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癒やされたいキャンパー。異世界を癒やしに行く。  作者: カトー
第7章 ゴーレムとドラゴン
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騎士の間。そして、ロンダへの帰還

「閣下、お時間を頂きまして有難う御座います。お話ししたい事があります。エーと、実は騎士の間の騎士達、動くんです」

「ン? おっしゃる意味が分かりませんが? 何が動くと?」

「騎士の間の彫像達と言うのは信じがたいでしょうが、あれは、アレキ文明の戦闘型のMS-●6FとMS-●6Sという巨大ゴーレムなんです」

「エー! そうなんですか? しかし、信頼できるカトー殿が言われる事を疑うと言うのも。……それで、お願いと言うのは」

「単刀直入に言います。ゴーレムを動かすのは、とりあえず1台。上手く行ったら下さい。6Sを」

「エー! 驚きましたな。彫像と言えど、帝国の備品ですよ。それも彫像ではなく戦闘用ゴーレムと分かっていて仰るのですか?」

「何とまあ、公使。何を言われるかと思えば」


「閣下、戦闘用ゴーレムを稼働できれば、かなりのアップは間違いありませんぞ」

「マルタン大佐、それはそうだが。で、今なぜこの話を私たちに? もし、ゴーレムが戦えるとしたら、帝国としても戦力の強化はありがたいのですが」

「あれは、特殊なコアが必要なのが分かっているんです。悪く取らないで下さい。動かせるとしても1台。おそらくですが、私だけだと思います」

「エー。そうなんですか。それは残念ですなー。やはり魔法の力が必要なのですか?」

「そうです。失礼を承知で言いますが、ゴーレムは特殊な魔法を併用して動かすのです。私の言葉に偽りが無いという検証の為に、帝国におられる魔法使いの方を集めて確かめていただければ」

「分かりました。率直に言って大変驚いています。また、ご相談して頂きまして有難うございます。大佐、直ちに魔法大隊に連絡。集められるだけの、魔法使いを招集しなさい」


 ※ ※ ※ ※ ※


「大丈夫だよ。エミリー、特殊なコアというか、中にホムンクルスが入ってないもん」

「それもそうだな」

「ピクリとも動かないよ」


「オイ、緊急招集ってなんだ? お前ら知っているか?」

「お前、まだ騎士の間に行って無いのか。なら、怒られない内に行くんだな。急ぐんだぞ」

「そいでもって、あの騎士の間の彫像。どれでも良いから動かしてこい」

「お前は●●か?」

「そこ、伏せ字にしなくても分かるぞ。でもな、それを司令官と大佐の前で言ってみな」


 ※ ※ ※ ※ ※


「全く、ピクリとも動きませんでしたな」

「大佐、もう良いだろう。役にも立たぬ、ただの彫像と思っていた物だからな」

「私もゴーレム魔法には、あまり詳しいと言えないのです。マァ、一部のイリアの魔法使いの常識程度、ごく一般的な事しか知らないのですよ」

「そういいながら、カトー男爵。ゴーレムの足を撫でているのは何故ですか? 本当は、かなりお好きなのでは?」


「バレましたか。白状するとかなり好きなんですよ。エェ。マ、ここだけの話。ヒト型の、大型ゴーレムは、一部の魔法使い達の夢なのですよ」

「ホー、なるほどね」

「ラザール司令官。そこに立っている彫像。戦闘用強化装甲の一つ目のヒト型ゴーレムMS-●6Sは、誰にでも動かせるものではありません。素人が、マニュアル片手で操作などできません。RXー78ー●に並び立つ、高度なゴーレム魔法の傑作なのです」

「カトー卿の夢なんですか。それならば、マルタン大佐。君も、リミニの負傷兵の話は聞いたろ。ただの彫像が、対魔獣戦の役に立つかもしれん。エエ、良いですとも。差し上げましょう」

「閣下が良いと仰るなら、自分とて文句はありません。確かに、今まで彫像と思っていましたし。でも、カトー男爵。よろしいのか、彫像を動かすにはかなりの魔力消費になるのでは? 巨大なゴーレムなんですよ」

