おっと災難と出くわした。
(誰です?いきなり、てか、絶対に破れって言うのは、能力を貰うな。ってことか?)
(私が誰かというのは別に誰でも良いだろう。そうだ、お前は能力は貰わずに、あのリr…女神に「能力は、あの世界に行って自分で獲得します。なので、無能力であの世界に送ってく下さい。」と伝えろ。)
(因みにお約束通りにしたら?ナニカ起こるのでしょうか?)
(お前の寿命が40%縮む。
大したこと無いと思ったか?じゃあ考えろ。もしお前の寿命が元々30歳程度だったとしよう。そうするとお前はいつ死んでしまってもおかしくない状況に陥るんだ。)
(Wow、それは是非とも避けたい案件ですな。
じゃあ、さっきあんたが言った通りに伝えればいいんだな。)
(そういう事だ。
おっと、私は用事ができたんでな。また会おう。)
「どうかされましたか?」
女神が、突然言葉を詰まらせた俺を訝しむような視線を向けながら、覗き込んできた。
「あ、いや、なんでもないです。」
「それなら良いのですが。で、能力はどうされます?」
「能力は…俺は能力はこの場で貰わずに、あっちに行ってから自力で頑張って獲得しようと思います。なのでこのまま送ってください」
能力は要らないという旨を伝えると、女神は
「え?え?え?え?え?え?」
と同じ言葉の永久ループを始めた。
まあ、そりゃそうなるわな。だって普通は誰だって強い力欲しいし。
俺だってさっきは貰う気満々だったし。
てか本気であいつ誰だったんだろう。
一回この女神の事名前で読んでたよな。すぐに訂正したけど。
また現れるらしいしその時もっかい聞いてみっか。
ようやく落ち着きを取り戻したらしい女神が、こちらを向いたかと思えば手を組んで何かを唱え始めた。
おそらく転移するための儀式だろう。
どうやら俺の予想通りだったようで、暫くすると全身を覆うように光が集まってきた。
「本当に良いんですか?能力無しで。能力の獲得はとてつも無く難しいんですよ?」
「(マジか。そんな難しいのか。でもまあやってやるさ。俺の楽しい明るい未来の為にも)
もちろんこのままで行きますよ。」
「そうですか…」
覚悟を決めた俺の目を見たのか、それ以上は何も女神はいう事なく。
気がつくと、俺は草原の上に立っていた。
「じゃあまあ、街を探して能力の獲得方法でも聞き出しますか。」
取り敢えずどっちか一方に進んでいけば街の一つや二つくらいすぐ見つかるだろ。
「じゃあ適当に左に進んで行きますか。」
そうして左に進み続ける事30分。街は見つかりました。しかし能力について聞き出す事は残念ながら出来ませんでした。
ええ、出来ませんでしたとも。
それは何故かって?ああ、勿論住民がいないとか、俺のコミュニケーション能力の圧倒的不足とか、そんな理由では有りませんよ。寧ろいっぱい人が居ました。
じゃあ、お答えしましょう。
それはですね…
「おい、逃げんな!!!おい、聞こえてんのか?」
街に入ろうとしたんですよ。そうしたら、警報が鳴り響きましてですね…
曰く、
《政府に登録されていない生態電磁波を観測しました。至急町の警備員はランドム街西口330-56にて、未登録者の確保を開始して下さい。》
との事。
それを聞いて不味いと思った俺は、その瞬間全力ダッシュで元来た道を戻っていった。
ふざけんな、送るんだったら戸籍とかそれくらい用意しておいてくれよ駄女神!
対象の方角を把握する能力を持つ奴が居るようで、いくら逃げても正確に追ってくる。
無能力者の生身の人間の足では能力者からは逃げれそうにない。
ブオンブオン的な、スピード系の能力者が追ってきている音が聞こえてくる気がする。
(どうする!!!!)
一向に打開案が思い付かない俺は、まだただひたすらに走り続けていた。
しかし、そろそろ流石に疲れてきて、スピードダウンが始まったのもまた事実だ。
そしてそんな俺にさらに追い討ちを掛けるような出来事が。
進んだ先には、もう一つ町があった。情報が行っていたのか、門の前には大量の警備員の姿が。
(あっ、俺の新生活、ありがとうございました。そしてバイバイ。)
そして両方向から挟まれ、揉みくちゃにされ無事俺は確保されましたとさ。