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癒やされたいキャンパー。異世界を癒やしに行く。  作者: カトー
第10章 陰り逝く帝国
96/201

要塞・練兵場の戦闘

 帝国歴391年10の月14日


 ヴォメロの塔近くで警戒と戦場掃除に出ていた、一機のMS-●6Fが大変な物を見つけ出した。何故、魔獣があたかも命令されたかのように塔周辺で魔獣が立ち止まったかが、掘り出された物によって判明した。業火の跡に残されたそれは、黒く光る60センチほどのフットボール状の珠であった。その正体を、何でも取っておく保管庫主任が、資料の山から見つけ出して教えてくれた。


W19-B(略称、魔核弾頭)

タイプ改良型ロケット弾発射用魔石核分裂型弾頭

開発国アレキ

配備先アレキ国防軍

開発・生産 同上

配備期間 アレキ413年-アレキ499年

生産数38発

要目

魔核出力切り替え型 魔石・小は20キロトン、魔石・中なら90キロトンに設定可能

弾頭 魔石分裂型弾頭(ガンバレル型)、信管は時限式であり空中爆発可能

直径 28センチ

長さ 六十二センチ

重量 350キロ

W19-Bは、アレキ文明が開発した最終開発型の魔石核分裂型ロケット弾頭で、強力過ぎた威力の為、使用された事は無かった。個体識別番号M65280-1~38。1キロトンが、どの種の爆薬か不明の為、高性能爆薬として推測値。MS-●6Fおよび、MS-●6Sのロケットランチャー用の小型弾頭であり、アレキ413年生産が開始され、アレキ499年まで配備されていた。


 ※ ※ ※ ※ ※


「カシミロ殿下、シーロ副伯。みなさんも良く聞いて下さい」

「何だね、改まって」

「魔獣が、ヴォメロの塔近くで止まった理由が分かりました」

「これは、資料室で見つけた古い記録ですが、これで謎が解けたのでは無いかと思います。詳しくは今からお配りする資料をご覧下さい。内容は古代アレキ文明の、負の遺産とも言われる魔核弾頭についてです」


「ウムー。なるほど、カトー卿。これが本当に魔石核分裂型弾頭なら由々しき事だ」

「残念ながら、事実の様です。幸い魔獣の群れは、攻撃前に壊滅させたので爆発はしませんでした。爆発の設定がされて無かったのでしょう。おそらく爆弾としては、まだ使用可能かもしれません」

「そんな、危ない物なのか? カトー卿、もしもこれが爆発したら?」

「エエ、魔石・小の場合。20キロ圏は、跡形も無く吹き飛び、残る物と言えば、ガラスの様に溶けたクレーターでしょう。魔石・中の場合はその幾倍かになるでしょうが、想像を絶する規模になります」


「はい、あの業火の中で焼け残ったものなので、不安定な状態かもしれません。念の為、発見した爆弾は要塞や砦に持ち帰りませんでした。ご希望ならご覧頂く事も可能ですが」

「それは今、何処にあるのかね?」

「100キロ程離れた小高い丘です。人の気配はありませんでした。ただ、魔獣に奪われる可能性もあるので、穴を掘って埋めて来ました」

「ならば、暫くはそれで良いだろう。やはり指揮個体と言う、ウロコの生えた猿の魔獣が知恵を持つ事は明白だ。爆弾は魔獣の切り札だったんだろう。今、問題なのはこの爆弾が複数あったらという事だ。それと、シーロ副伯。ケドニア側はまだこの事を知らないのだろう?」

「ハイ、カトー卿の話は、皆初めてです」

「ラザール司令官に直ぐに伝えるように、魔獣対策に秘密があってはいかん。事は、ケドノアの存亡に繋がるやもしれない」


 魔獣の第1陣、およそ20万匹は壊滅した。だが、ヴォメロの塔では、迫りくる魔獣の第2陣を発見していた。魔獣の数は、およそ3万匹と推定された。奴らは再び、要塞へとやって来たのだ。依然として要塞の攻略を諦めていない様だ。今度は爆弾を持たないのであろうか、窪地に留まらず直ぐに要塞に向かって来る。第2陣は重魔獣が少なく、若い個体が多いらしい。やはり、このケドニアの地で生まれたものであろう。