「ゴーレムが大きいのは承知しております。ですがやれると思います。ゴーレム魔法の術式がいささか複雑なのですが、上手く行けば2日でやれると思いますよ。もちろん夜中も入れてですが、かなり集中して術式を組み上げます。その為、騎士の間では人払いをお願いする事になりますが」


「了解いたしました。では、騎士の間と言っても今は、食料のストックが山積みの倉庫みたいなもんですが、動かしておきましょう」

「お願いいたします」

「カトー男爵。そんな、頭を上げて下さい。分かりました。で、他にご入り用な物はありますか?」

「ハイ。そこで、大佐。ゴーレムは整備用架柱に支持されているのですが」

「彫像の後ろの柱の事ですな」

「ハイ、足場をお願いしたいんです。何しろ17・5メートルの高さですからね。整備用リフトも必要です。状態保存魔法がかかっているようなので点検、潤滑油の交換、装備の交換などは最低限で済むはずです。何より必要なのは、大型ゴーレム整備には欠かせない、リフトアップ用機器なんです。あれば非常に助かるんです」

「そ、そうですか。もちろん、早急に何とかします」

「後、一つ。赤いペンキを、ですね。あればで、いいです。エー希望という事で。ハイ」


「カトー男爵。色々とお聞きしましたが随分とお詳しいですね。ゴーレムの身長までご存じだったんですね」

「17・5メートルですね。エェ、私なんか素人同然、全然詳しくないですよ。イリア王国の一部の好き者、特に30をすぎた魔法使い達にとっては常識みたいなものなんですよ」

「これだけ語られて詳しくないとは。さすが、魔法大国ですな。失礼しました」

(エミリー、ゴメン。マルタン大佐が勝手に誤解しただけだから。痛いって。ちょっとだけ大げさだったけど、お願いだから剣先でツクツンしないで)


 ※ ※ ※ ※ ※


「カトー。では、プランBとやらの出番だな」

 そうエミリーに言われて、ヴォメロの塔で掘り出された転送システムは、慎重に25キロ離れた要塞近くの練兵場まで5日かけて運ばれて来るそうだ。

 その間に練兵場の敷地を全て借り受けて、土魔法で壁と屋根のある倉庫風の巨大な建物を作っておいた。言葉で言うと大変そうだが、慣れた土魔法で半日もかからないという簡単作成。魔法さまさまである。


 床の当たる地面は、そのままにしたので屋根の強度だけ考えれば、かなり大きな物が出来る。雨避けと言うので納得の理屈だ。ただ、明かり採りの窓が無いがこれは、最近覚えたライトの魔法で解決。

 起動調整は、神経を使うという事で、元々は外部の目を遮断する物だ。中に入るのホムンクルス達の、動きが知られなければ良い。転送魔方陣は調整後なら、オープンエアでも良いとの事だ。なんなら管理室以外の建物の撤去も可能だそうだ。


 輜重部隊が5日かけて持って来た転送機の部品はマルタン大佐に搬入を頼んでおく。僕とエミリーは、その間に龍の巣の調査に向かう訳だ。昔、あったと言うアーティファクトの対魔獣用の兵器か、量産用図面を探すつもりだと。


 戻って来て、建物を閉鎖すればいい。後は、搬入された第三級転送ステーション74部品で、密かにホムンクルス達が組み立てくれる。壊れていた部品は、ホムンクルス達が何とかしてくれるそうだし、管制室の地下にもこっそり空間を作って、ホムンクルス達の予備管制室と待機所とするつもりだ。


 帝国の魔法使い達には怪しまれない様に、別途、特別サービスとして見学日を決めておけば、疑われる事も無いだろうと思う。統合官によると、イリア王国とケドニア要塞を結ぶ転送陣を作るには、部品が再組立され試験運用に持ち込めるまでには15から20日はかかるだろうとの事だ。


 帝国歴391年5の月4日

「ホムンクルス用の、魔石エネルギーステーションを造ろう。いやね。いつまでも、要塞に居る訳にはいかないし、ここも魔石エネルギーが足らないんじゃないと思ったんだ。ネ、エミリー」

