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癒やされたいキャンパー。異世界を癒やしに行く。  作者: カトー
第7章 ゴーレムとドラゴン
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会議は続く

「カトー。お前の建てた計画なんだから説明して」

「分かっているって、エミリー。じゃ、段々と行きましょうか。まず、耳の早い貴族は、魔獣上陸の噂について、もう知っているでしょうね」

「そうだな。魔獣のケドニア侵攻は、直ぐに王都に居る貴族達の知る処になるだろう。だが、王都には貴族本人は少ない季節でもある。おそらく、留守居役が連絡の為に早馬が出すだろう」

「そうですね。魔獣襲来の話が出れば今年は、槍試合どころではないでしょうな。残念な事です。」

「領地に帰って、槍試合を見るのが楽しみだっただろうに。襲来が本当だと分かれば、王都にとんぼ返りせねばなるまい。これでまた、母上も忙しくなるな」

「その事ですが、もうすぐ春の馬上槍試合なんでしたね」

「あぁ。時間の経つのは、早い物だなー」

「そうですな。まったく時間と言うのは。昨日、この会議が夕方前から始まり、もう夜が明けそうですから既に5の月6日になりますか」

「何か、棘のあるような。シーロさん、エミリーの尋問がなければもっと早くですね。……まぁ、終わらないか」

「カトー、いいから話を続けて」


「試合は毎年6の月の第1日に始まり、7の月からはトーナメントが開催されますよね」

「アァ、伝統衣装を身につけた数百人の花を持った女性が、パレードを行うのだ。予選は練兵場でやり、本選は教会前広場で行われるぞ」

「そして、100年続く春の馬上槍試合は、はなやかな衣装を身につけた騎士達が競い、一幅の絵画のような雰囲気に包まれる。でしたか」

「カトー男爵。中々上手い事を言うね。私も試合は好きだよ」

「殿下、話が止まります。カトー卿、続けて下さい」


「ハイ、まずですね。ケドニア帝国南部に、魔獣が上陸したと公表します。イリア王国は、援軍を送る心算だと。ところで、王都と周辺の戦力は王都の練兵場に集合するんですよね」

「そうです。練兵場に集合です。でも今年は、公表されれば槍試合は延期か中止になるでしょう。会場の練兵場は、遠征軍の集結予定地の一つとなります。気の毒に、遠い所から来る者にはもう試合に出るぞと出立している者もいるでしょうに」

「そうなるだろうなー」

「ハイライトの御前試合は、第二城壁前の掘割にある噴水広場で行われます。早いうちに知らせてやらないと、広場も関係者で一杯になるでしょう」

「そこで、カトー男爵の案になる訳なのか」


「ですから、順序立てて噂を流します。ケドニアに魔獣が上陸したらしいと。これは直ぐに。後は、いつもの様に行います」

「シーロ。噂を広めるには、影たちが使えるな」

「彼らのいつもの任務とは違うかもしれませんが噂話しぐらいなら多分やれます。そうですね、カトー男爵は影の印象も良いみたいですし。協力してくれるでしょう。でも、いつもの様にとは?」

「イヤですねー、シーロさん。いつも通りです。初歩の初歩、影さん達は、町への噂を流す時、酒場であなただけですよと魔獣の上陸を教えます。3人ぐらいでしょう、最低でも2人ですね。話すのは。そして1日か2日過ぎてからですか、偶然のようにまた会うんです」

「それで」

「今度は、ほっとけない、何とかしよう。と、前に教えてくれた人が言うんです。次に会う時には、王国では、かなりの規模で軍の編成が行われるじゃないかと。大規模な軍が派遣され対魔獣戦になるだろうと思われる、と伝える。そして公表をされる。急ぎの時は、まとめて伝えても良いですよ」

「ウンウン」

「もちろん、サクラも入れて盛りあげてやる。酒場で、ここだけの秘密だと言えば、直ぐに町中に広まります。その次も、繰り返すだけですよ。やり過ぎない様に少しのウソと、沢山の小さな真実を入れて。こんな所でしょうかね。すいません。ちょっと、トイレ行ってきます」


