もう大丈夫だよ兄貴..行こう」
リオは安堵の表情を浮かべ、ジレを背負おうとする。
しかし、村田の心には何か不穏な感覚が広がっていた。
(それにしてもなんだ..この小屋の違和感は..)
彼は何か見落としている気がしてならなかった。
ジレがか細い声で話すのを聞いたリオの顔には、一瞬の安堵が浮かんだが、その直後、ジレの言葉に不安がよぎった。
「お前ら早く逃げろ....あいつは..」
その瞬間、ケイラは背後から不気味な魔力の気配を感じ、警戒の声を上げた。
「..!後ろ――」
ケイラの警告が耳に届くや否や、四人は振り向こうとした。
しかし、その反応も間に合わないほどの速さで、突然轟音が部屋中に響き渡る。
リオは一発の銃弾により左胸を貫かれ、その場に崩れ落ちた。
血が一瞬にして広がり、リオの体から力が抜けていく。
「お..流石レムリア国産の魔法銃、素晴らしい精度だね」
その声の主は、扉の裏に隠れていた仮面の魔人だった。
片手で魔法銃を構え、その銃口はまだリオに向けられていた。
「こいつっ..!」
ケイラは怒りに燃え、すぐさまマチェーテを抜き、魔人に斬りかかろうとした。
だが、魔人はすばやくケイラに銃口を向け、冷酷に制止する。
「あんた..シャダール族じゃないわね?」
ケイラは鋭い眼差しを魔人に向け、にらみつけるように問いかけた。