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第6話 もう一人の…?

 マーカスにために用意していた昼食が、突然、来訪した王立の聖騎士団のためになる。

でも……貧祖じゃないよね?

文章だったものが、こうしてなにもかもが現実と化すと、どれが正解なのかがわかんなくなる……。

『アニメ化』ってこういう作業を経て、老若男女にお披露目されるのねっ。だから尊いのかっ。



 あ――大丈夫かな……なにもかも……が。



「リューリ殿は見ていて飽きないな。アルバートが気に入るわけだ」

「……は?」

突然、マリアーナに話しかけられる。

あれ。全員が私を見てる……。思考トリップ……マジ止めよう。ほんと、マジで。

「すみません……現実感がなくて……」

はっ。なに、言ってるの、わたしっ!?

「まぁ、聖騎士団の主要メンバーがこうして揃ってたら、普通はビビるか現実味なくすよなぁ」

こういう時のマーカスって、本当に助かる。

ユトは……たぶんさっきの出来事を私が引きずっているんじゃないかって、心配してそうな顔してるな。

「そ、そうなんです。まさかマリアーナ様を、こうして近くで見る事になる日がくるなんて……」

これは本音だね。本当なら二年後なんだもの……。

「……アルバート様、モーリー様、ロディ様。今をときめく聖騎士団の近衛隊の皆さまですものね」

この説明はカカルだった。



 これは私の設定のままか。王族などの守護は聖騎士団の中から、選ばれた精鋭騎士が受け持つということ。それを『近衛隊』という名前にしたんだけど。安直な名前かなと思ったけど、シンプルでいいかなと……名前考えるのが面倒だからじゃないよ。



 「でも皆さまがどうしてここへ?それほどのことが、この領地にあると?」

「あなたはなかなか鋭いね、リューリ殿」

「リューリとお呼びください、マリアーナ様」

なんか腹の探り合いのようになっているな。そういう場面じゃないけど。

ルガーソのことは、さっき話した。それが関係しているっぽい感じもあるけど。



 「今日、こうしてここへ来たのは、この領地に関係しているのだが……」

「まさか、召し上げるとか……」

マリアーナの言葉を遮って、思わず言ってしまった。

「なぜ領地を没収しないといけないの、リューリ」

苦笑いのマリアーナ。他の騎士様がたも笑ってるぅ。アルバートは……なんかじっと私を見ているなぁ。





 大広間は立食パーティのスタイルで、気軽に話ができればと用意していたのがよかったのかな?

多いかなと思った量だったけど、この分ならちょうどいいかも。

「申し訳ありません……ですが、皆さまがこの領地にいらっしゃった理由は、フロテリューダ様のことと関係していますか?

この領地がコレタート王国と接していることが問題だとか?」

これはみんなマーカスがルガーソに尋ねた内容を、そのまま口にしているだけだし。

「……その通りだ、リューリ。先日、フロテリューダ伯がわが父上、サテリト王にこの土地の重要性を進言してな。突然という感じだったが、父上はあなたとアルバートのことを知っていて、アルバートの大事な幼馴染殿が継がれるであろう、この土地を調べてくれと我らにおっしゃられたのだ。

あの男にはコレタート王国の出身の妻がいる。そういうことで疑うことは良くないのだがな。

しかし……あなたを妾にとは。姑息な手をとるものだ」




 「でもリューリちゃんは、それを察知してルガーソを拘束。領地内の村がどうなっているかは、すでに調査を始めていると。……大したものだ」

これはモーリーね。軽い性格とは設定したけど、自分に向けられると……微妙だなぁ。

赤味の強いオレンジ色のやや長めの髪。私――リューリよりも少し薄目の緑色の瞳が優し気なイケメン。

「失礼だぞ、モーリー。今や立派な領主代理どのだ」

モーリーはアルバートとマリアーナの理解者という立場でもあるから、物語上、かなり重要なキャラクターなんだよね。

でも、ここはマリアーナがたしなめてくれた。

「そうだ。これは失礼、リューリ殿」

「お気軽にリューリとお呼びください」

「そうそう。リューリは気さくで肩っ苦しいことはお嫌い……ですよね」

……マーカス。あなた、ずいぶんな私の理解者だわね。その通りだけど。




 「マーカスは、昨日、リューリと出会ったと?」

これはアルバート。今まで見ているだけで、この会話にほとんど参加してこなかったんだけど。

「ええ。タッタ村で。とても立派でしたよ。ほれぼれしましたねぇ。ひとめぼれと言っていいかもしれません」




 え、えええっ!!アルバートの前でなんてことを―――マーカスっ!!