「シーロ。影はそんなことしているのか?」

「聞いた事ありません。今回も、役人が高札場で太鼓や銅鑼を鳴らして人を集めるぐらいで良いかと思っていました。でもこれって、カトー卿が、知っているんです。何処でもやっているんでしょうね。やって無ければ、すぐ、影の訓練項目に入れるようにしなければ」


「失礼しました。エーと次に、遠征軍編成を下命します。ケドニア帝国への援軍派遣は、順次に王国の国境に集合ではなく、本来の集合地を変えて、全軍を王都の練兵場に集合させます」

「方向が反対になるので、東部の貴族は嫌がるでしょうな」

「まぁ、王都より東、国境に近い者ほど苦情は出るだろうな。王都に来る行軍費用も、かかるしな」

「そこで、噂を流しておくんです。古代の転送の魔法が再発見された事。そして賢者の話も。ただ、賢者は少しぼかして下さい。賢者と言うのも嘘か誠か分からない。直ぐに王都に来るか、居るか分から無いけどと言う感じですね。ここで、教会の奇跡は、彼が起こしたと噂を流します」

「なるほど、賢者の話にするのか」

「ハイ、殿下は、直ぐに魔法を使った者を見つけて縁を繋いだと。さすが殿下だ。先見の明がある。次期国王は、賢君まちがいないと噂を流します」

(ここで、殿下にヨイショをしておくと、会議の流れが良くなる。賛成に廻ってくれるかもないし、少なくとも反対はしないかも。日本の会議のノウハウ、根回し大事だわ)


「すこし、褒められすぎの様な」

「必要です。いつもの者がまた、秘密を教えてくれたと思うだけです。どうやって縁を繋いだのか聞きません。いつも、本当の事を教えてくれるのですから」

「そうだな。褒められるのは、王家にとっても吝かでは無いからな」

「次にその賢者は、転送魔法陣を使って遠征軍を送るので、行軍には100日どころか1日もかからず着くと。今頃は、北街道で転送陣を作っているかも知れないと」

「転送陣かー。信じるかなー。これ、そんな物があるかと思われますよ」

「そこです。そうなんですシーロさん。さすがですね。で一般人だったら疑われてしまいますよ。ですが、王国貴族で、それも殿下がですよ、貴族位を魔法使いに下賜していたら。縁を結ぶ為にと」

「それは、その……説得力があるような」

「ところが、いまいちなんです。男爵だと言うのが、地位が低いような気もするんです」


「ウン、その事なら良い考えがある、私から、サプライズだ。男爵から子爵にしておこう」

「閣下、カトー男爵は40日前に男爵位に上げたばかりですよ」

「まぁ聞け。貴族と言うのは、地位に敏感だ。40日で男爵から子爵に上げるとは、王家には何か思惑があると思うだろう。今まで、名前さえ聞いた事の無い、カトー男爵の様なぽっと出の貴族。失礼、カトー男爵。一般論だよ。特にカトー卿の場合はそうだろう。それが、癒やしの魔法や転送魔法陣を作れる魔法使い。もうこの時点で、魔導師だな」

「どうなるんです?」

「そんな魔導師を、国が放っておく事は無い。やはり転送魔方陣はあると。そして、もっと隠し玉を持っているかもと、思うのが貴族なのだ」

「そうかもしれませんが」

「それに大魔導師を招くのに、私が下賜したのが男爵では、ちと、けち臭く思われるだろう?」


「それはともかく、少し世論を誘導するだけですよ。もちろん、王国民の意見を良い方に誘導するだけです。ここまでは、割と簡単にやれると思います」

(誘導するのは、王国民と殿下だったりして。ホムンクルスとの約束も有るし)


「それで行くとしても、予算が有りません。魔獣対策費なんて用意してありません」

「やはりそこか」

「何とか予算をひねり出しても、遠征費用だけで大幅な歳費不足になります。20万人です。武装させて、食事させ、移動させねばなりません。下手すれば国がおかしくなります」


「で、閣下。僕も考えたんです。禍転じて福となすって」

「早速、お話し下さい。カトー男爵。失礼、カトー子爵」

(はい、子爵本決まりです。耳に何回も入ると、決まっていた様な気になるのが人の性です。人は雰囲気に流されやすいのでね。気をつけましょう、殿下)