「そうだな、カトー。確かに十分とはみえないな」

「ホムンクルスは、みんな外部出力できるの?」

「サービスユニットは、標準でついていますが。他はあったり無かったりバラバラですが、どちらかというと無い方が多いですね?」

「セバスチャンとエマはOKと。2人は、魔石が無くとも暫くは動けると言っていたけど、もちろん魔石・小が有ればいいんだけどそんなに持ってないし、そこでちょっと考えたんだ」


「カトー様、それは一体どのような?」

「セバスチャンとエマは、113で機器の移動の時に、魔石エネルギーを外部出力で供給出来たそうだからね」

「それを使う訳ですね。カトー様の発想は、まさに天才的ですな」

「もっと誉めて」

「整備運用主任、分かるのか? カトー様、いったいどのような方法で」

「イヤ、それでも良いんだけど、一歩進めてね。一度にたくさんのホムンクルス達に魔石エネルギーを入れられると思うんだ」


「今のところ、魔石・中のはあまり使ってないので余裕があるんだ。魔石を利用してホムンクルスの外部出力を使えば良いと思うんだけど」

「整備運用主任、可能性はどうだ」

「十分、可能性があると思います」

「魔石・小は無いのではないか」

「それなんですが、この前、魔法係ちがうか、○○バカが再充填できる方法を、研究とか出来たとかブツブツ言っていたのを聞いたんです」

「それは、私が頼んでおいたものだ。ひょっとして出来たのか?」

「それは何とも。呼びましょうか? ○○バカの保管庫主任」

「私もこの間、言ってしまったが本人の前で言うなよ」


「ウーン。魔石を真中にして組み立てていくと、この装置は見る人が見ればボーグの基地みたいだね。金属フレームの枠に収まったホムンクルスが、じっと立ち並んでこちらを見ているとか。しかし一度に、エネルギー供給しようとするとこうなるしなー」

「本当に、分かっているのか? 保管庫主任」

「統合官。何を、失敬な。もちろん、魔石への再充填はカトー様が居られれば可能です。最初の、変換時だけですから1・2分もかかりませんよ」

「魔石は、どうするのだ?」

「統合官。我々、上級管理ユニットは機能停止中の下位管理ユニットから、既に魔石・小を3回交換している者がほとんどですぞ。もちろん、捨てないで持っています」

「保管庫主任、でかした」

「ありがとうございます。統合官、ホントは……」

「皆まで言うな。保管庫主任、これでお前の事を○○バカという者もいなくなるだろう。良かったな」

「エーン、統合官。エーン」


「エミリー、ここまでの仕掛けは、まあまあ順調だね。それと、整備運用主任が、こっそりと教えてくれたけど、保管庫主任はそんな、やわい玉じゃないって。あれ、涙もろい統合官用だって」

「ホムンクルス達は仲が良いんだな。それと、カトー。ボーグってなに?」


 ※ ※ ※ ※ ※


 帝国歴391年5の月5日

 再び要塞を離れ、空飛ぶ絨毯で第二世代の巣で待たせていたドラゴンの下へ移動する。ケドニア側には、ドラゴン発見は少し後まで秘密にしておく事になるが、すぐに要塞に戻るには都合が悪い。


 高々度迎撃タイプ大型ドラゴン第四世代改めドラゴンのミレアは、亜音速でイリア王国の遺跡都市メリダ近郊を目指す。龍の巣から約4000キロ、5時間のコースである。結界魔法で、与圧されたキャビンに居る感じだそうだ。