「ちょっとぉ。いい加減なこと言わないでっ。

たしかに、ルガーソのしでかしたことの尻ぬぐいをお願いしちゃったけど……それにこの領地の村のお世話もして……もらっているみたいだし。

これからも色々面倒かけちゃうけど……」

「リューリ。マーカスはこういうところがある。本気にしないでいいと思うが。

でもここまでこの天邪鬼に言わせるとは、案外本当かもしれないな」

マリアーナ……ダメ押しやめてくんない?なんかリューリのキャラが崩れていくんだけど……。

「……本当に変わったな、リューリ。あの甘えん坊の君が信じられないほどだ」

しみじみアルバートに言われちゃった。確かにリューリはそういうキャラだったよねぇ。

あんまり独立心旺盛だと、マリアーナとキャラかぶると思って、そんなキャラを維持させたんだよなぁ。

だからアルバートに愛想つかされて最終的には見向きもされないようにしたんだが。

それがここでは裏目にでてる……。

でも、『この場合』は、そんなこと言っていられないと思う。

ここで私が踏ん張らないと、皆が困るから。

「ごめんなさいアルバート。でもお父様が大事にされたこの領地、私が守らないといけないと思うの。

それに今は村の人たちが困ってる。それをなんとかしたいっ」



 「……立派な領主様じゃないか、アルバート。リューリちゃん。早めにこの領地の相続手続きを用意した方がいいぞ。先代の領主が亡くなってから、二年以内という規則があるから、あと一年あるが君の場合は、俺たちが見届け人になるし、それならフロテリューダ候も手が出しにくくなるだろう」

モーリー。あくまでちゃん付けか。でも言ってくれいる内容は評価してもらっていると、とっていいよね。

「この間ユトが言っていたことだね。アルバートにもお願いできたらって、甘い事考えていたけど」

「俺は全然かまわない」

「あ、それなら、俺の親父殿にも声かけとくけど?」

アルバートの後に、マーカスがとんでもない発言で続く。

「……マミトニア商会のハセル殿も見届け人になるか……とんでもない領主が誕生するね。

この国の領主たちだけじゃない。ハウル殿にお墨付きをもらえたら、この国での怖い者はほとんどいなくなるもんなぁ」



 『近衛隊』、最後の一人、ロディ。

ちょっと少年っぽい感じのある最年少。くせ毛が強い金髪で碧眼。

今は十九歳と設定していたと思う。アルバートの一歳下だよね。マリアーナは王女様だから本来守られる立場の方だけど、この中では一番年下で、今、十八……と。モーリーはみんなのお兄さんで二十二。

 しかし、こうも私の考えたキャラとそうじゃないキャラが入り乱れていると、混乱しそうになる。

さっきから、なにも考えずに受け答えするようにしているんだけど。本筋に影響ないように、ね。

……でもリューリがマリアーナに関わらなくても、本筋は別に関係ないよね。と思う。

フロテリューダはちゃんと悪役しているわけだし。




 「……あなたは時々、意識が飛ぶようだな。大丈夫か」

「は、はい!……ごめんなさいっ!!」

気がついたら、マリアーナのかわいい顔が目の前にっ。役得だけど、この場合はそうじゃない。

「色々考えちゃう癖が……。目の前の出来事がどんどん大ごとになっていっていて。把握するだけで大変……。私はただこの領地で皆が楽しく、出稼ぎなんて行かなくても、ちゃんと暮らしていけるようにしたいだけなんです」

そう。今はこの目標を達成したい。だからマーカスに手を貸してもらえるようにしたいわけだし。

それには、早めにこの領地の相続手続きが必要。

その見届け人が大物ぞろいで問題ってだけだよね……。

でも悪い事じゃない。それなら、使えるものは利用するっ!

「マーカス。ハセル様にお願いしてもらえるかな。この領地の安全を保てるなら、ぜひお願いしたいですわ」

「おう、そうこなくっちゃっ。いいねぇ、決断早くてっ」

マーカス、うれしそう……。動揺して、私の口調がおかしくなっていることは、この際どうでもよろしい。

「近衛隊の皆様……見届け人の件、お願いできますでしょうか?

