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癒やされたいキャンパー。異世界を癒やしに行く。  作者: カトー
第7章 ゴーレムとドラゴン
66/201

第四世代ドラゴンと会う

 帝国歴391年5の月1日

「イヤ凄い物ですなー。何かこう。血わき、肉おどるような。興奮してきました」

「そうでしょ。これが人型大型ゴーレムの醍醐味なんですよ。知っていると言っても、資料だけですからね。見るのは初めてですけど」

「恥ずかしいですが、なんかロマンを感じますー」

2体の、上級ユニットは興奮気味だった。実際、マニアたちが話し始めると、ついていけないと感じるのは日本ばかりではない様だな。


「本日、入室禁止」の立て札が、騎士の間入り口に建てられている。

2体で500キロだよな。エミリーと1体ずつ運ぶしかないか? 整備用台車は借りて来てあるし、騎士の間は立ち入りゴメン状態だから気にしなくても良いけど。魔石で、エレベーターが動いて良かったよ。大型トランクを台車に積みながら思った。

「君たちは、僕のOKが出たらすぐ出て来ていいよ」


「いよいよ、乗れるんですね。MS-●6FとMS-●6S」

「イヤ、どちらかだよ。僕としては、6Sが良いんだけど。乗ったら最後、周りの目が有るから2・3か月出れないかも知れないよ。イヤ、半年だってあり得る。連絡だって、このアーティファクト頼りだよ」


「エエ、よろこんで。我々は、食料はもちろん水もいりませんし。熱源も必要ありません。中にいるだけで、主任たちに自慢さえ出来ますからね。何なら1年でもかまいませんよ」

6Fは11機、6Sは1機。見分け方は簡単だ。6Sは頭部のアンテナ? にあたる装置がでっかくて太いのですぐに分かった。しかし、半分溶けていたのは6Fだったが、いったい溶けるほどの何が起こったのだろう? 考えない方が良い様な気はするのだが。


 決意の固いホムンクルス達とは、ドラゴンに乗ったら思念波を送れるらしいけど。搭乗員が、使える無線機なんてない。志願者は、整備運用係の助手をしていたホムンクルスとドラゴン係の助手の二人組みだった。主任(親方)達も、もちろん志願したが、統合官が要塞下部の運用に欠かせないとして断固拒否していた。整備運用係とドラゴン係の主任は、三日三晩泣いて過ごしたそうだと助手達が言っていた。


「ゴーレム魔法の術式が複雑ですがなんとか2日で、やれると思いますよ。もちろん夜中も入れてですが、かなり集中する事になるので人払いをお願いする事になりますが」

 深夜。搭乗員となった二体のホムンクルスは、トランクに入れられて運ばれていく。前もって、マルタン大佐には人払いの理由を言っておいたので楽だったが、今回の事でホムンクルスが、あんなに喜ぶ感情が有るのを見て意思ある生命体に近づいているかもしれないと思えてきた。六百年と言う時間は人口生命体が意識を持つ事を可能にするのだろうか?


 ゴーレムの稼働チェックで半日、武器の運用確認で半日。初日に機器不良の場合はチェックして翌朝までにリスト化しておく。搬入取り付けで半日、これは、状態保存魔法がしてあるから最小限で済むはず。調整に半日はかかるだろう。ギリギリ、2日で済むかな? 後は本当に缶詰だよ。覚悟してとは言っておいたが。


 助手の二人は炎の斧、否定派だった。訳の分からん事にこだわるのは立派なオタクである。僕に言わせれば両方持てば解決すると思うんだけど、そうもいかないと言うのが美学なんだろうなー。

「あんなの飾りです!偉い人にはそれがわからんのですよ!」

ドラゴン係と整備運用係の親方たちと、意見の違う助手二人のセリフだった。

「副兵装の武器と言われますが一発必中の魔力弾発射機ですよ。接近戦にも使えるし、一発ずつ遠距離射撃できるスナイパー仕様こそ至高です。まぁ、格好は魔法使いの杖に似てなくもないですが。狙撃の照準が甘いのは、腕を上げられない者のセリフですね」


「分かった。良く分かったから。二人とも、静かにして早い事乗ってくれ」

「カトー、まだかー?」

「ほらー、見張りのエミリーが怒り出す前に乗れよ」

「この背中のハッチ、ギリギリ。ホムンクルス泣きそう」

「前だと、乗り込むとこ見られるのに。背中ではなー」

「オー、ついに乗れた」

「起動チェックは二人で。リストは作って来たよな。機器不良のチェックは翌朝までしか時間を取っていない。だから搬入取り付け出来るように早目になー」

「カトー様、言葉使いが雑になってますー」

「眠いんだよ。主任たちのゴーレムに乗れないと言う愚痴を聞いていて徹夜なんだよ」


「座席の下に起動用マニュアルがあるはずだ」

「先ず起動する前に各カメラを付けないと」

「オー、ついに動くぞ~」

「斧と杖はランドセルに架けられるようになっているぞ」

補助席に座った僕は、稼働試験をする二人を見ている

「カトー様、そこらへん。むやみに触らないで。気を付けていただかないと」


「良し、行けるな。明日の昼過ぎには、お披露目するぞ」

「カトー様。だから、あー触った。こんな倉庫の様な密閉空間で。ワー、斧の刃が赤くなってきましたー!」

「ウンウン。半分溶けた奴が一つ有ったのは、これが理由かもしれんなー」

「呑気に言って無いで、直ぐに魔力を止めて下さい!」


 ※ ※ ※ ※ ※


 帝国歴391年5の月2日

「あのゴーレム、勝手と言おうか自動で動いているんですか? いま前転・バック転・側転してましたよ。後方一回ひねりなんて。あんな事して、戦闘に役に立つんですか?」

「もちろんですよ、マルタン大佐。習熟訓練と言うやつです。あちこち点検しないとね。この練兵場が、使えて良かったですよ。なにしろ600年経ってましたからね。ホラ、見てて下さい」


