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第7話 集いとなにかの始まり?

「出来ましたっ!」

領地の相続手続きのための書類。カカルがうれしそうに持ってきた。

というかここはまだ、あの大広間での昼食の出来事の続き――。



☆☆☆☆☆



 私が大泣きしていた時。一連の出来事に感動したカカルが、

「でしたら、今、皆さまがいる時に書類を作ってしまいましょう」

ってことで、ユトが持ってきたタオルで涙を吹いている最中に、こんなこと言ってカカルが相続証明書と見届け人のサイン用の書類を持ってきた。

「……え?」

「はい。これで大丈夫だと思うのですが、リューリ様の確認をお願いいたします」

というか……もう出来たの?と驚いて、カカルから受け取った。

「う……ん」

私がカカルから書類を手にした時に、ユトも隣で一緒に見た。

「……これ、本当に今作ったのか、カカル……」

「はい。私の専門分野ですから……」

なんでもない事のように、あっけらかんと。カカルはニコニコとしている。

「どれ」

アルバートがやってきたので、書類を手渡す。

「……本当だ。今さっき作ったものとはとても思われない……」

「でしょ。カカルは、うちの商会でも一番の能力を持っているんだ」

そう言ったのはマーカス。聞いていたカカルは顔をうつむけた。

あまりいい話ではない感じで。

「マーカス……」

まだ泣いた時にわめいたせいで、ダメージで声がかすれ気味の私に、マーカスは笑顔でうなずく。

「親父さんのところにいたんだけどね。

女というだけで、重要なことを任せてなかったんだよな。

どう見てもカカルの方が早いし、正確なのはわかっても、でも元からいた連中はおもしろくないんだろうな。女は隅で雑用してろ……だったから。

だから、親父さんのところから引き抜いてきてたんだよ。

その時、ちょうどこのお屋敷のことがあったんで、連れてきたというわけ。

あんたならカカルも、同じような理由で干されてたナンティも十分に使いこなしてくれると思えたんでね。どう。使える連中だろ?俺、けっこう見る目があるからね」




 まったく。自分のことのように話すマーカス……こういうノリの人、大好きなタイプだわ。

「……すみません。こんな時に暗い話で……」

辛そうな顔のカカルに、私は自然と笑顔になっていた。

「話したのはマーカスでしょ。それにうちでは大歓迎だよ、カカル。

私は本当に運が良かったんだね。でも私は、すごくこき使うかもよ」

「はいっ、よろこんで」

なんか居酒屋の店員さんのような状態になっているけど、笑顔のかわいいカカル。その上、仕事が早いなんて最高じゃない。それに……胸大きいし。まぁ、それは別として。

「よかったな、リューリ」

「……うんっ」

笑いかけてくれるアルバートに、少し緊張気味の私。婚約の申し込みを断ったばかりだもんね。

でも、アルバートはそれを受け入れて、いつもと変わらない態度で接してくれる。

「どれ、私が見てもいいかな?」

「はい、どうぞ」

マリアーナもやってきて、私の隣に立つ。困惑気味のアルバートから書類を受け取って

「なるほど。これなら問題はないな。では……」

見届け人用の書類をテーブルに置いて……。メアリに羽ペンとインクを持ってこさせると、躊躇なくサインをし始める。

「……それと……」

「え……ちょっ、マリアーナ様ぁ!?」

自分の剣で右手の親指を傷つけてるっ。いたそっ。



 「ええ。血判って……そこまではっ」

ユトもめずらしく動揺してるよ。どういうこと!?

「血判のサインは、その見届け人が『この人物のことは私が命をかけて証明します』っていう絶対的な信頼を証明することになるんだが……姫さんがそれ、やるか?」

マーカスも顔が引きつってるよ。って、ちょっと待って!これ他人ごとじゃないって。

「マリアーナ様っ。そこまで……」

「いいんだ。私がそうしたいと思った。それに、あの場面を見てこんな素晴らしい領主と仲間たちの絆を信じたくなったんだ」

爽やかな笑顔のマリアーナ……。いやぁ……サイコーだぜ。



 で、アルバートも血判っ……えぇ。モーリーとロディもぉっ!?

