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癒やされたいキャンパー。異世界を癒やしに行く。  作者: カトー
第8章 魔獣の進撃
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四聖女のお祭り、開催相談

 帝国歴391年5の月8日

「お久しぶりですな、カトー様。御身の安からん事を」

「ウム、ありがとう。セルヒオ殿」

「して、大事なお話があるとか? 案内兼説明役にお付けした朗読奉仕者、ビニシオが申しておりましたが」

(ビニシオに頼む時は、いつも急用になる。すまんなー。それに貴族なので、年下とは言えへりくだる訳にはいかないし。司祭にも前回と、同じ感じでと)


「実は、敬愛すべき、四聖女のエベリナ、テーア、シモーヌ、ニコレット様のお祭りの事なのです」

「ホー」

「王都の巨人の秘蹟祭りでは、五聖人のオラシオ、エドムンド、ディオン、エミール、シルヴェリオが称えられる事が多いと聞き及んでおります。敬愛すべき、四聖女様のお姿が薄くなっている事を憂いておる次第です」

「エーと、それでどのような?」

「そこで、この王都の槍試合がある6の月か7の月辺りでお祭りを執り行うべきと愚考いたしました。人が集まって来ておりますので、祭りとの相乗効果も見込めますしね」

「それはそれは。ファーァ、失礼」

(お金の話は、この後ね。あくびなんかしていると目を廻すぞ)


「実は、商業ギルドとはもう話がついており、規模は巨人の秘蹟祭りと同じかそれ以上と決めております。もちろん寄付金も同じように寄進させて戴きます。他にも、いくつかの賑やか案件があります。この四聖女様の祭りを首席司祭であられるセルヒオ殿に、音頭を取ってもらい教会関係をまとめていただこうと思いまして。まずは、ご挨拶にまかり越しました」

「なるほど、ご奇特な事です。あなた様に、神の祝福を。直ぐにでも、お話を伺いましょう。サ、サ、私の部屋にどうぞ」


「して、お話を詳しく聞かせていただけるのでしょうな」

「ハイ、毎年1の月末に行われる、3日間の巨人の秘蹟祭りは有名です。なにを、当たり前の事ではないかとお思いでしょうが、先ほどこれと同じ規模でのお祭りを執り行うと申しました。四聖女のエベリナ、テーア、シモーヌ、ニコレット様が、お祭りの全面に出ていただくのです。巨人の秘蹟と同じ規模です。各ギルドの協賛も受けますが、商業ギルドが主催のパレートをいたします。さすれば、商店からもご寄進がいつもより増える事、疑いなしでしょう」

「それはまあ、同じ規模より大きければ、教会にご寄進される方も増えるでしょうな」


「順序立ててお話いたしましょう。まずはお祭りの主役として、四聖女様を前面に出ていただくのです。さすれば、女性中心の祭りとして評判を呼ぶでしょう。そこで多くの女性の方には、一番興味をお持ちと言う恋愛を中心とした話題を振りまくのです。次に教会にて、霊験あらたかな御札を購入して頂けるチャンスを作ります」

「フーム。ここでも、霊験あらたかな魔除けの御札なら、もう出しておりますが」

「イエイエ、魔除けなどとは有難味が違います。恋愛、色恋、結婚、純愛という3才の幼女から、80のお年を召したレディーまでお好きと言われる、愛の物語が叶うかもしれない教会の御札を作るのです」

「ハー、左様な事が叶うのですか?」

「かもしれないです。ここ大事です。似たような物なのですけど。例えば、この御札を持っていると、人気の男性貴族、近衛の将校、それに大富豪、もちろんその息子さんでも、この御札を持ってさえいれば恋と出会うチャンスが巡って来るのです。玉の輿の恋愛成就のお札とするのです。ですが、嘘はいけません。必ずとか、それに類する言葉は使わない様に。道ですれ違っても、遠目に見ても、出会った事に違いは有りませんからね。他のも同じように、言葉に気を付けてください」

「なるほど、これは勉強になりますな」

「加えて、この恋愛成就の御札の3倍の効力が有ると言って、ご祈祷を受け付けます」

「本当に?」

「気の持ちようですよ。それで、お札を下げ渡す時に貴族街と商店街の観光案内紙を渡しておけば出会う率も高くなります。その程度で良いのです。もしもと、言う夢が必要なのです」


「聞いた話では、教会では参拝記念にシオリを渡されていたと思いますが」

「記念のメダルと、革のシオリですな。王都第一聖秘蹟教会だったと思います」

「それだけでは、もったいないですよ。先ほどの御札もそうですが、全教会に下寵所を作るのです。そして愛に飢える乙女たちに下げ渡しましょう。まぁ、お土産屋さんですね。場所柄、食品は何ですから、そうですねー。いま一つ、短めの刺繍糸で、手首にまくヒモを作りましょう。赤い色の紐は恋が叶うらしいとか蘊蓄を付けて。なに、四聖女のヒモ、教会の愛の加護のヒモと、何でも良いのです。それらしい名前なら。ですが、さっきも言ったように決めつけず、らしいを書き添えて下さい」

「それは、中々のお考えですな」

「なに、売り場は2メートル四方も有ればよいでしょう。この刺繍糸の納品者から、売り上げの一部を冥加金として献上させましょう。教会が直にやったらだめですよ。場所を貸すと言う風です。中には願いが叶わなかったと言って、文句を言いに来る者が出ますからね。オォそうだ! 刺繍糸の販売については、商業ギルドに丁度良い知り合いがおります。ご紹介いたしましょう」