 留守を預かる別働隊の遠征軍5万は、第1軍団を主体としている。ロンダ砦の守備に8000を送り、42000が練兵場で防御に就いている。イリア橋。ヴォメロの窪地。続いて1500名の魔法使い達が、造り上げたのは砦と言うより、もはや城であった。

 5層の城の前庭として練兵場を置き、やはり1キロおきに3重の城壁に囲まれた、直径5キロの難攻不落の城である。イリア王国のロンダ城が都市平野型の政治を司る要衝ならば、この城は平原に築かれた戦に特化した山城である。


 5万程の軍勢(輜重や商人達は含まない)が籠もるのに最適化されており、高さは帝国要塞の3分の1程であろうか。あまり巨大な城を、目の前で作られるのは、ケドニアが同盟を結んだとしても面白くは無いだろう。名称も相も変わらずロンダ砦と呼ばれていたのは幾分かの、遠慮をしたと言われたが、規模から見れば中々のものであった。


 ※ ※ ※ ※ ※


 魔獣の第1陣は壊滅させた。だが、すぐに魔獣の第2陣がやって来た。第2陣は、約3万匹といわれる。港湾都市メストレに上陸し、壊滅させた魔獣は20万匹だったと聞いている。二酸化炭素作戦が、行わなければ23万の脅威が存在した事になる。


 20万の魔獣は魔核弾頭の爆発を待って、要塞に襲いかかる手はずだったのだろう。要塞といえども、爆発の直撃で相当な被害を受けるに違いない。魔獣としては、反撃をされて数を減らす事になったとしても、要塞占領後の地域を、確実に奪える十分な数が残ると考えたのだろう。第2陣の3万匹というのは、指揮個体が計算した魔獣側の損害個数に違いない。失った魔獣を補てんして、この地でその数を増やすのに十分な数と言う訳だろう。


 ケドニア要塞は依然述べたように、基部には15メートル程の堀があり、東西南北にある入り口の前には、堅固な橋が掛けられていた。ヴォメロの搭が魔獣発見してからは、跳ね橋をあげて橋台のみとし徹底抗戦の構えである。東と南面はほとんどが平坦地で、外見は円柱の台座に円錐の帽子を乗せたような形をしている。内部は、地下を含めて15層で構成されており、大きく3区分されている。


 地下5~1層までは兵員室・看護室・倉庫・食堂・運動室等を含む生活関連、地上1~5層は防御および攻撃層で兵員室もある。特に第5層の中央テラスでは、ロングボウの最大射程と高度差により威力を増した弓の攻撃用に最適化をしている。6層から10層まで指揮・指令室やカタパルト発射台がある。最上階は観測・展望室である。もちろん要塞であるから随所に攻撃・防御・監視所がある。

 近年になってからは、カタパルトやバリスタは随時大砲に交換されている。また弩も小銃に装備転換されつつあるが、500メートルの長射程が可能なロングボウは、運用上外すのはだいぶ先になると言われていた。


 要塞の前面にはエルベ河の水によって堀壕が作られ、垂直にそそり立つ要塞の基部から少し離れた場所には逆茂木が植えられている。巨木の板根の様に伸びた城壁の上には、弓狭間があり鉄砲狭間に改良された箇所も有る。平坦部には、防柵によって攻撃路が特定されている。魔獣が持つ機動力も役に立たず、キルゾーンに入った魔獣の命運は尽きたも同然だ。


 3万の魔獣は、要塞から東に10キロにあるロンダ砦を、無視するかのように通り過ぎていった。背後に敵となる王国軍8000の戦力を残したまま移動するのは愚の骨頂である。それとも、命令の変更が出来ないのか。この群れには、指揮個体が居ないのか? 群れとして動いているのは何故だろうか?


