追跡
「はぁ、なんだかメンドクサイ奴らに目つけられたわね..」
ケイラはため息をつきながら助手席に座る。
彼女の表情には苛立ちと疲れが見え隠れしていた。
「あの人達追ってくるかな?」
ライトはボイラーの炎を維持しながら不安そうに尋ねた。
「来るでしょうね、ああいうタイプは結構しつこいわよー。それにあいつらの車はガソリン車..追いつかれるのは時間の問だ――」
ケイラは怠そうに言いながらも、内心では緊張感が高まっていた。
突然、ガソリン車が右横に並び、先ほどの陽気な男が手を振りながら現れた。
「やぁやぁお三方、また会ったねぇ!!奇遇キグー」
「うわ来た..」
村田は顔を引きつりながら小声で呟いた。
「なぁー頼むよ、うちに来てくれよー」
陽気な男は駄々をこねる子どものように叫んだ。
「そんな趣味の悪い車に乗ってる奴と一緒になんて行きたくないわよ!」
ケイラは声を荒げ、怒りを露わにした。
「んーそうか、なら..」
陽気な男は特徴的な赤いウエスタンハットを深くかぶりなおし、目が冷たく鋭く変わった。
「強行手段で行かせてもらおうか、車を停めて少年をこちらに渡すんだ。そうすれば君たち二人には危害は加えない」
男は拳銃と思われるものを素早く腰から取り出し、ケイラに銃口を向けた。
ケイラは瞬時に反応し、鋭い目つきで男を見返した。
「本性表したわね..どうしてそこまでしてライト君を?」
「俺らの仕事は有望な人材をスカウトすることだ。悪いがこんな逸材を逃すわけにはいかないんだわ」
男は打って変わって冷静に答え、その目には冷酷な決意が見えた。
「そう、私たちあまり乱暴は好きじゃないの..やめてほしいわ..」
ケイラは急に弱気になったように見せかけた。
彼女の声には一瞬の脆さが混じり、男たちを油断させるための策略が垣間見えた。
「おや?結構気が強い子だと思っていたが意外だな。だが安心してくれ、少年を渡してくれさえすれば――」
男が少し笑みを浮かべながら言い終わる前に、突然轟音が響く。
驚きながら男が車のドアを見ると、マチェーテが車のドアに深く食い込んでいた。
男の顔には一瞬の恐怖が走り、その目は驚愕に見開かれた。
「この車、借り物なの。だから傷がつくと困るの、分かる?」
ケイラはイラつきを含めた笑みで言う。
彼女の目には冷酷な光が宿り、その手にはもう一つのマチェーテが握られていた。
「あ..わっかりました..」
男は上ずった情けない声で答える。
彼の顔には恐怖が浮かび、その手はわずかに震えていた。
蒸気自動車は速度を上げて離れていった。
村田はハンドルを握り直し、心の中で安堵の息をついたが、緊張は完全には解けなかった。
(なんだあの女..怖すぎるだろ!?てか車のドア..)
男は内心で恐怖と混乱を感じながらも、表情を取り繕っていた。
「なぁ兄貴、今回は諦めようよ..あの女性かなり強いし、兄貴の身が心配だよ..」
ガソリン車を運転しているスキンヘッドの男が心配しながら言った。
彼の声には本気の恐れと兄への心配が込められていた。
「お前がそう言うくらいなら相当強いんだな..だが逆に考えろ..これは二人の優秀な人材を手に入れるチャンスだとなぁ!」
男はポジティブに捉え、ガソリン車は追いつくべく加速し始めるのだった。
男たちの決意は、再び彼らを追い立てる燃料となっていた。