「マリアーナ様がやっているのに、俺たちもしないなんて……でもちゃんと見届けたからね」

「いやいやいや……それはっ」

「僕もちょっと感動しちゃったから。信頼に値する人物だなとは思えたよ、リューリは」

止める私に、モーリーもロディも、それぞれの血判の理由を話してくれる。

「皆さまはちゃんとわかってくださっているのですね」

ユトの笑顔が清々しすぎる……。




 こんなことになるなら、さっきから考えていることを、マーカスにぜひお願いしないと、ね。

「ねぇ、マーカス。この書類のサイン、やっぱりあなたにお願いしたいんだけど……」

「ああ、心配すんな。この後に親父さんのとこに寄ってから、親父さんと俺の……」

「ううん。あなた(・・・)にお願いしたいんだけど……。あんなお願いしたんだけど。お父様はすごい方だけど、私がお世話になるのはマーカスなんだと思えたの。勝手なことばかりでごめんなさい」



 

 私はすごく勝手だ。あんなお願いしてたのに。でもこの書類にはマーカスにお願いしないと思えたんだもの。私のことを知ってくれているのは、マーカスのお父様じゃないから……。

マーカスのお父様はすごい人――と設定はしたけど、ね。

「私が信頼に値するかどうか。知っているのはマーカスじゃない。だったら、マーカスにお願いしたい」

「……あんたなぁ……。この顔ぶれで、俺だけが見劣りするでしょうが……」

「そんなことないと思うけど……。それに私のことを知っているのは、マーカスでしょ?」

笑顔でマーカスに圧をかける。マーカスは深いため息をついた。

「……わーかった。後悔するなよ」

しぶしぶサインをしてくれるマーカス。

「ありがとう。これで立派な……え?」

親指をナイフで傷つけて……あなたも……か。

「……マーカス。あなたまで」

「この流れっで俺だけしないのも嫌だよ。それに……俺が最初にあんたにほれ込んだんだし。こうしたいからこうした」

「……俺が最初だろう?幼馴染だぞ」

ここでアルバート乱入。



 「……ツッこみたくもない……」

アルバートとマーカス……マリアーナまで参戦。もう私の書いた物語のこと――なんてもの無視されまくってるなぁ……。



 「……リューリ様。よかったですね、本当に」

ユトが持ってきた……とんでもない見届け人のサインとその赤々しい親指の血印…みんな、それぞれ指の形とか指紋って違うから面白いなぁ……って話じゃない。書類の話。

「明日でもこれを役所に届けないとね」

「はい。それはお任せを」

ユトは恭しく、それをエルムに持ってこさせた木箱に閉まった。





☆☆☆☆☆





 こうしている間にも、デザートが運ばれて――。

「……そのルガーソは、我々に預けてもらってかまわないか」

マリアーナが真剣な顔で私に話しかける。内容はルガーソの身柄をマリアーナたちに引き渡す――ということなんだけど。

マリアーナたちは、フロテリューダのとの関係を知りたいということみたい。

「それは……お願いしたいですが」

「でも話の限りでは、フロテリューダ伯に使い捨てとして利用された感じだろうな」

直接話をしているマーカスが感想を口にした。

「そうだな。しかし領主を騙り、勝手に重税にした上にそれを横領しようとしたとなれば、死罪になっておかしくない。裁判権はここの領主代理であるあなたにある。必要なら騎士クラスの見届け人が二人以上いれば、この場で裁くことも可能だぞ」

