危機
突然、矢が放たれた。
（..狙いはライト君か！）
ケイラの脳裏に警告が走った。
ケイラは急いでライトの前に立ち、マチェーテを振るい何とか矢を弾いた。
「だ、大丈夫か！！」
村田はハンドルを握り、後ろを見ながら叫んだ。
「当たり前でしょ！てかあんたは運転に集中しなさい！！」
ケイラが村田に声を荒げて注意した。
（それにしてもどうしてライト君だけを..？運転席の村田を狙うと思ったけど..）
ケイラは仮面の人物たちの狙いがわからず、疑問を抱いた。
奥から一回り体格の大きい人物が登場し、周りに報せるように指先から小さなファイアを出したり消したりを繰り返す。
その異様な光景にケイラの眉間に皺が寄った。
「あいつが魔人ね！」
その仮面の魔人が弓を引き絞り、矢を放った瞬間、ケイラの胸元に矢が突き刺さった。
「....えっ？」
彼女の服に血が染み始めた。
「ぐっ..あぁ..！」
彼女は後ろに倒れ、息を詰まらせながらも声を絞り出した。
「おねえちゃん！！」
ライトは手を止め、ケイラの元に駆け寄った。
仮面の魔人は再び矢を放つ準備をしており、その間に周りが矢を放つ。
彼らの狙いは正確で、無慈悲だった。
「フレイムブラスト！！」
彼の魔法が空間を燃え上がらせ、大量の矢は到達する前に灰と化した。
「おい！何があったんだケイラ！？」
村田は前を向いて運転しながら叫んだ。
（くそっ！とりあえずさっさとここを抜けるしかない！）
村田は心の中で叫び、バルブをさらに回す。
しかし、車の速度が落ち始めていることに気付く。
仮面の魔人が矢を放とうとしたその時、突如後方から二人が乗るガソリン車が現れた。
「うおおぉぉ喰らいやがれぇぇええ！！」
ジレが身を乗り出し、叫びながら銃を発砲した。
炎を帯びた弾丸が仮面の魔人の頬を掠め、火花が散った。
周りの仲間たちがガソリン車目掛けて矢を放ったが、リオの高い運転技術により矢を華麗に避ける。
魔人から放たれた矢が車体に深々と突き刺さる。
「はっや..どんな弓を使ってるんだよ..」
リオは表情を変えずぼそっとつぶやく。
その冷静さが、状況の異常さを際立たせた。
「おいおい大丈夫か？何があったんだ？」
車は停車し、ジレが少し焦りながら声をかけた。
彼の顔には微かな動揺が見えた。
「どの口が言ってんだ..こうなるのをわかった上で俺らを先に行かせたんだろ？」
村田は怒りを抑えきれずに言い返す。
「いや..これは想定外だ。とにかくここを抜けるぞ！」
ジレは冷静に返すが、その声には緊張が隠せなかった。
彼の目は必死に前方を見据え、逃げ道を探していた。
「仕方ない..ライト、ボイラーに火を頼む！まずはここから逃げるぞ！」
村田は必死の叫びでライトに指示を出した。
ライトはケイラを心配しながらも、決意を固めてボイラーに火を灯す。
その時、矢が再び飛んできた。
即座に反応し、車は急発進するが何本かが車体に突き刺さる。
「今あいつらは俺らを狙っている、さっさと行け！」
赤いウエスタンハットを抑えながら、ジレが大声で叫んだ。
エンジンが再びかかり、蒸気自動車は轟音と共に動き出す。