フロテリューダ伯には好き勝手させたくない。人の領地の行く末を、他人に好き勝手に決められて面白いわけがないっ!絶対にこの領地は守りますから」

……言い切ったね。我ながら気持ちいい……けど、また考えなしに言ってしまったなぁ……。




 あーあ。ロディとモーリーが笑いをこらえている……。

「モーリー、ロディ。失礼だぞ。私はリューリを申し訳ないぐらい誤解していたようだ。

アルバートの話ではか弱い女性のような印象だったが、どうして。こんなに熱いすばらしい気持ちの領主がこの国にまだいるとは、私は誇らしい気持ちにしてもらえた。

見届け人の件。よろこんでお受けしよう」

マリアーナ様、絶賛。

これでよかったんだよねぇ。でも、なんだ。この……「言っちまったなぁ」感は。




 「……大丈夫なんだな、リューリ。最近のお前はずいぶん無理しているようにも思える。

過保護かもしれないが、無理していないな?」

やっぱり、アルバートはアルバートだ。

この言葉はすごくうれしい、な。

「うん。ついこの間までの私だと、無理してたかもしれないけど。

今はこんな私にも、仲間と言える人たちが増えてる。

ユトにエルム、メアリにマーカスでしょ。それに今日はカカルとナンティも。

これからだけど、なんとかやりとげたいの。この領地に住む人に、ここに住んでよかったって言ってもらえたらいいなって」

なんだろう。自然と……言葉が出た。

皆の顔を見ると、エルムは涙ぐんでるし、メアリも、だ。カカルは大きくうなずいて、ナンティは笑ってる。マーカスは音は出ていないけど「任せろ」と口が動いてるし、ユトは……誇らしそうに微笑んで。

あ、なんだろ。これ……すごくいいな、と思える。



 「アルバート。なにも問題ないじゃないか。これなら父上に前向きの報告ができるぞ」

おう、マリアーナはまたもや高評価じゃない。

「そうそう。思い出した。ここの領地の問題。かなりやばい」

「なんだ?どこが問題なんだ?」

マーアスが笑顔で問題提起。マリアーナがきょとんと聞き返してる。え、と。そんな問題あったっけ?

「この屋敷、使用人が十五人だそうだ。それに自前の守護兵もいない。

隣国の備えなんて無きに等しい領地だな。お金もないみたいだし。

ぜーんぶ、ルガーソという執事が自分の私利私欲のためにしちまったことを、このお嬢様が引き継ぐらしいんだ」

「「「なぁーーーーにぃ」」」



 そうだねぇ。マーカス、ここ来たときに、そう言ってたねぇ。

騎士団の皆様、アルバートだけは知っていたみたいだけど。

「だから……言ったじゃないか」

と、つぶやいている。




 この規模のお屋敷だと、使用人って何人必要なの?自前の軍隊って……そんな雇うお金ないよ、うち。

それ、みんなマーカスが説明してくれてるか。

ユトが、呆然としている私の傍らに来て、そっと耳打ちしてくれる。

「リューリ様。このぐらいのお屋敷でしたら、五十人はいても不思議ではありません。必要最低限でも三十人はいないと。

コレタート王国のことは国境が面しているという立地の問題ですが、こればかりは誰のせいでも。

しかし軍隊を自前で持つのはほぼ不可能に近いです。

この際、どなたか頼れる方にお願いするということが懸命でしょう」

「……そういうことね。ありがとうユト」



 ……どうしろと言うの。ねぇ、マーカス。それ早めに言ってほしかったなぁ。

「使用人の件は、俺のところでどうにかしてやる。

とりあえず、あと十五人程度は選んでくるわ。問題は、この領地の守りだよな」

マーカス。楽しそうだな、おい。

「……マリアーナ様、皆さま。リューリ様の見届け人ということを了承していただいているということは、このカトルアン領は、聖騎士団の関係している土地という見方はできませんか?」

うちの優秀な執事のユトが、マリアーナに進言してくれている。

そういうことも可能なのか?