 多くの魔獣は、要塞から3キロ程の所で停止したようだ。しばらくすると、3000程の魔獣が要塞を攻撃し始めた。迎撃準備を整えた要塞を襲うには、実にうかつな攻め方だ。結果は、遠距離射撃をもろに浴びて、3000の魔獣は退却も出来ず全滅した。だが、2日後になると明らかに攻め方が違った。その夜、要塞は包囲下にある籠城戦となった。司令部の皆は、口には出さないが1つの疑念が持ち上がった。

「はたして、この群も、魔核弾頭を持って来ているのだろうか?」


  帝都には、魔核弾頭の存在を1番早く連絡が届けられる者として、当然の様に僕とエミリーが選ばれた。商業ギルドの、秘匿魔法で通信は出来るが、それを信じてくれるかは疑問だ。今ここに居る、魔獣の攻撃の事も有る。ラザール要塞司令官との協議となり、翌朝には出発との予定で調整していたが、その協議の時間さえ魔獣は待ってはくれなかった。


 ※ ※ ※ ※ ※


 翌早朝、要塞では無く今度は練兵場に3000の魔獣が襲来した。中には重魔獣が12~3匹と少ないがいる様だ。警戒線に居た、MS-●6Fゴーレムが発見し迎撃に一旦砦に戻って来た。空飛ぶ魔獣は少なく、戦闘は重魔獣による破壊的な突進で開始されるだろう。屈強なゴーレムと言えど、重魔獣と真面にぶつかれば損傷するか、機能不全に陥るかも知れない。


 ゴーレムに乗りたいと希望したが。アストナージとサイに、運用間もないし間違いが有ってはいけないという事で、MS-●6Sの同乗は禁止された。エミリーも、うなずいている。そんなに、心配させるならと乗るのは止める事にした。今回は、城壁の上からの見学である。味方が、不利になれば魔法で介入するという事にした。


 ゴーレム達が、揃って出撃し迎撃を開始したと思う間もなく、アストナージの命令で、MS-●6F達が魔力弾発射機の3点連射が行われる。続いて、サイがバズーカの発射を許可し、手に持っていたクラッカーを、向かって来る群れの中心に放り投げて次々と爆発させた。自作クラッカーは、思った以上に強力なのか、小型魔獣が吹き飛んでゆく。


 爆発によって、よろめく大型魔獣を屠った3点連射ではあるが、依然として重魔獣の突進は止められぬと分かった。ゴーレム達は、一糸乱れずパンツァーファウストを取り出した。(いったいどんな訓練をしたのか?)

 パンツァーファウストから放たれた、成形炸薬弾がモンロー・ノイマン効果によって重魔獣を貫く。次々と重魔獣が擱座していく。ゴーレム達は、11匹の重魔獣を仕留めた。

 重魔獣が倒れ、束の間、破壊の嵐が止んだ。隙が出来たかと思ったのか、小型魔獣が押し寄せて来る。その群れを、バルカン型機関銃が掃射を始め、あっという間に蜂の巣にしていく。


 練兵場の城壁から見ていた王国兵は、ゴーレム達が魔獣に攻撃を開始してから、僅か15分で練兵場に近づく事も出来ずに壊滅するのを目にした。中でも、MS-●6Sゴーレム(肩が赤く塗られた装甲の為、非常に良く目立つ)が、パンツァーファウストを持ち替える時間が惜しいというように、使用したパンツァーファウスト投げ捨て、単機で前進して行く。


 近づく魔獣を、シールドバッシュで跳ね飛ばし、重魔獣にシールドを叩きつけた時には、思わず王国兵達から歓声が上がった。それだけでは収まらず、3次元空間戦闘用の打ち出し型ワイヤー発射機と巻き取り機を使い、重魔獣を捕獲すると言う快挙を成し遂げた。これに対して、おしまぬ拍手が送られたのは言うまでもない。

(この重魔獣は盾を叩きつけられた時に、打ち所が悪かったのか、絶命したようだ。いったい生け捕りにして、どうするつもりだったんだろう?)