「……それって……」

この場で死罪ということですか?……それは悩んでる。でも……厳しく対処しないといけないことも私自身、理解しているつもりでいる。

 ユトを……見そうになって慌ててやめた。ユトだってあいつにはひどい目にあっている。内心穏やかじゃないと思うから。



 「マリアーナ様にお預けいたします。王都で、しかるべき裁判を経て必要な処罰を与えてください。

そのための協力は惜しみませんから」

ごめんなさい、逃げました。でも、わたしではそこまで必要な判断ができない。『極刑』としか浮かんでこないから。

「懸命な判断だと思う。あなたは名君になれる資質があるかもしれないぞ」

「それは過剰評価ですって。私は(らく)して生きていきたいと思う方なので」

真逆の道を歩んでいる気がするのですが、この場所での責任は果たそうとは思っています。

「だいたいそう言う人って、たいがい、人のために動いちゃうんだよね」

ロディの言葉は、耳が痛いというのかな。

そのロディはというと、夢中でドライフルーツを口に運んでいる。



 桃のような果物――カツールという果物をエルムが買ってきたから、タッタ村で教えてもらった『真空乾燥』で作ってみたドライフルーツみたいなやつ。ユトが作ってくれたんだけど。

休みなく口に運んでいるから、ロディはこういう食べ物が好きなのだろうけど。そこまで設定はしなかったなぁ。

ユトが中級ぐらいの魔術を使えるっていうから、頼んで作ってもらったけど。魔術って、執事なら必要なスキルらしい……。本当にすごいな。



 この世界は限られた人しか、魔術が使えないように設定してた。

ここでは聖騎士は全員、魔術は使えるけどね。

あの血判の傷は、マリアーナがあっという間に皆の分も治してたから。



 

 さっきのドライフルーツは、ロディがかなり気に入ったようなので、作り方とユトの話をすると、

「執事のスキルってそこまでいる?僕の父上の執事は魔術なんて使えないよ。

そんなスキルがあったら、伯爵レベルにも仕えることできるんじゃない?」

「ユト。経歴詐称した?」

ロディの話を聞いて思い出したこと。



 ユトはここへ来た経緯として、働くところがなくて困っていた時、サリュマン父様に拾ってもらった的な話をしてたけど。



 実はそれは嘘じゃないの?本当はすごい家のお坊ちゃまでは?という疑いの視線を送ると

「本当ですっ!!私は旦那様に拾っていただいたのですから。

中級魔術は子供の時からの鍛錬で習得いたしました。

私の家は、代々伯爵家にお仕えする家柄でしたので。ただし、私が子供の頃にはもう、その家が没落してしまったのです。

両親が亡くなっていたことと、祖父もその後すぐに亡くなってしまったことで、私には後見人がなく。

そのためにどこにも雇ってもらえなかったのです。しかし旦那様はそんな私のことをかまわず雇ってくださったのです」

「そうか……伯爵家に勤めていたのなら、それも納得いくけど。君のおじいさんが仕えてた伯爵家ってどこ?」

必死に説明していたユトに、ロディがそんなことを尋ねた。

「ジョンダー・カーヴァント様……です」

どこか苦しそうなユト。辛い思い出なのかもしれない。



 「……先代王のルーリャン王の右腕と言われた右大臣の方だ。

だが跡継ぎが病で亡くなり、ジョンダー様も亡くなって、カーヴァント家は没落した……と聞いていたけど。君はあのジョンダー様に仕えていた執事の血筋だったのか」

これはモーリー。ユトはそんなすごい家の出身だったんだ。

「……過去のことです。私が生まれ育った時は、ジョンダー様は病の床にいらっしゃいました。

祖父はとても厳しい人でしたので、執事以外の仕事はするな。どこのお家に仕えても恥ずかしくない仕事ができるようになれ。そして主はおのれの命に代えてもお守りできるように。と、魔術、剣術。体術など必要なものは教えられました。

今はこのようなすばらしいご主人に出会えましたので、己のすべてを捧げると誓っております」



 ユトの笑顔が私に向けられる。

「……あなたの忠誠に値するだけの主人かどうかはわからないけれど。

それでも傍にいてくれるとうれしいな」

「はい。リューリ様」



 実はこのセリフっ。いつか言ってみたいと思ってたんだ――っ。

私の大好きな小説の、主人の伯爵令嬢が自分の執事に言うセリフなんだよねぇ。

その小説は、その執事と令嬢は結ばれるんだけど……。まぁ、ここはこのセリフがピッタリでしょう!

