表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/23

第10話 二度目だからやること?

 「……あ、あの。マリアーナ様のお気持ちはよくわかりました。

それで、この世界はどなたかの書かれた小説の世界……ということなのですね。

すでに決まった結末があると……」




 え……私、なに言ってるの?

これって……。私、マリアーナ……『城田桜』さんの好意を無駄にしようとしてる?

その前に、すでに決められた運命ということに……抗おうとかしているの?




 「……ち、違う……いや、そうじゃないな……。たしかに君の言う通りだ。

自分がいる世界が、誰かの書いた小説の世界だと言われ、嫌悪するのは当然の反応だ。

だがこれだけは信じてほしい。このままでは、君はニ十歳で死んでしまうんだ。

君はアルバートと結ばれることに憧れていたのに、それが叶わないために……だ。

そんなこと、私が耐えられない……」




 マリアーナ……私を説得しようと必死になってる。




 これ……感謝するべきだよね。

私なんかの書いた小説を読んでくれて、この世界に転生までしてくれて……。

感謝するべきはそこ(・・)じゃないけど。

ブクマゼロだったけど……ありがとう城田さん。これで、『林ひびき』はきれいに成仏できました。

城田さんには大変申し訳ないけど。本当にうれしかった……。もう……これだけで充分ですっ。




 でも、そっか。二十二歳か。私より若かったのか……。

就職内定してたって言ってたな。顔は寂しそうだった。彼氏いたのかな?

もっと、もっと……生きたかったよね。

 



 なら。第二の人生が、こんな私にかまっているべきじゃないと思うんだよね……。



 うん……決めたっ!!





 「マリアーナ様。アルバートはマリアーナ様を選んだのでしょう……!?

でしたら私は、この世界がどなたが書いた小説でも、アルバートはマリアーナ様を選ばれると思います。私はアルバートから、妹のようだと言われていますし……」

「いやいや。すでにアルバートは、あなたに求婚しているだろうっ?」

半ギレ状態で、マリアーナが私に言い放つ。



 ……あ、そうだよね。この間、婚約を申し込まれてた……。

マリアーナの転生者が『城田桜』さんだったという事実で、全部持っていかれてたわ……。




 「そうなんですけど……」

「そうか。小説には、アルバートがあなたに婚約を申し込むなんてことはなかった。

第一、リューリが領主のなるなどということはなかったな」




 なんだか……マリアーナの方が、この小説を書いた人みたいになっている……。




 「マリアーナ様の言われている小説は、誰が主人公なのですか?

私も本は好きなのでよく読みますが、登場人物の立ち位置で、見方はずいぶんと変わりますから。

誰が主人公かで、小説の内容は全然違うことになるのか、と」

そう。リューリ目線の私の周りでも、すでに小説に関係ないキャラクターなど、うようよしているからな。




 「マリアーナ……私が主人公だったな」

「それでは、私……リューリが主人公でしたら、ずいぶんと物語は変わってきますね。

だからアルバートが誰を選んだとしても、私は素直に受け入れられると思うのです」

「では先日アルバートがあなたに求婚したことは、素直に受け入れられるのだな?」

間髪のマリアーナのツっこみっ!せっかくいい事を言おうと思ったのに、その返しはないだろうっ。

それにどこか、アルバートの押し付け合いになっているような感じだぞ、これ。



 「私は立場上、領地のこともあって、アルバートの求婚を受け入れる余裕は全然ありません……」

「だろうな。執事のユトに、商人のマーカス……あの二人、どう見てもあなたに気があるよな。

だからあれほど冷静なアルバートも、気が気ではなかったのだろう。

それに、今のあなたは小説で読んだかまってちゃんの『リューリ』とは、まったく別人のようだ。

あなたに転生した方は、よほどしっかりとした性格のようだ……少し安心したよ」




 マリアーナがまるで私の保護者のように、安心した笑みを向けてくれた。

ってか、私がしっかりとした性格だったとはとても思えないが……。

でも『城田桜』さんのおかげで……少しふっきれた。




 ここは私の書いた小説の世界。でも……ここに出てくるキャラクターたちの世界でもある。

城田桜(あなた)』が『マリアーナ』として、第二の人生を悔いなく、楽しく生きていけるように。

林田香織(わたし)』が『リューリ』として、ここでしっかり人生を全うできるように。

だったら、今の私が出来ることはひとつ――。




 「マリアーナ様。本当にありがとうございます。

でもアルバートが私と結ばれるのか、マリアーナ様と結ばれるのか。

私は本当に二十歳で死んでしまうのか……。

その小説通りの結末になってしまうのか。

せっかくここに『転生』したのなら、少し抗ってみませんか?」

――とんでもないことを言ったな……私。でも……これはもう「私だけじゃないから」。




 「リューリ……君は……」

「ねっ、マリアーナ様」

笑顔、笑顔。できれば光り輝くようなまぶしい笑顔っと。

あざといかもしれないけど、ここはやらせてほしいな……。



 「……うん、ありがとう。リューリの言う通りだ」

よかったぁっ、伝わったぁっ!!