 練兵場前の戦場には、ゴーレムが警戒に当たっている。ここには、15分前は3000匹の魔獣がいたが生きている魔獣はいなかった。

(派手な戦いには大量消費が付き物だが、この僅かな時間で、見つけた残弾をほとんど使うとは。ホムンクルス達の感覚を疑いたい。何がモッタイナイ精神なんだ。やはり、アストナージとサイを教官にしたのが、拙かったのかもしれない。

 決して、同乗出来なかった恨みがある訳では無い。うちは弾を大事に使う帝国陸軍タイプなのに、アメリカ軍みたいに物量でいく予算は無い! 魔力弾発射機は全弾消費。バズーカ残弾2発、炎の斧7丁を作動不良にして、クラッカーに至っては残弾は自作した4発だけ。パンツァーファウスト残弾11発、バルカン型機関銃残弾5500発。アウトレンジの戦いに始まり、確かに一方的な戦いを見せつけられた。しかし、これでは自作しない限り次が無い。次は、必ず乗せてもらうぞ)


 ※ ※ ※ ※ ※


「カレなんてのは、無理だわ」

「どうしたんですか? ハスミン先輩」

「ちょっとね。考え事」

「なんです? 教えて下さいよー」

「お料理の話。エメリナさん、カレって知っている?」

「エェ、話だけなら。美味しい食べ物らしいですね。でも、手に入らない物の代名詞見たいらしいですよ」


「美味しい? カレ? ハスミンさんも、エメリナさんも食べた事無いのか?」

「エミリーさん、それはそれは美味しいそうですよ。でも、恩寵品なんて手に入らなくて」

「ン? それならあるはずだ。カトー卿が帝都から持って来た。なんでも、叙勲した時の引き出物だと言っていたな。そうかー、そんなに美味いのか」

「あるんですか? 皇帝陛下の帝室恩寵品ですよ」


「じゃ、探してみようか。マ、見つけられれば美味しく頂こう」

「良いんですかー?」

「いいんじゃないか? 恩寵品と言っても、どこにあるか分からんし、カトーも気にしないだろう。大綬章なんて、棚の片隅に置きっぱなしなんだぞ」

「エー普通、大綬章の複製とか作って、受章記念写真は、額に入れて飾るもんですよ」


「あれ? エミリー、ハスミンさんも、エメリナさんもどうしたの?」

「カトー、思い出せ」

「分かったから。ヒェー。肩を、掴んで揺らさないで。で、何を?」


「そう言えば、シーロさんが魔石は僕のだからって言って、大きな箱が二つ渡されたけど。あれが恩寵品かも」

「2個? どこにあるんだ?」

「日影が良いって言っていたから、クロゼットの奥。確か、式部官のグウェナエルさんからで、皇帝陛下がメモの5番のお返しですと言われて渡されたけどー」


「ここにあったぞー。全部、厳重に個別包装してあるな。これがカレだな。話しに聞く米もあるぞ。ジャポニカとかインディアと書いてあるが何の事だ? こっちには帝室恩寵品の味噌、醤油と書いてあるが、どうやらカレは特別らしい。持ち出し不可と、皇帝府一般用恩寵品には使用禁止の判が押してあるな。良し。みんなー、食べるぞー」

「そんなー」

「いいんじゃないか? 飾っておく物でも無いだろう。美味しく頂こう。だが、調理法が分からん」

「その顔、カトー。さては知っているな」

「分かったから。ヒェー、肩を掴んでこんなに揺らさないで。今、言うから」

(遠い昔の記憶が、……整備主任の顔が浮かんでくる。同じパターンか? イヤ、あれより酷い。そうだ、王都での会議室だ。エミリーの、あの訊問だ)


