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癒やされたいキャンパー。異世界を癒やしに行く。  作者: カトー
第7章 ゴーレムとドラゴン
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転移ステーション113稼働命令

 第一王子セシリオ殿下の部屋に、副官のシーロが飛び込むような勢いで入って来た。

「殿下、北城門第一看視所から緊急連絡です!」

「どうした。シーロ、そんなに慌てて」

「ハイ、カトー男爵とエミリー中尉が」

「落ち着け。水でも飲んで、ホラ」

「ありがとうございます」

「男爵達が北門に着いて、王城に向かっているとの知らせが入りました。たった今です」


「エ!」

「閣下でも、驚くじゃないですか。普段、すましているのに」

「シーロ。バカ言って無いで、直ぐに連れて来い」


「カトー男爵、エミリー中尉。殿下がお待ちです、こちらへどうぞ」

「セシリオ殿下、お久しぶりです。帰ってきました。殿下の命を受けて3の月18日に帝国要塞へ出発いたしましたから、もう四十日になりますか」

「そんなになるか。ウン元気そうに見えるが、その様子なら上手くいったようだな」

「ハイ、思っていたのとは少し違いますがおおむね成功だったと思います」


「セシリオ殿下、ただ今カトー男爵、エミリー中尉戻りました。謹んで報告いたします」

「エミリー君、そんなに固くならないでいいぞ。カトー男爵の様に楽にしたまえ」

「殿下!」

「冗談だ、よく戻った。ご苦労だったな」

「殿下、早速ですが。例の話を」

「そうだな、では報告された事についてだが良く分からない所が有るんだ」


「アァ、おそらく転送システム、ホムンクルス、アーティファクト、ドラゴンの事ですね。それに、帝国要塞司令官の対応なんでしょうけど」

「今回は、影から2回連絡があった。もちろん、魔獣の偵察とケドニアの雰囲気はどうだったかも後で聞く。それより前回の、要塞からの長文の報告を詳しく説明してくれ。」

「やっぱり、そうなるのですね。確かに、ややこやしいですもね。では、順序立ててお話します」


「まず、帝国の要塞に魔石は無事渡しました。後ほど、要塞司令官名で感謝状と帝国政府、帝王の連名の礼状が来ると思います。で、リミニ、ステファノの現状と魔物に関する状況報告は、影さんに報告したとおりです。これはエミリーが、文書にして提出する予定ですが、偵察報告では言えなかった事があります」

「うん、何だね」

「残念ですが、帝国はこのままだと負けます。数の力に負けてしまいます。というのも、戦いではどんなに優れた資質の兵でも疲れますし、食べますし、寝ます。必ず、休息が必要とされます」

「それで? 魔獣に負けると言うのかね?」

「話に聞く、上陸したての頃の魔獣が相手なら、熟練の帝国兵なら1人で1匹・2匹、余裕で倒せたでしょう。3匹、腕の立つ兵なら4匹でも可能かもしれません。ですが、10匹が同時に襲ってきたら? 20匹だったとしたら? さらに、魔獣は種類を増やして大型化しています。兵士とて人間に変わりありません。メストレで起こった事であり、リミニで今から起る事はこれなのです。これから、帝国で起こる事は、数の暴力と言う恐ろしい事なのです」

「そうか。勝てないか……残念だ」


 ※ ※ ※ ※ ※


「ですが、残念な事ばかりではありませんでした。思いがけない幸運もありました。転送システムです」

「帝国要塞の、転送システム? そんなものが有るのか!」

「実際には無かったので、一芝居して作って来ました」

「ウーン……」

「閣下、大丈夫ですか? 落ち着ついて。水でも飲まれては? さあ」

「ありがとう、シーロ。で、どうやって」

「実は、報告したように偶然なんですけど要塞地下でホムンクルス達と遭遇したんです。そのホムンクルス達の代表者と話す事が出来ました」

「要塞の地下にいたのか? しかし本当に居たとは。それならば、地下にいたホムンクルスの事は、ケドニア側は知っているのではないか?」

「はい、代表者一人だけだと思っていますけど」

「ウーン……」


「転送システムは、稼働できます。古代アレキ文明のホムンクルスは友好的でした。彼? 彼女? どちらにせよ。そのお蔭なのですが、王都ロンダ近くのアレキ文明時代に有ったと言う転送ステーション113の場所を教えてもらいました。動かし方も教えてもらったので、探し出せれば王都と要塞間を転送できると思います。転送システムが構築できれば王国からの援軍も、長い月日をかけて行軍をしなくても済みます。ですので、その捜索許可をお願いします」

「ウーン……そうか、転送が可能とならば、随分と助かるな。よろしい捜索許可をだそう」

「ハイ。先ほど、一芝居したと言うのは訳があるんです。驚かないで下さい。実は、稼働中のホムンクルスは、87人いるんです。それで、質問があるんですが要塞の地下だと、やっぱりケドニアになるんですよね。」

「87人もか。で、何が問題なのだ」

「ホムンクルス達の帰属問題なんです」

「そうなのか?シーロ」

「今はなんとも、ホムンクルスですか。ケドニアには存在を知られて無い訳ですし。600年前には、ケドニア帝国ではありませんでした。移動する事のできるホムンクルスです。据え付けられた装置でも無いので、まぁ状況次第で白とも黒にもなるでしょうけどグレーと言う所でしょう」


「そうじゃないかと思っていました。それでしたら、念の為ですが全員の亡命許可をお願いします。亡命後、市民権? 王国ではどう言うのか分かりませんが、自由に生きられる権利みたいなものです。彼らの代表は、統合官と言うんですけど。統合官は、自由に生きられるなら転送システムを直し、王都近くのエーと転送ステーション113の場所も教えるからと言っていたんです」

