いつか檻に閉じ込めた少女を。
この世は、純粋じゃ生きていけない。
だから私は…彼女を檻に閉じ込めた。
穢れを受けると、すぐに泣いてしまう少女を。
純粋な心の…私を、大人と子供の間を生きる思春期の私が、檻に閉じ込めた。
煩わしくなって。
いや、穢れさせたくない私を守ろうとして。
私は彼女を…私自身を、檻に閉じ込めた。
心の奥の奥の、暗くて見えないその向こうの分厚い檻に、私は少女の私を閉じ込めた。
───あれから何年…何十年経ったのだろうか。
檻の前。
佇む、大人になった私。
頑丈な檻の向こうにいる少女…私は、まだひとりで泣いていた。
私は心から鍵を取り出し、その檻の鍵穴にさした。
───かちゃり。
キィイ…と錆び付いた音をたてながら、開く檻。
ゆっくりと。
私は少女に…いつかの私に、歩み寄る。
ぺたり、と、地に膝をつき。
そして…
ぎゅっ…
少女を、いつかの私を…優しく抱きしめた。
「ごめんね、こんな寂しくて冷たいところに閉じこめて。また、私の傍で…いっぱい泣いて良いから。まだまだ全然強くないけど、もう、大丈夫だから。あの頃よりは私、少しは強くなったから。…貴女を、純粋な私の涙を受け止められるほどには、強くなれたから。
これからもっと、強くなるから。弱い人間なりの強さを身につけるから。純粋な私と今の私の心を守るから」
胸の中の純粋な私を、抱きしめながら撫でる。
純粋な少女の私は、私の方に顔を上げた。
─────にこっ。
と、少女は私に微笑んだ。
「…じゃあ、行こっか」
「うん!」
私は、少女の私の手を引き、そして。
光の中へと───────