「鍋と釜が要るな」

「それなら、食堂のロマーヌさんに頼みましょう」

「先輩、アタマイイ!」

「味もそうだが、香りも良いと言っていたな。バレないかな?」

「ロマーヌさんのいる第5層の食堂を、閉鎖しましょう。食中毒の恐れが出たので、完全消毒をしなければいけないとか、なんとか」

「エメリナさん、あなたはこうゆうの、得意そうねー」

「里で、破壊工作と流言飛語の授業。優でしたからね」


「さすがに、完全閉鎖というのはー。必要な処置なのですかロマーヌさん?」

「エェ、マルタン大佐。食品衛生は大切です。1晩だけで、4時間もかからないと思います」

「しかし、魔獣戦の為、急には人が出せませんよ」

「消毒剤は用意してありますし、急な事なので知り合いが手伝ってくれるそうです」


「ロマーヌ小母さんも、やるね」

「年長者をからかっちゃ、いけないよ。私も料理人の端くれ。作ってみたいよ。その、噂のカレというの」

「じゃ、今晩行くから。他の材料もお願い」

「あいよ、まかしときな。でも、何でカレなんだろうね?」


 ※ ※ ※ ※ ※


「イヤー、昼食前に集まってもらって、すまん」

「それはかまいませんが、司令官。魔獣に、何か動きでも有ったのですか?」

 会議室には、ラザール要塞司令官、マルタン大佐、マチュー少佐、ジョスラン伯爵。イリア側からはカシミロ殿下、シーロ副伯、影のセフェリノ、カトー卿の8人が揃っていた。

「ハハ、違いますよ。では、ロマーヌさん。お願いします」


 軽く会釈しながら、会議室にメイドのハスミンとエメリナが、サービスワゴンを押して入って来た。

「少し早いのですが、本日の昼食を用意させていただきました。カトー卿のお力で、かなり珍しい品が手に入りました。みなさんと、ご一緒にという事だそうです」

「ホー、何でしょうな? カトー卿のお力ですか?」

「ジョスラン伯爵、今しばらく。メイドが、用意いたしますから」

「この香り、もしかして。イヤ、これは帝室関係者しか賞味出来ない物のはず」

「ジョスラン伯爵、ご存じなので?」

「オォ、これは、カレではありませんか! 皇帝陛下が、お召し上がりになる特別な料理。それがここに有るとは」

「そんな、大層なものなのですか?」

「そうです。東方イルの料理で、使われる香辛料の価値は同じ重さの魔石と同じと言う者もいるぐらいです。金などでは、とてもとても。ミスリムで売り買いされているとか」

「サ、冷めないうちに頂きましょう」


「カトー卿、そんなにバクバクと、アーア。あっという間に食べられましたな」

「自分の生まれた所には、カレは、飲み物という教えがありましてね。マ、カレとは子供から年のいった者まで食す、万民の好む食物です。飽きる事の無いその種類、味付けは多く、家々によって異なるともいわれております。

 ごく簡単作れるよう工夫された、ルを用いて作る者もいれば、様々な香辛料を使いこなす為に、料理人からカレをきわめようとする探究者になった者までおります。

 町々の角にはカレ専門の食堂があり、その場で楽しむ事も、はたまた持ち返る事も随意に行え、近年では、レトルトという、お湯で温めて封を切れば食べられる物もあります。

 カレ単品だけでは飽き足らず、トッピングなる添え物を考え出しその種類も至って多種多様。例えばとんかつ、ソーセージ、エビ、ホタテなどの海産物、さまざまなバリエーションを楽しむ事も思いのまま。辛さの調節も様々に選べ、お代わりを繰り返し、食後の満足感、幸福感は他に比べられぬ物。人々に喜びを与える至高の食べ物と言われております」