「そうだった。カトー子爵、その策とは?」

「魔石を売ります。知り合いに魔石・中を売って作ります。さすがに魔石・大のように1000億とは行かないでしょうが」

「魔石が有るのですか!? でも子爵、たとえ1000億あっても足りませんよ。軍を動員するのですから」

「もちろんですとも、魔石はいわば、手付? イヤ、スタートアップ? 着手金かな。最初なら200億でも多いですよ。これ、出店や屋台を出して回収します。イベントの収益性は抜群ですから損は出ませんよ。それにあと一つ」

「何ですか?」

「今回、商業ギルドが主体になります。彼らにも一回だけ美味しい話をしておきます。いいですか?」

「なにやら、心配ですが。一つだけですよ」

「大丈夫ですよ、ちゃんと釘を刺しておきます」


「それで、イベント? なのか?」

「編成と訓練は、王都練兵場でやりますよね。どのぐらい入るんですか?」

「元から、緊急時対応は近衛師団の編成拡大方式だからね。2~30万ぐらいだろう。もっとも、30万だとかなり狭くなるが」

「そうですか、会場の動員数はと……。 じゃ、イリア王国遠征軍団はその20万で決めちゃいましょう」

「エ、そんなんで、決めるんですか?」

「シーロさん、勢いは大切です。ドンドン決めてかないと、まだまだ先は長いんですから」


「開催予定だった槍試合の用意と、ムードをそのまま取り込むかー。ウン結構、人が出るのでしょう?」

「王都民は30万ですが、何らかの関わり合いがあるとして20万ぐらいは有るでしょう。槍試合は、娯楽の少ない民にとって人気のお祭りみたいな物ですからね」

「集合の日付と規模にもよるでしょうが、兵員で20万。王都民で20万。合わせて40万か。多分いけるでしょう」

「エ、槍試合は中止で無くなったのでは」

「イエイエ、そんなモッタイナイ。せっかく王国中から人が来るんです」


「なるべく、参加人数を増やしましょう。イベントは人が集まってなんぼですから。そうですね。まず、○○製作実行委員会を作ります」

「エ?」

「イベントの数だけ作ります。これは、決して責任の所在をあやふやにしようとする為ではありません。使いようですけどね」

「その、委員会と言うのは何を?」

「グッツの製作と、上納金の管理ですね。もちろんイベントの製作、実行もしますが」


「軍団編成記念とか、ケドニアを救おう会とか何とか。でも手始めは、伝統衣装を身につけ数百人の花を持った女性が遠征軍を応援するパレードです」


「絶対受けますよ。槍試合が無くなるかもと、がっかりしていた処へ、華やかな乙女のパレードですよ。男性ならずとも、放っておけません。話題としては最高ですよ。お年寄りとは違い、あったらあっただけ、多くはお金を考えて使わない世代なんですよ。男女とも恋愛グッツを出しましょう。後、聖秘跡教会で、恋愛成就のお札を作ってもらいましょう。アァ、追加のお金を出せば、御祈祷もして戴けると思いますよ。丁度、その方に興味をお持ちの司祭様が居るんですよ」

「そのような事が出来るなら、皆喜ぶでしょうな」

「次は、騎士の馬が集まっているので競馬ですね。騎士が馬に乗って来てますよね。馬にも、参加してもらいましょう。で王都で優勝者にはパレードが行われるそうですが、今回は規模を大きくします。ここまではいわば下準備。ここからが本番ですよ」


「花を持った女性のパレード。巨人の秘蹟の祭りを1の月と同じ要領で、名前を変えてもう一度やります。四聖女の何とかで、3日間ですね。次は花火大会をして夜の祭りも行きましょう。夜店も良いもんです。ちょい前から、そうですねイベント五日前かな? 賢者の話も、アーサー王のマリーンの伝説みたいなのないかな。賢者の生まれ変わりとか、世を忍ぶ仮の姿でどこかの王子とか。夢と話題を提供するんです」


