なんでも相談所 おままごと編
「娘とのおままごとが怖いんです!」
山下美紀さん、一児の母だ。娘とたまにおままごとをするのだが、その内容がおかしいのだという。
「まあまあ、子どもって突拍子もないこと言ったり考えたりしますから」
とりあえず山下さんを落ち着かせたくこんなことを言ったが、無理だった。
「そんなレベルじゃないんです! 娘の書く台本が不気味で仕方がなくて⋯⋯何か悪いことの予兆なんじゃないかって思うんです」
参ったな、私はこういう霊的な力とか超能力やらは専門外だ。しかし、相談料を受け取ってしまったからにはやるしかない!
まあ、やると言っても何をするという訳ではないが。基本的に私は聞くだけだから。
「これを見てください」
山下さんは娘さんの書いた台本を取り出すと、私のほうに差し出した。
『おままごと』
『まずはじめに赤ちゃんを産みます』
『次に子供と旦那さんを産みます』
『最後に家族を全員食べます』
『食べ終わったら歯磨きをして寝る準備をする』
『寝たら夢の中へ』
『起きたらまた次の日』
『そしてまた産まれた』
『終わり』
『おしまい』
『おわり』
『おしまい』
なるほど⋯⋯まあ不気味といえば不気味だが、子どもなんてみんなこんなんじゃないか?
「山下さん、子どもってね、いろんな世界が見えてるんですよ。これはこうだ、って決まっているものでも違うように感じたり、理屈なんて関係なく思うがままに出てくるんですよ」
「先生、さっき受付でも書きましたけど、娘は四歳なんですよ! 明らかにおかしいんです!」
え? だから子どもってそういんもんでしょ? って言ってるやん? なんなの⋯⋯
ハッ! そうか、漢字が使われているんだ!
「娘さんが書いているところを見たんですか?」
「はっきり見ました。当たり前のように漢字を書くんです。しかもこんな内容で⋯⋯怖いじゃないですか」
「旦那さんには相談しましたか?」
「信じてもらえませんでした」
そうだろうな、普通は信じろっていう方が無理だよ。でもわざわざここまで相談しに来てるんだ、嘘をつく理由がないか⋯⋯
あの台本には何か意味があるのだろうか。もう一度読んでみよう、と手元の台本に目を落とす⋯⋯その時私はあることに気付いた。
受付で山下さんに書いてもらった基本情報の筆跡と、この台本の筆跡が似ている。相談概要欄の『おままごと』なんて全く同じじゃないか。どういうことだ⋯⋯? 自作自演? いや、そんなことする意味は⋯⋯
「先生!」
「はい!!」
考え込んでいたせいで大きな声で返事をしてしまった。体育の先生に好かれそうな返事だ。
「思い出しました。娘は去年亡くなったんでした」
え⋯⋯?
「旦那も亡くなったんでした。娘のあとを追って⋯⋯」
「あの後娘は私の中に産まれたんです。だから私がおままごとの台本を書いてたんですね! なあんだ、簡単だ! あはははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
「先生! 先生! ありがとうございました! このご恩は一生忘れません! あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
こいつ怖。
「美紀ー! まだなのー?」
外から女性の声がする。
「あ、ごめんお母さん! 盛り上がっちゃって! 今行くね!」
山下さんは相談所を出た。会計が済んでいないがもうどうでもいい。正直ホッとした。あいつ超怖かった。
「ねえ美紀、ここ結婚相談所じゃないじゃないの!」
「ほんとだー! あははははははははは!」
「あんたはいくつになっても落ち着きが無いわねぇ。そんなんだからお婿さんはおろか、彼氏すら出来たことないのよ」
「あははははははははは!」
感想欲しいよ〜。゜(゜´ω`゜)゜。ビャ〜
何泣いてんだい、お嬢ちゃん( ͡° ͜ ʖ ͡° )僕が感想をあげるよ
ふえぇ :(´ω`): うれしいよぅ
またなにかあったら呼ぶといい( ͡° ͜ ʖ ͡° )
怖いものを見た時は幼女とイケメンを見ると落ち着くと言います。なので、幼女とイケメンの会話をお見せしました。感想が欲しいのは本当です。私が幼女なのも本当です。もちろん、イケメンなのも本当です。