でも本当は「うれしい()」じゃなくて「うれしい()」なんだけどね。

それぐらいユトの忠誠がうれしい。それに応えられる主人かどうかは……別として。



 「なんだかどこか(・・・)で聞いたことある(・・・・・・・)セリフだけど、ユトの家柄とスキルなら、私のお父上に仕えても問題ない。それは私が保証しよう」

え?マリアーナ。今、なんて言った?私の考えすぎ、か?



 「もったいないお言葉です。マリアーナ様」

ユトがさりげなくマリアーナに一礼。

こういう姿がユトは様になる。おじい様に厳しく教えられたのかもしれないな。

サリュマンお父様……何度も助けられてます。このユトといい、マーカスといい。



 でも……マリアーナは……。私と同じ転生者(・・・)

転生する前の名前は『春名楓はるなかえで』。やっぱり、そうなのかな?でも本当はマリアーナが主人公なんだもんね。

でも……何が本当なんだろう(・・・・・・・・)か?





 「リューリ様っ!?」

目の前にユトの……イケメン面が。

「……ほえ?」

あ。もしかして。また私、思考トリップしてたかっ。

「お疲れではありませんか?ここのところ、休みなく村の視察やこの家のことなど、忙しく働かれていられるのですから。ご自分の体のことを大切になさってください。これからでも……」

でたぁ。ユトのいきすぎ心配性っ。

「だ、大丈夫よっ。考え事しすぎただけだからっ。」

「いいえ。今からでも、お休みいただいてっ」

「本当に大丈夫っ!!」



 「これはこれで、良き主従関係なんだろうねぇ」

マーカスの呆れた顔が見える。

「そうよ。ユトは心配性すぎるだけで、他はすごいんだからっ」

と、ここでアルバートの……渋いイケメン面が目の前に。

「ユトの言う通りだ。お前は無理しすぎる」

「……本当に大丈夫なの。もう……」

こっちの方が疲れるよぉ。

「お二人さん。しつこいと、リューリちゃんに嫌われますよ」

モーリーの一言に、二人が同時にモーリーを睨む。

「モーリーを睨むな、二人とも。リューリが大丈夫と言っているんだ。なぁ、リューリ」

なんだか……私はマリアーナに気に入られたのかな?

そう言って、マリアーナが私の左腕に自分の右腕を絡めてくる。

「心配するな。何かあれば私になんでも言ってくれ」

「……は、はい」

……なんだ、これ?なんか、なんだか……違ってきていないか?色々、と。



☆☆☆☆☆



 とても疲れた昼食が終わり……。

ようやくマーカスと、これからのこと――。

マミトニア商会に協力してもらって、タッタ村のセンタのキノコとあふれ花の栽培についての話し合いを始めた。



 センタのキノコの栽培は、結果が出るのは数年かかるらしい。

すぐには無理とは考えていたけど、あふれ花は今すぐにでも種を蒔いて栽培試験を始められるらしいし。

それと、小麦と大麦だけに頼らない他の作物の栽培や、酪農についてなんかも大雑把にだけど相談してみる。

 どれもすぐにとはいかないけど、魔術なんかの力を借りての短縮はできるとのこと。

あと問題になった……軍隊っての?マーカスの私兵っていうものを持っていることがすごいけど、五十人程度ならすぐに用意できる。とは言っていたけど。



 問題はここの受け入れ準備……ということ。



 「東の森の中に奥様がお使いになられていた離れと、西のキュターン湖のところに、以前に使われていた離れがあります。いささかの修繕は必要ですが、このニつの離れはそれぞれ五十人程度は受け入れが可能かと」