「カトー様は凄いですな」

「まだまだです。話は終わりではありません。これらに加えて、値段が10倍ぐらい高い物を作るのです。名付けて、謹呈○○とでもしましょう。これは、お祈りをちゃんと上げて下さい。人の目に触れる様に、祭壇前が理想的ですね」

「ますます霊験あらたかな、感じがするという事ですな」

「中々、ご理解が早い。さすが、セルヒオ殿。まぁ、そのように考えて頂けるなら、恋愛成就だけでなく青や緑は判断力や健康に良いらしいとか、色や柄によって効能や、男女はもちろん、生まれた月毎に違うのを付けるなど、思いつかれるのも雑作も無い事でしょうね。あと、足首にも捲けますから、お忘れ無きよう」

「これはこれは、言葉にもなりませんな。子爵のお知恵は、果てしのない海の様ですな」


「あと近々発表されますが、商業ギルドと協賛して食べ物で競技会を行います。これから詰めていく話なのですが、商業ギルドでは王国の許を得て、露店販売の許可証を出す処までは決まっています。これを王都にある、全ての教会前広場にて、おゆるしを得て催したいと思います」

「何やらこれも、良いお話しの様ですな」

「はい、東の大陸ではB級グルメ大会と言って人気の催しがあるのです。この食べ物フェスティバルに、各教区の口の肥えた司祭様方の、おすすめのお店を推薦して頂きたいのです」

「箔付と、言うやつですな」

「出店、屋台は地域対抗B級グルメですか。教区でなくともタラゴナやビルバオの料理を始め、王都の名物料理という羊の丸焼きの店など珍しい物が並ぶと嬉しいでしょうな。これもギルドに、貸し出し用の屋台があります。良ければ、ご紹介しましょう」

「そして、出店者から幾らかご寄進を頂くと言う事ですな。なるほど、なるほど」


「そういえば、今一つ探している事が有るのですが良いお知恵が無いでしょうか?」

「おや、何でしょう」

「水芸と歌謡ショーの会場探しなのですが、中々場所の選定が難しいのです。ご存知かもしれませんが、今やっている美味しいケーキ屋さんと言う私のお菓子屋から、第三聖秘蹟教会の前のお風呂屋さんが近いので、使えたりすると助かるのです。水を使う芸なのでお湯屋が会場となれば最適なのですが、前には広場もありますし」

「ウーン、それは御困りでしょう。しかし第三聖秘蹟教会前のお風呂屋とは、ちと拙いですな」

「イヤ、私も存じております。聖秘蹟教会の一部の方は公衆浴場によっては、いかがわしい場所として混浴できる浴場を問題視されておられる事を」

「さすがに、湯屋の件は」

「他には、水芸が気がねなく出来る場所が無くて。風呂屋には、知り合い商業ギルドの者を通じて話はしてあるので、会場としては押さえた形なのですよ。湯屋には、吟遊詩人が歌を披露する舞台があるのです。水がねー、売り上げは随分と上がると思うのですけど」

「売上ですか? なるほど。流石、カトー様ですな。分かりました。色々とお教えいただきましたし、私が何とか第三教会内の反対派と話を着けておきます。歌謡ショーですか? この苦しい現世、人々には歌を聞いて、心安らかに過ごすひと時も必要でしょうからね」

「では、この話を進めても」

「もちろん、微力ながらお力添えをいたしましょう」

「さすがセルヒオ殿。有難い事です」

「では、こまごまとした話は、担当の者を呼びますので。私は、教会内の根まわしの方をいたしましょう。では失礼」

(さすが、お金になるとフットワークが軽い)


「第九教会で、首席司祭セルヒオ殿のお手伝いをさせていただいております、司祭のエミグディオ・アレナス・マチャドでございます」

「カトーと申します。私ただ今、イリア王国にて子爵位を賜っております」

「オォ、それは失礼をいたしました。お許し下さい。貴族位に有る方とは。うかつでございました」

「イエ、お気になさらず。神の御前では皆同じです」

「子爵位に有る方が、語使いに態度も謙虚であられるとは、実に立派な御心がけです」

「これからも、お世話になります。あぁ、それから、タティアナ、アデラ、デボラ、フェブリシオ達がよろしくと申しておりました」

「彼女達とお知り合いなのですか?」

「ハイ、今は、私の店にて働いていてくれます。みな善い人達です」

「そうですか。それは良かった」

「私も、彼女達から司祭様のご献身は耳にしております。中々、ご苦労されておられる様で。これは、些少ですが寄進させていただきます。皆さんの食費に足しにでもして下さい」

(ゴトン。と1キロ。もう金貨は重さで、行っているもんねー)


「いや、これはありがたい。神のご加護が御身に有りますように。しかし、以前この場所に来られた事でも有るのですか? 朗読奉仕者のビニシオと、挨拶を交わされておられましたが」

「エェ、最近、知り合いになりまして。首席司祭の、セルヒオ様のご配慮かと」

「そうですか、この王都第九聖秘蹟教会では、最近奇跡が起こりましてね。出入り口の近くの、募金箱が置いてあるのですがそこになんと金貨が1000枚以上入っておりましてな。いえ、奇跡と言うのは、金貨の事ではありません。教会内で行われた神の奇跡なのです。癒しの魔法と言われてますが、それが大変な評判なのですよ」

「そうなんですかー」

「イヤ、重ね重ね失礼しました。ひょっとして何かご存知かと思いましたので、詮無い事を言いました」

「ハッハッハ。では、そろそろ、お暇します。また、参りますので良しなに」

「そうですか、残念ですな。では、ごきげんよう。神のご加護が有りますように」


世の中には、鋭い人が居るもんだ。


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