「な、なるほど。それがカレなんですな」


 ※ ※ ※ ※ ※


「ロマーヌ小母さんも、やるね」

「エメリナちゃんもジャガイモの皮むき、得意になったみたいだね。それにしても、本当にカレというのは美味かったね。でもね、ハスミンさん。何でカレなんだい?」

「私が、お答えしまーす」

「エメリナちゃん、何だい?」

「小母さん、エミリーさん。実は、ハスミン先輩の恋心なのでーす」

「もう、エメリナ。語尾を、一々伸ばさないの」

「それは、コンスタン少尉の為でーす。少尉はカレが好きなんだそうですよ」

「おや、恋バナなのかい。じゃ、こっちへおいで。お茶と菓子を用意するよ」


 ※ ※ ※ ※ ※


「私、コンスタン少尉と話していると必ず好きな食べ物なに? と聞かれます。好きな食べ物のこと、どう答えていいか分からないですし、正直に答えてしまうと引かれそうで」

「ハスミン先輩。男が好きな食べ物なに?と聞いてくる理由はこれです」

「エ?」

「では、この私、エメリナがお教えしましょう」


「良いですか。聞く理由は、いつも、お世話になっております。みたいに単なる社交辞令です。次は、それ以上話題がないからです。気まずい空気、話をつなげるために好きな食べ物なに? と聞くのです」

「本当?」

「でも大丈夫。私の言う通りにすれば、少尉なら落とせます。まず。好感度をアップしましょう」


「ハスミン、少尉ならってどういう事?」

「エェ、答え方で好感度が上がるなら、男の人にウケる女性の好きな食べ物で好感度が上げればいいんです。好きな食べ物なに? と、ハスミンさんが聞かれたという事は、少なからずハスミンさんに好印象を持っているはず。聞かれたら、少尉の想像する女の子らしい無難なものを言って話を盛り上げるんです。運が良ければ、食事デートに誘われるかもしれませんからね。エヘン。では、みなさんメモの用意はいいですか?」


 男に人からの質問。好きな食べ物なに? の上手な答え方はイメージさせる事ですね。

1番目は、かわいいものです。

かわいい食べ物を答えると、「女の子らしいな」と喜んでくれる男性も多いんだとか。名前を聞いただけでなんとなく、かわいいを連想する食べ物としてあげると、その女性までかわいい雰囲気に感じるなんて事もあります。


2番目は、高級すぎないものです。

デートの際に、あまり高級すぎるものだと敬遠されてしまうことも。少尉の財布も考えましょう。


3番目は、フルーツです。

かわいいく、シンプル。でも分かりやすい。健康的なイメージのフルーツは男性が喜ぶ答えですよ。


4番目は、話題のものです。

最近、良く頂くんです。という形で、好きな食べ物をこたえるのもあり。流行でなら、相手も食べていたりすると盛り上がりますからね。


5番目は、甘いものと辛いものです。

ハスミンさんは好き嫌いが無いから限定せずに、甘いものや辛いものと言うのもあり。デートの時、少尉が頭を悩ます事が無くなります! 少尉も甘いもの好きだったら気が合うわけだし、少尉が甘いのは苦手なんだと言えば、やっぱり女の子だねと思ってもらえるし、逆に質問して、少尉の好みが分かったり、良い情報が採れるかもしれませんよ。


6番目は、お店の名前を出す事です。

具体的なお店の名前もあり。たとえば、王都ロンダの「美味しいケーキのお店」のように。ケドニアには無いけど、どんなお店なの? 美味しいのかな? 見つけたら、今度一緒に行こうか! なんてね。デートに最適なお店を、誘いやすい様に好きな食べ物でアピールするんです!


7番目は、自信のある手料理を食べてもらう事です。

でも、先輩。料理上手く無いですよね。大丈夫、好きな食べ物は、パスタでしたよね。これだけは出来るって言えるほど練習しましょう。作ったパスタは、私が犠牲になって食べてあげます。上手に出来るようになったら、今度食べさせてなんて約束ができるじゃないですか。自慢の一品に挑みましょう。少尉もパスタ好だったら、手料理ができる効果がありますよ。


この後、男ウケしにくい、グッと我慢すべき? 女性が大好きな食べ物のお話があった。

(ためになるお話だったわー。しっかりメモしているロマーヌ小母さんも、やる気満々ね。お相手は誰なのかしら? いけない。まず、私の事なんだから。しっかりしないと。エメリナは、里で手練手管の授業を真面目に出ていたんだろうな。やっぱり猫系の人は、こう言うの得意なのかな? 私の結論。自分の、好きな食べ物を答えるだけでは、相手の気は引けないかも! つまらない会話だと思わず、コンスタン少尉を喜ばせてあげる答を考えてみる事にしよう)

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