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流れ星も見ている

作者: 風祭 風利

新年明けましておめでとうございます


風祭 風利でございます


前回の夏ホラー2021の時のように、今回も短編を書かせていただきました。


童話と言うジャンルも初めてですが楽しんでいただけたらと思います

 僕は流れ星


 なんで僕の紹介からしたかって?


 僕たち流れ星にも、それぞれ個性があるからだよ。


 僕たち流れ星の仕事は空から人々を見守る事。 多くの星はあるけれど、流れ星は特別なんだ。


 流れ星になった星達はそれぞれ色んな空の上にいる。 地球はもちろん、この銀河系全てに流れ星達はいるんだ。


 流れ星だって仕事のようなもの。 見守るだけじゃなくって、流れ星としてみんなの夢を聞いてあげるのも1つの仕事。


 同じ願い事を3回言えば願いは叶うって噂があるけれど、僕たちにそんな力はない。 だけど、その噂を本当にするために、日々頑張っている生き物達を、僕たちは見ているんだ。


 僕がいるのはとある丘の上に建っている病院の空。 病院の屋上から見る夜空が綺麗だって、ここの病院に来ている人達が言ってたっけ。


 僕がこの空を任されたのはすごく最近。 流れ星達にも僕たちよりも偉い人から与えられた場所でお仕事をする。 だから僕もこの空から病院を含めたこの辺り一帯を見ている。


 僕たちの仕事は至って簡単。 決められた時間を流れ星として空を飛ぶだけ。


 大体15秒? だったかな? 僕らのような星達は時間はほとんど気にしないから、これは偉い人が決めた時間。


 この時間流れるならどうやったっていいんだ。 何回かに分けてもいいし、1回で使いきってもいい。 そういう話なんだ。


 僕もそうやって仕事をしている。 流れ星はみんな気まぐれだから。


 ある日は長く飛んでみたり、ある日は何回かに分けてみたり。 飛ぶ時間だって僕の自由。 お日様が昇るまでならいいんだ。


 そうやって仕事をしていたある日。 僕は屋上に少年がいるのが見えた。

 確かあの子のお母さんは病院で病気で眠っているんだっけ。


 屋上に来た少年は夜空を見上げた。 なにを考えているのかは分からないけど、どこか悲しそうな顔をしていた。


 僕は今日はまだ飛んでいられる時間があるから、彼の前で見せてあげようと思った。


 流れ星はみんなの心を軽くするおまじないみたいなものだって、偉い人も言ってた、気がする。


 そして僕は彼の見える位置で流れ星の仕事をする。 他の時間でも飛んだから、時間は短いけれど。


 そして流れ星になって、少年を見る。 少年は驚いていた。 流れ星を見るのは初めてかな? それでもしっかりと少年の目には映っていると思う。


 そして消えるかなと思った瞬間に、少年はなにかお祈りをしていた。


 もしかしてお願い事でもしたのかな? だけど今日はおしまいなんだ。


 悲しそうな目をした少年を僕は見送るだけだった。


 そして次の日の夜。 僕は今日も後一回だけという時間に仕事をこなした。


 今日もこれで終わりだなと思いながら、最後の流れ星をやろうとした時、昨日の少年が屋上に来た。 今日も見れると思ったのだろう。


 今日も残りの時間は出ておこう。 なにを願っていたのか気になるし。

 そう思ったので今日も流れ星の仕事をする。


 少年がそれを確認してすぐに祈りを始めた。


「流れ星さん。 お母さんの病気を治してください。 僕が待っていることを伝えたいんです。」


 そんな願い事だった。 当然その願いは受け入れられない。


「叶えられない」じゃなくって、「受け入れられない」なんだ。


 だってそれを本当にするにはあまりにも力が大きすぎるもの。


 それに流れ星に願えば願いは叶う、なんていうのは僕たちの間では迷信どころか笑われる位にあり得ないことっていう認識。


 でも願いは聞き入れる。 矛盾してるって? 聞くことは出来るんだもの。


 そこから少年は最初に流れ星の僕を見た時間に大体屋上に来るようになった。


 僕も何回かに分けたり、その時間に流れなかったり、すぐに飛んだりゆっくりだったり。


 少年の心を弄んでいるのではないけれど、空が曇っていようと、雨の日だろうと、少年が同じ時間に来てはお願いをしている姿を、ただ見守ることしか出来ない僕の無力感を初めて知ったのかもしれない。