「ん――。やったことはないが、この領地の場所の重要性を考えると、考慮する余地はある。

いっそ、この地に騎士団の駐屯地でも作る……とか」

「維持費はどうするの?すごいお金かかるよ。王族の直轄地ならわかるけど、個人の領地になると、支払いはその領主になる……よね?」

ロディの言葉に、全員の視線が私に向かう。うん、いやな予感はしていたんだけどね。

「現状……無理です。ようやく今、二年続いた天候不良による被害なんとかしようと、マーカスと今日、ここで話そうかとしていたところなので……」

「そうだな。せっかくこんなすばらしい領主のいる領地を、直轄地にするために接収することは……」

「それリューリちゃんが初めに言っていたことだよね?召し上げるのか、と」

マリアーナの話をモーリーが突っ込んでる。

「……あなたは予言もできるのか?すごいな……」

私に難儀な表情で褒めてくれるマリアーナ。

「少しもうれしくない……ですね、それ」

せめて言葉で言い返させてくれ。



 「なぁ、リューリ。父上に頼んで、タロトローラ領の兵をこの領地の守りとして派遣できるか交渉してみようか。そうすれば、この領地からの負担は軽くて済むと思うが……」

アルバートが助け船を出してくれる。



 たしかにアルバートのお父上、ロナウド・ビナース様とリューリの父サリュマンの祖父という人が同じで、アルバートとリューリは遠縁にあたる、という設定にしてたっけ。

だからじゃないけど、領地も隣同士……規模は全然違うけどね。

ビナーズ家は先祖代々の、歴史ある騎士の家柄の上級騎士家なわけだし。カトルアン領を治めるツァーラント家はその分家筋であって、小さい領地をほそぼそとやってきた家柄。

この領地を継いだのは二百年前としていて、そのころは、隣国のコレタート王国との関係も良好だったのに。今や、一発即発――という設定にしたのよ。私が……。

つくづく余計なことをした、と思うわ。変なところに、こういう設定だけは残っている。

まぁ、私の書いた物語だからね。その割に勝手にオリキャラが出まくっているけど……。



 「それじゃ、アルバートに迷惑かけっぱなしで……」

「俺はうれしいけどな。

でもこのままだと、父上への説得も理由が弱いな。できれば、お前への負担は極力なくしたい」

アルバート……本当にあなたは……私の理想の塊だわ、ほんと。

「なら、マミトニア商会の方から、投資している村と領地の守護って形で、傭兵にはなるけど兵力は提供できるな。隣国の備えとしては……」

「それもいいが……」

マーカスの提案に、アルバートが言いかける。

でも、色々と抜け道みたいなことあるもんだね。ようは着眼点ってことかぁ。覚えておこう……。

「アルバート……なにか他にいい案があるの?」

私が聞くと、アルバートがにこっと笑う。うん、最高の笑みだわ。いや、そうじゃない。

なんだか少し……不安が。



 「お前が俺と婚約(・・)すればいい。そうすれば、婚約者の家を守る口実にもなるし、なにより俺がそうしたい」




 「……えええええええええぇっ!!」

ちょ、ちょいっ!!?ちょっと、待ってっ。

なにが、どうしてこうなるのぉっ!?



 ほら、ほら、ほらぁ。マリアーナが……驚いているじゃないっ!!

モーリーもロディも……エルムが失神寸前的なっ!

「アルバート……あの、あの、ね。どうして……」

「うん、そうだな。お前の周りがにぎやかなのはいいんだ。

だがこうも目移りされると、俺が穏やかじゃない。いい案だと思うんだが」



 目移り(・・・)って……それって、マーカスとかユトとかのことぉ?

やっぱり、さっきのは嫉妬をしていたってことなのぉぉ??

「……こういうの……ムードとかさぁ」

「正式に申し込むつもりだぞ。でも、今のお前にもやりたいことがあるようだし、まずはそれを達成するための手伝いをしたい。そして俺も安心をしていたい。という、俺のわがままもある」




 うれしいとは思うよ。うん、最高のシュチエーションだな……少し前の私なら、迷う隙もなかったはずなのに。でも……。




 「……よかったじゃないか、リューリ」

マーカス。笑ってくれてる。そうだよね、この領地も守れるし。でも…なんなんだろう……。

「あのね、アルバート。すっごく、すっご――くうれしいの」

「……よかった。断られるかと思ってた。こう言うだけなのに……結構勇気がいるんだな」

ああ。アルバートでも勇気がいることなんだ。てっきり、設定通りの妹としてしか見てないと思っていたし、理想のすべてをつぎ込んだ男だもんね。最高の瞬間なんだ。よね。



 「……でも、少し待って」

あれ。どうして受けないの?アルバートの求婚とも言える内容だぞ。

「考える時間がほしいか?」

「今、じゃない……。そう思うの」

「……リューリ」

「うん、今じゃない。今の私じゃあなたに失礼だよ。

ただ、守ってもらうばかりで、私からは誰にもなにもしてあげられてない。そうじゃない。

私は……だから生まれ変わった……と、思うの」




 へ?なに言ってるの、私。ちょっと、これ自分からネタバレしてんじゃんっ。

「あの高熱から生かされた……ということか?」

「あ、うん。そう……いうこと。私はこの領地経営を建て直したいっ。そして皆がここに住んでよかったと思える場所を作りたい。だから、今、誰かとどうのっていう時じゃない、と、思う……」