「あぁ、どっかで歌謡ショーを入れておきましょう。丁度、うちの店に感じの良い姉妹がいるんです。歌ってもらいましょう」

「でも、場所も考えないと」

「何とかなります。次は、花火大会とドラゴン呼んでファーイアーショー。これは、火吹き祭りとでもしてきましょうか。晴れる事を祈って下さい。で王都の夜を飾るのです」


「カトー卿の話ではドラゴンがいる事ですし、練兵場の中央に予め岡を作ってドラゴンを中に入れといて飛び出させる。なんてのはどうですか?」

「シーロ。それって、絶対に大騒ぎになるぞ」

「やっぱり、そうですよね」

「イヤ、アイデアは良いと思いますので、そっちの方も考えてみましょう」


「もリ上がった所に、ドラゴンを呼び寄せ、魔導士が登場します。これがハイライトになりますね。綺麗ですよ。輝く光球が空を飛びかいあって。火魔法の応用で地方に居る時に練習を散々したんです。噂になるぐらいだったそうです。いまでもキャンプサイトでなら、夜は手慰みとして火魔法を松明や、照明弾の代わり花火を使うんですよ」


「色々と工夫していただきましたが、やはり予算が足りないと思うんですが」

「イエイエここからが、本領発揮です。腕を奮う 、腕前を発揮する 、腕前を披露する 、ですよ。大丈夫です。美味しいケーキの店でも、出しますが王都中で協賛セールをしましょう。商店の方はこれを、呼び水にしてドーンと使ってもらうんです」

「セールですか。これはというのは?」

「すいません、金券を出すんです。話が後先になりましたが、王都に早く来て待っている兵士に、先着○○名様だけと言って」

「金券と言うのは、金の引換券ですか?」

「金券は遠征する兵士に1人1万エキュぐらいで良いか? 20万人だと200億は無理か、なら最初の5万人に10万エキュで50億か、意外とかからないな。補助金百億出して王都の店中でもセールスするか。商業ギルドは、ガイドブックを印刷できてたし。宿営地で引換なら」

「カトー卿、何をぶつぶつ?」

「失礼、殿下。ところでシーロさん。王都の店はどの位あるかご存知ですか? 分かると良いんですが。分から無い。じゃ、推測で済みませんが、人口30万だから大店500、普通の2000として2500。屋台も同じとして。合わせて5000か。それぐらいは有るな。1店舗あたり100万エキュ出すか。で50億。参加するだけでもらえるし、大店はともかく屋台には嬉しい数字だろうな。ウン、200億でいける」


「もう少し工夫して、王都民の固い財布の紐を緩めましょう。王都に、お饅頭みたいのがあれば良いんですけど。王都キャンディー。王都スープ。王都キーホルダーは古いか。なに、王都と付けば何でも良いのですから販売者から、売り上げの一部を冥加金として取りましょう。王都の名の、使用料ですよ。これは、利益からでは無くて」

「流石、カトー様。経営のからくりがお分かりですな。経費が引かれる前の方が、数字が大きいですからな。やはり何処かで修業を積まれて? イヤ、そのお年では。失礼しました」

「まだまだです。若造ですよ。お恥ずかしい。お土産専門店として練兵場や王都の有名どころ、そうですね教会に売り込むんですよ。教会はお札も出している事ですし、下地はもう出来ているんです。少し背中を押せば、良いだけですよ」


「なにやら、分から無い言葉ばかりだな」

「殿下、お金が動けば、景気が上がり税収がアップするという話です」

で、会議の終了間際には、こんな声が聞こえてきた。


「カトーは、稀代の魔法使いだ」

「カトーは、稀代の嘘つきだ。イヤ、それを言うなら、カトーは稀代の詐欺師だな」

「私は、カトーは稀代の扇動者だと思う」

「やっぱり、カトーは癒しの魔法使いだ」

「カトーは、賢者級の魔導士と思っていたが、これでは」

 目の前で知り合いが意見を述べているようだ。人には様々な見解と見識がある。異論は認める。第一王子セシリオ殿下の部屋に、副官のシーロとエミリーに僕達4人だ。誰がどう言ったのかは、個人の名誉の為、秘匿とする。

(誰のせいで、こんな事になったかという上述の会話です。体のせいか、少年化が進んでしまいましたが、中身は27才の普通の日本人です)


「この後、すぐに転送ステーション113を探しに行きます」

「まだ見つかってませんよね。それでこの計画を実行するのですか?」

「ハイ、なにか問題でも? 殿下よろしいですよね?」

「アァ、やるだけやってみよう。半分の成功だとしても、かなりの事が出来ると思うからな」


まだまだ、会議は続く(おどる)事になった。

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