「ならば、私も。もう我慢はいらないな」

「そうですよ、マリアーナ様」

「それ、その「様」つけはやめてくれ。君とはぜひに友達になりたい」

「よろこんで。では、マリアーナ」

うん、ここはこうだよね。

「今は「友達」だが、いつか必ず、君に告白するからね」

「はい……って……えぇぇっ!??」

「冗談だ。まったく、君は見ていて本当に飽きないな」




 やめろぉ、マリアーナぁ……。一瞬、冗談に聞こえなかっただろう。

自由な生き方はあるけど、色々と心の準備ってものが、さ。

ま、でも愛の形は色々だよね。



 「まぁ。でもマリアーナとはいいお友達になりたいな」

「ああ、私もだ。と、手始めに、まずお父様のところに行こう。

前置きが長くなったが、これは真剣に聞いてほしんだ、リューリ」

「はい……」

なんだろ。顔つきが『マリアーナ』という感じになった。

この国の第一王女で、聖騎士団の副団長。大変な責任を背負って頑張ってきたんだね。

そこに『リューリ』のことまで、背負いこむことはさせられないよ……。




 「ルガーソだが……君が気にしていた通り。彼の死は自殺ではない。

おそらく何者かによるもの。この城にマーカスを呼んだのは、彼の仕組んだことかと私が疑ったことだったんだが、それはとんだ濡れ衣だった。

第三者の仕業……と、考えてよいだろう」

「……それって。私たちの身近に、たぶんフロテリューダの手の者がいる……と」

うそ、でしょ?一体……誰、が。

「リューリ。君はマーカスが言っていた通り、勘が鋭い。ユトやナンティがいたとしても、君自身が自分を守るために、今の君は無防備すぎる。しかし君には魔術の才があまりなかったと思った。

小説だと、「物体を百パーセントの確立で対象に命中させる」という特殊な能力……あまり重量のある物は無理だったんだが……」

「……そうなんですか?たしかに私にも、そんな能力はあるみたいなんですが……」

「そこは小説通りか……簡単に君の能力を把握しておきたいんだが……。

どうだろう。まず、このカップぐらいからやってみようか。

このカップを、あの扉のノブを目掛けてぶつけられるかい?」

「え……と」




 ユトが教えてくれた時は……せいぜい一番重いので、手袋ぐらいだったんだよねぇ。

距離は、十メートルぐらいが限界で……。

でもこれは……小説にないことだもん。そして今は、私の命が狙われているかもしれない。

マリアーナを殺すために、この能力を使うためじゃない。自分を、皆を守る力と考えたい。なら。




 「では、少し手伝ってみようか」

マリアーナがカップを持ち上げて……ちょっと待って?そのカップ、とっても高いんじゃないのっ!?

きゃ――っ!マリアーナがカップを放り投げたぁ――っ!!



 ぽんっとマリアーナが私の肩をたたいた。

「ほら、あの扉のノブに向かってっ!!いっけぇっ!!」

うわぁーいっ。あの「扉のノブに向かってっ」っ!!




 カップが光って……ドカン、バキャと、思わず目を閉じたくなるような……扉の真ん中に、三十センチぐらいの穴が……あれ?音が二回しなかった?

「……すっげぇなぁ……」

「驚きました……リューリ様がこれほど」

扉の外から声がする。で……なにが起こったの!?って、まさか……。



 



 「想像以上だな……リューリ。これを上手く使えば、君は身を守れるぐらいにはなれると思うぞ」

「……ねぇ、マリアーナ。もしかして、外で誰かが立ち聞きしてるから、あそこに狙ってぶつけるように誘導したのかしら?」

「ああ。途中から気がついたのだがな。大事な人との話を立ち聞きするとは、とても許せん行為だからな。しっかし、これほどの威力とは思わなかった。軽くぶつけて脅かしてみようと思っていたが。

扉をぶち抜いて、おそらく向かいの廊下の壁にめり込んだようだな。

だが、あいつらには良い薬になろうっ」




 ……マジか?え、ここお城の中だよね??嬉しそうに話すのやめてくれる、マリアーナ……。

修理費……払うとなったら。どれだけかかるのようっ!




 「大丈夫。君のせいじゃないのは、外の彼らが証言してくれる。

それよりお父様のところへ参ろうか。かなり待たせしてしまった」

悪夢のようだ……。私は、マリアーナの何かを解放してしまったのかしら??

それでもマリアーナは私の右手をつかんで歩き出す。




 もう、あんまりこの先のことを……考えたくないかも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