あーあ。断っちゃった。アルバートのプロポーズ、断っちゃった。あーあ。あ―――あぁ。



 


 「気に入ったっ」

そう叫んだのは、マリアーナ。そりゃそうか。マリアーナはアルバートに想いを寄せているんだものね。

似合いのカップルだよね……。

「私はあなたを心から尊敬するっ。私は全力であなたを応援しよう。聖騎士団の駐屯地の建設の件。維持費の件。父上に進言してみる。断られても、絶対通して見せるっ。

少し時間をくれ。必ず約束するっ」



 あれ?なんだか、私の考え抜いたお姫様騎士のマリアーナのイメージが……おかしいぞ?

「……最高の申し出なんですけど、ご無理はなさらずとも……」

「いや。私の気が済まないんだ。私はあなたを守りたいと思っているんだ」

なんか、だんだんプロポーズになってます……マリアーナ姫。

しかし、騎士という人種は、自分が気が済まないとダメなのか。マリアーナといい、アルバートといい。

設定したの、私だわ。

「いやぁ。この国最強の騎士の求婚を断るとは、いい根性しとるね、リューリ」

マーカス。なんだか……楽しそう。傍から見てたら楽しいよなぁ。

「アルバート様、マリアーナ様。この領地の防衛はマミトニア商会……いや、俺の私設の軍隊でまかないますよ。この国一国が動くのは、もう少しあとでいいでしょ。

マリアーナ様の説得も、その頃がちょうどいいかもしれないし」




 「……それって、コレタート王国との戦争……ってこと?」

急にきな臭い話になる。でも怖いけど、この世界のリアル――ということ。

「遅かれ早かれ、そうなる。と、俺の親父殿はそう見てる。商人にも死活問題だからな。

見極める目も必要なわけさ。

でも、この領地は俺も守りたいと思ってる。

親父殿から、初めて商いを学ぶ場としてここを言われて、あんたのお父上が好きなようにやってくれと、駆け出しのしょうもない若造を信じてくれたからな。

俺にとっては思い入れたっぷりの土地であり、恩のある方の大切な場所でもある。

それにあんたはこの土地を全力で、いい場所にしたいと願ってる。それは俺にとってもうれしい事なのよ。それに……あんたはやばいぐらいほっておけないからなぁ」



 マーカス……そういう想いがあったんだ。だから、か。

「そうですよ、リューリ様。旦那様は後ろ盾のない私を執事候補として高待遇で雇ってくださいました。

ルガーソの悪事も、いつか旦那様に進言できればと証拠を集めていたところ、あなたはほとんど面識のない私を全面的に信じてくださった。私は微力ですが、全身全霊でお手伝いさせていただきますから」

ああ……ユト。

「そうですよ、リューリ様。あのルガーソを、私たちを信じて捕まえてくださったんですから」

「皆、感謝しています。少ない人数でもちゃんとお屋敷を……リューリ様の安心できる場所をお守りいたしますから」




 エルムにメアリ……ダメ。視界がゆがむ。涙……止まらない。




 話すことも出来ないほど、私はわぁーわぁー泣き出してた。

なんにもしてないと思ってたのに。情けないと思ってたのに。

『なにか』は動いていたんだ……。

まだまだ、これから大変なんだけど……今は、少しだけ泣かせて。




★★★★★



《マリアーナside》

 「アルバート。振られたね……君の自慢の幼馴染はすごいなぁ」

「完全には振られていないぞ」

ロディがアルバートの肩をたたいた。

アルバート。落ち込んでるわね。

「……ただ、俺も少し焦っていたかもしれん……」

「でも、あの子。あんなにいい仲間、それにいい男もちらほら……焦る気持ちもわかる」

モーリーも意地が悪いわね。

「でも私は気に入ったわ。ぜひにこの領地の、あの子の大事に思う場所を守りたい気持ちにさせられた」

「マリアーナってば。すごいね。そんなに気に入ったの?」

「おい、マリアーナ。俺がリューリを諦めるわけがないだろう?」

驚くロディとまだリューリを自分のものにしたいと主張するアルバート。

「渡さない、あんないい子。絶対、私のものにする。同性だって関係ないわ」

「……マリアーナ……」




 そう、私はマリアーナ・レディクリクス。

そのために私はこの世界に転生したんだもの。あんな思いは二度としないために……。

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