 少年も最初こそ長かった願いも、今は3回言えるように短くしたり、ちゃんと喋れるようにって頑張ってた。


 来る日も来る日も同じ様に願っていた。


 少年はただ闇雲に、流れ星に願っていた。


 それを僕は、どれだけ叶えたいと思っても、見守る事しか出来ない僕は、とてもとても哀れに感じてしまっていた。


 そんな風に見守っていること3ヶ月。


 流れ星のお仕事にもその場所にずっといる訳じゃない。


 ちゃんと次の場所でも同じ役目を果たさないといけないんだ。


 少年は今日はいつもよりも早く来た。 多分理由はない。 だって流れ星は気まぐれだから。


 僕もここにいるのは後何回かの夜だけ。 今日も同じ様にやろうかなと思っていた時、病院に変化があった。


 眠ったままだった少年のお母さんが目を覚ましたのだそうだ。


 これは今すぐにでも知らせたい。 だけど流れ星だからそれは叶わない。


 ・・・そういえば今日はまだ一度も飛んでいなかった。


 そこで僕は思い付いた。 この手なら出来るかも、と。


 僕は今日の仕事の為に夜空を飛んだ。 そして少年は願った。


「お母さんが目を覚ましますように、お母さんが目を覚ましますように、お母さんが目を覚ましますように。」


 3回、少年は願った後に夜空を見上げた。 星は輝いて見えるが、流れ星は残っていなかった。


「流れ星さん・・・届いていたの・・・かな?」


 少年は見ていないから分からないだろう。 だけどその答えを作るために、僕はわざわざ出てあげたんだ。


「・・・瑛斗?」


 瑛斗と呼ばれた少年が振り返るとそこにいたのは、ずっと眠っていた彼の母親だった。


「・・・お母さん?」


 少年が確認すると、顔が崩れて、涙を流し始めた。


「・・・お母さん!!」


 そしてそのまま母親のもとに飛び込んだ。


 母親はまだ身体が万全ではないので、ふらついてしまうがなんとか少年を支えた。


 僕はそんな喜ぶ2人を上から見ている。


 少年は自分が流れ星に願ったから叶ったと思っているけれど、彼がずっと母親の近くにいたからこそ、母親も頑張って、もう一度彼の姿を見たいと思ったからこそ、病気に勝てたのだ。


 そんな2人を見ながら僕は、まだ時間があることを知り、最後にもう一度夜空を飛ぶことにした。


「お母さん、流れ星!」

「そうね。 流れ星ね。」


 近い内に父親もやって来ることだろう。 そうすれば彼の願いは本当に叶うのだ。


 僕の仕事ももうすぐ無くなり、この場所を離れるときが来る。 そうなる前に、彼の願いを聞けて良かったと思った。


「流れ星さん!」


 離れようとしたときに、少年が夜空に向かって叫んだ。


「僕の願いを叶えてくれてありがとう!」


 君の願いを叶えたのは僕じゃないけどね。


「また誰かの願いを叶えてあげてね!」


 そう付け加えられた言葉を聞いて、僕は何となくで仕事をしていた夜空に飛ぶ事を、流れ星として初めて意味を持てたかもしれないと、心に残った。


 またここに仕事として任せて貰えないかな。 お偉いさんに頼んでみようかな?


 僕はそんなことを思いながら、夜空へと消えるのだった。

最初はやはり普通に願い事をしている話にしようかとも思いましたが、あまりにも二番煎じ過ぎて、書くにしてもなぁ・・・と思っていました。


そこで考えたのが今回の話のような「あなたが見ているものは、向こうも見ている」と言ったような形の語りにしたのです。


自分が他者と差別化するならこういった形でかなと思ったのもありますが。


趣味の一環でかいてるので、面白さに関しては保証できませんが、ここまで読んでいただけたことを感謝します。


引き続き 風祭 風利の作品をどうぞよろしくお願いいたします

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― 新着の感想 ―
[良い点] 流れ星がお仕事をしている。それは空を流れるという仕事をしているのであって、願い事をかなえるということではない。 なんだかなるほど、と思えるお話でした。 そして自分を見つめ直しながら仕事…
[一言] 楽しく読ませていただきました! お母さん元気になって良かったです!
2022/01/01 14:50 退会済み
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