ユト。すらすらと説明してくれる。

「東の森ならば、広場があったはずだ。あそこならば、修練などにも使えるだろう」

これはアルバート。アルバートは子供のころから知っているものね。

「じゃ、寝泊まりする建物はあるということで……」

「それなら、後でそこを見せてもらってどうするか決めるか」

と、マーカス。書類はカカルに作ってもらえるし。

なんとかここまで形にできるかな。



 あれ。そういえば、あれから……私が泣いてた時からナンティを見かけなかったんだけど――あ、いた。



 「ああ。タオルを探してたら、迷って。この屋敷結構広いな。やっぱ使用人が十五人じゃ大変だと思うぜ」

私が尋ねると、そんな答えが返ってきた。なんだか色々と……申し訳ない。

「それも、帰ったら人を選んでとりあえず揃い次第、送るようにする。

それなりに経験があるやつを選ぶつもりだから、もう少し待ってて」

「いいよ、マーカス。なんでもすぐに、てわけにもいかないし」

「いやいや。俺が楽しいから。これからもっと楽しくしような」

マーカスって無邪気なところがあるんだね。こういう笑顔は、つい惹かれてしまう。

って。だからアルバートが心配するんだよね。ユトといい、マーカスといい。たしかに刺激が強いかも。



 




 この場にはアルバートやマリアーナたちはいない。

ルガーソの尋問をするといって、あの地下牢に。マーカスとのやり取りを思い出すと、うんざりするな。





 ここで廊下を走る、複数の足音。なんか慌てているみたいで、私はマーカスやユトと顔を見合わせる。

「リューリちゃん、いるかっ?」

モーリーが広間に飛び込んできた。

「行儀が悪いのは許してくれ……ルガーソなんだが……」

「なにか、あったんですか?」

「……舌を嚙み切っていた」

見つめる私たちに、モーリーの表情が険しいまま。

「もう体が冷たくなってた。君たちと話した後に、この先のことを悲観したのかもしれないね」

後から広間に入ってきたロディの声が真実を告げた。

「……自殺……あいつが?」

あんなに、『生』に……あんなにしてまで、意地汚いぐらいに執着してたのに?



 「……わかりました。私も確認を……」

あいつを裁いた者として、最後まで見届けないといけない。それが私の役目だと思う。

そう思って、モーリーとロディの方へと歩みだそうとすると、

「リューリ様。その必要はないでしょう」

「ああ、ユトの言う通りだ。あんたが見て楽しいものじゃない。ここは聖騎士さんたちに任せておけばいい」

「でも、私は……」

「リューリ様。あたしもそう思うぜ。あんたはやれることをやった。ちゃんと責任は果たしてる。

その勇気は別のところで示せばいいと思うぜ」

「……わかった」

ここは皆の気遣いに、私は従うことにした――。





★★★★★




《マリアーナside》

 「これは……自殺ではないな」

喉をかき切られ絶命しているルガーソ。何者かに殺されたと考えるべきか。

私たちが来た時は、すでにこの状態だった。

「……ユト……ではない。おそらく……マーカス辺りが、殺らせたかもしれない。

自分が確認して、それ以上情報が得られないという判断と、リューリのために……だろうな」

私がそう口にすると、アルバートも同意のうなずきをした。

「あのナンティという女が、途中から広間にいなかった。

あれはマーカスが連れてきた、リューリの護衛と言っていたから……可能性があるならそれだろう」

「……あれもリューリを気に入っているし、先代に恩義を感じていることも嘘ではないだろうから、

危害を加えることはしないと思うが……とりあえずこの躯は、我々で処分する」

「……はっ」

こういう時は、私は聖騎士団の副団長の顔になる。この時のアルバートは、私の部下という本来の礼儀を私に示した。



 しかしリューリも修羅場に足を突っ込んでいるな。

彼女のためにも……私がどうにかしないといけないかもしれない……。

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