「それで、転送できるという事になったのか。確かに転送システムは魅力的だ。多少の融通はすべきだろう」


「これって、殿下の仰ったとおり、王都と要塞間を転送出来るなら、かなりお得だと思って承諾したんです。幸い、影さんからの連絡で、僕には自由裁量権が与えられたと、教えてもらったので決めちゃいました」

「確かに、裁量権を与えたな」

「ハイ、それで殿下にお願いなんですが、転送ステーション113が発見できれば、その稼働許可を頂く事です。殿下も同じ事をお考えと思いますが、イリア王国軍の行軍先を変更していただき、遠征軍を転送陣によって、ケドニア要塞近くに送れるようにして戴きたいのです」

「ウン、そうだな。考慮しよう。しかし、どのぐらいの能力なのだ。その転送システムとは? 軍団が使用出来る程なのか?」

「ハイ、転送は一度に1500人と装備品が転送可能との事です。ですから、およそですが150トン~200トンが一瞬にして移動出来る訳です。教わった僕たちが、操作や設定変更を簡単に出来るようにする為、最初の設定は一方通行の片道転送になるそうです。もちろん、遠征後は反転してケドニアから帰れます」

「なるほどなぁ。納得できますね。殿下」


「転送システムはそのようにするとして、ホムンクルス達はどうする?」

「その事なんですが、僕の拝領した領地にホムンクルス達を移動させて、保護して良いとの許可を下さい」

「貴族は、確かに人々を保護する立場ではあるな」

「カトー殿の領地は、確か村どころか人一人すまない所でしたね」

「エエ、でもそれは良いんです。統合官に聞くと、ホムンクルス達は自由が欲しいそうで。なにしろ、600年も地下に閉じ込められていたそうですから。それに、水や食べ物を必要としませんから、何も無い場所で良いんです。さすがに、雨露をしのげる家は土魔法で作りますけどね」


「交換条件と言う訳だな。ならば許可しよう。それから」

「続いて、アーティファクトとドラゴンの事なるんですが、その前に追加の報告が一つあります。影さんに連絡した後なんですけど。要塞の騎士の間で、戦闘用ゴーレムと言う兵器を12台、正確には11台ですけど。見つけました」

「ウ。今、何と言った」

「カトー卿。ゴーレムを見つけたと言うのは、ケドニアの軍事機密なのでは?」

「イエ、ケドニアはゴーレムの事、知りませんでしたよ。発見したのは僕ですもの」

「カトー男爵、それは軍事機密事項になります。11台ものゴーレムなんですよ。もし、ケドニアに情報が知られたら大変な事になります」

「シーロ、ちょっと黙ってくれ。で、知られたのか?」


「はい、知られたと言うより、話したと言うか。結果、1台ですけど、もらえる事になりました」

「カトー男爵!11台のゴーレムですよ」

「今、動けるのは貰った1台だけです。で、もらえる事になったので今言った、戦闘用ゴーレムを下さい。重すぎるので持ってこられませんでしたが、ケドニア側の許可は取れてます。要塞の中に有ったもんで、向こうの許可も必要だったんです」

「戦闘用ゴーレムを、譲渡してもらったのか?」

「はい、貰うまではただの彫像だったので」

「また、訳の分からん事を。ウーン……しかし持って来てないなら、問題は先送りにするか。次は? ドラゴンだったか?」


「イエ、アーティファクトです。ホムンクルス達から得た情報では龍の巣に、対魔獣用の兵器が昔あったそうです。調べて来たのですけど何もありませんでした。量産用図面が残っているかどうかわかりませんが、土魔法で作ったと思われるドームの様な山や、巨大な土のボールが所々に有るだけでした」

「そんな兵器が、有ったのか。では、何かわかったら教えてくれ。で、ドラゴンなのか」


「ハイ、龍の巣でドラゴンを見つけました? ドラゴンに見つかりました? どっちだと思う、エミリー」

「そんな事、どっちでも。続き、続き!」

「はい、ドラゴンを飼っても良い許可を下さい。連れてきているんです。一応、ペットになると思いますが、少し大きいので」

「なんなん? なんだとー、連れて来てる? ドラゴンをかー!」

「殿下、落ち着きましょう。私も興奮してますが。カトー男爵、そうやって返事をハイハイと明るく答えておられるが、みな大問題なのですぞ!」

「ウーン。……カトー男爵、ドラゴンは大きいのか?」

「エェ、そうですね。体長は70メートルぐらいかな。ミレアと名付けました。名称が長かったもんで、確か、高々度迎撃タイプ大型ドラゴン第四世代って聞いてます」


「ウー、頭が痛くなる話ばかりだな。シーロ、ちゃんとメモして覚えておけよ」

「まだ、話は半分もしていません」

「まだ、ややこやしいのか続くのか?」


「しばし待て、ちょっと休息しよう。身が持たん。シーロ、メモは取ったな」

「……、実は最後の方が少し聞き取り難くて」

「そうか、……じゃ、最初の方を考えようか」

「……、実は最初の方が少し聞き取り難くて」

「あぁ、もういい。」

「カトー男爵、ご覧の通りだ。ドラゴンの話が出て来ては無理も無い。私も、いささか目まいがする。悪いが文書にして提出してくれ」

「エー。僕、喋ったら忘れる方なので」

「しょうがない、エミリー君。頼む」

「私が、ですかー?」

「そうだ」

「ご命令とあらば、必ず口を割らせます。カトー、さっきゴーレムの処、さらって流したつもりだろうが、そうはいかん。きっちりきりきり返答させてやる。いざ、覚悟」

「エミリー。それ、返事の仕方。違うから。許してー」

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