「カトー。空飛ぶ絨毯は背中に積んで良いんだよな。しかし、絨毯にしろドラゴンにしろ、空を飛ぶと、時間のかかる地上の道は使えなくなるな」

「エミリー。転送だと、瞬きしない内だよ」

「そうだな、何か理不尽だな」

「そうだよ、これで亜空間魔法のストレージがあったらチート一直線だよ」

「カトー、チートって何? たまに、おかしなこと言うね」


「では、巡航速度を落として、高度も下げ始める。よいな?」

「エミリー、あれ別荘? 見えた! やっぱり上から見ると、良く分かるよ。地図魔法って意外と正確だね。更新速度も凄いし」

「うそ。見えたみたいだな。こんなに早くスイザの村か。1時間前に、王都を遠くに見たけど。本当に、日帰りできるとは」

「ここから先は、気にしたことも無かったので良く分からん。メリダでなくて良いのか?」

「メリダは今度にするよ。エミリーが倒れていたのがあそこらへん。だから、もう少し西だ。ミレアそろそろだよ」

「良いのか。すまんのう」

「良いんだよ、誰でも苦手は有るさ。もう少しだと、思うんだけど。遺跡都市メリダの手前だよ」


「そうか。ミレアは、遺跡都市メリダが苦手なのか」

 遺跡都市メリダはまだ防御結界が残っている。それは、極めて弱くウサギ程度でしか効かない。能力が落ち続けて、やがて効力が無くなるまでに時間がかかる。そして結界魔法の終了間際には、ドラゴンにとっては極めて不愉快な音? 電波? 波長が出ているそうだ。ミレアが近くを飛ぶだけで都市に入ってこなかった理由がこれだと言う。

「最近だがな、ここ50年ぐらい中に降りておらん。定期巡回コースAパターンで飛んでいるので少し遠くで見て、変わった事が無ければ、北のレオン山脈に有る住まいに帰る事にしておる」

次の目的地を伝えた時、ミレアが少し嫌な顔をしたので聞いてみたのだ。ドラゴンの嫌な顔と言うのが、どんなのかとは説明しにくいが。


「カトー、あれかな?」

小高い丘の上で一キロ程ずれていたが道のあとだな。木もある。レンガか何かの道路施設跡みたいだったが。

「ビンゴ。休憩所だ、有った」

荷物台が造られている。

「あの近くに、見つけた宝玉を入れたビニール袋が隠してあるんだ。宝の地図は、スマホに移したから……これか」


「カトー、自分の字で書いた字が分かんらのだろ」

「分かる?」

「分からいでか! 字の意味じゃないぞ、その態度がだ。いいか、よーく考えろ。確か、日本語のひらがなといったかな、思い出すんだぞ。私は、お昼の用意をする」

「ウーン、ちょっと待って。キジ撃ちに行ってくるは、今では使わないか、地雷ではわからんな。ここはやはり、トイレを作るか」

「何をブツブツと。いつもの土魔法を使えば良いだろう。発動までの時間がまた短くなったな……。それにしても……家は、いらんだろ。こんな大きな家は」

「セットで、覚えていたもんで。つい。休息所も新しい方が良いだろうし」


「主、あった」

「オー、見つけたか。よしよし。さすがミレア。抜群の感度だね」

(ウン、が良かった。ここ掘れ、ワンワンだな。いかん、扱いがペットに近づいているな。ドラゴンだぞ)


「カトー、疲れたよ。本当に日帰りだったんだな。人に言っても信じてくれないだろうなー」

王都へ、ドラゴンで飛行中。黄昏かけたエミリーがつぶやいた。


「間もなく当龍は王都ロンダ、北の森に着陸いたします。ロンダの気温は適温、天候は曇り、現地時間午後4時にて着陸予定です。ドラゴン航空のご利用、誠にありがとうございました。乗務員一同、またのご利用をお待ちしております」

「また、訳の分からん事を」

「主は、ヒョウキンじゃの。今のスピーチ、ワシは気に入ったぞ。では、用が済んだら呼ぶのだぞ。2・300キロ北。ビルバオ街道近くにおるからな。あそこの深い森には狩りの獲物が豊富での。それと、主が好きそうな文がある。後で渡しておこう。暇な時にでも読むがいい。ワシの住まいに有った物だ」

「あぁ、ありがとう。ミレア。荷物と絨毯は、この間の所に隠せばいいか。また、呼ぶから。しばらく、のんびりしていて」

「オウ、しばしの別れじゃ」

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