「もう一度、前転・バック転・側転やりますよ。 L1ボタンの方向固定、またはR1ボタンのロック中に左スティックと×ボタンを押すと前転・バック転・側転を行います。前転・バック転・側転のモーション中に□ボタンを押すと、それぞれ回転しながら斧の斬撃を出すんですよ」


「いいですか? セレクトボタンの方向キー押している間フロアマップを拡大表示。L1ボタンを装備している場合は蹴るですけど、L2ボタンスキップ方向キーの上下と組み合わせて斜め方向に固定になるんですよねー。R2ボタンでスピードUPするのであれば、まあまあですねぇ。コントローラ操作は中々奥が深いので、あれは自立支援回路なんです。だから、僕が居なくても命令しておけばやってくれるんですよ」


「何か良く分かりませんが、ゴーレム魔法というのは凄い物ですな」

「はい、司令官。ゴーレム魔法というのは、本当に奥が深いんです」

「しかしこれで、龍の巣の探索に出かけても安心です」


「そうそう。部下の女性たちが魔石のお礼をしたいと言って、黒の制服を持ってきておりました。後でお渡ししますので貰ってやって下さい。帝国では、魔法使いのシンボルカラーですからな。中々良さそうですぞ。先ほど見た処では、エリと袖の金刺繍が凝ってましたな。肩章はいささか私のより大きかったようですよ。 でもまぁ、アリですな」

「有難うございます。音楽隊の式も感激しましたけど、それはそれで有難い事ですね」


 ※ ※ ※ ※ ※


 帝国要塞経由で、ドラゴンが居るという帝国の中央西山脈に向かっている。空飛ぶ絨毯の、高度を上げれば西にエルベ川の流れが辛うじて見える。この辺りの西山脈はかなり険しく、風向きのせいかエルベ川の霧が、朝方に良く流れてくるそうだ。

 エルベ川と山の間は帯状の平野になっており、その中央には、帝国の南部と北部を結ぶ重要な街道がある。この街道のどこかで、帝国の魔法使い達が北の兵を、南からは避難民をと、道を整備の為にエンヤコラと土魔法を奮っているのだろう。


 ホムンクルスの言葉が思い出される。暫く前から、駆逐タイプ中型ドラゴン第二世代が2頭減っている。寿命かも知れないそうだ。ドラゴンは魔石の効力が切れると、体が自然分解する。

(これは、魔獣も同じ様だと教えてくれたが、確立した研究結果ではないとの事だ)


 中央大陸西の、第二世代ドラゴン1頭は失われたが、北にいたという帝国中央西山脈に住む一頭については不確かだそうだ。ここがホムンクルスの言う龍の巣かもしれない。残された過去データーの、転送ステーションの位置と一致する。おそらく、巣と言うのは山間部の転送ステーションの事だと思うが、確かな事は行って見なければ分からないだろう。そこには、何か手掛かりがあるはずと北へ向かう。要塞からおよそ330キロ、空飛ぶ絨毯なら1日、8時間ほどで行けるだろう。


 嘗ては転送ステーションだと思われたドラゴンの巣の場所は、山々に囲まれた一種の桃源郷だった。山や急峻な崖の為、人間は寄り付く事はまず出来ないだろう。たとえ近づけたとしても、地上からでは発見する事は出来ないと思う。空を飛ぶドラゴンだからこそ、巣に出来たのだろう。


ホムンクルスによって知らされた情報は、場所だけでは無い。

「アーティファクトです。龍の巣には、対魔獣用の兵器が昔あったそうです。実物か図面か分かりませんが、量産用だとか」

 対魔獣兵器の量産ね。それが本当なら実物でなくとも図面があるだけでも役に立つ。作れる物なら作りたいものだ。近づいてみれば巣は、500メートルほどの円状の盆地だった。聞いていた通り、ここなら山に囲まれているので冬の寒さも、高い場所にある事で夏の暑さも凌ぎ易いだろう。


 真ん中に近くに着陸して周りを見回した。それらしい建物も無く、有るのはおそらく土魔法で作ったと思われるドームの様な山や、巨大な土のボールが所々に有るだけだ。しばらく探してみたが、兵器も図面もそれらしい物は見つからなかった。昔、あったとしても、とっくにどこかに運ばれたのだろう。


 僕たちは、ここで一晩キャンプする事にした。駆逐タイプ中型ドラゴン第二世代は子供の様な心を持ったドラゴンだなと思った。そして、少なくなって行くドラゴンの事を。その晩、夢を見た。正夢と言うのだろうか? ドラゴンと会う夢を。


「エミリー。僕、寝てるよね」

「寝てると思うぞ。まったく、何を言うやら」

「イヤ、横になって寝ているんじゃなく。眠っているんだよね」

「モー何を、ごちゃごちゃと」

「でも、夢じゃないとすると、エミリーあれ何だー?」

と言って、テントの入り口ファスナーを上げて外を見る様に言う。

「ちょっとおい、あれって!」

「シー。エミリー、声が大きいと思うよ」


 でっかいドラゴンが待機中という感じで、テントの前10メートルの所に翼を畳んで身じろぎもせずにいる。その時、目を半眼にしていたのを開けて口を開いた。頭の中に直接、声が響いてくる。

「ン、主。目覚めたか?」

「ハイ?」


 五の月になったとしても、昼中は暖かく過ごせそうだが山地の朝方はまだ冷える。

「ウー。寒いね」

「主、寒いのか? ならば」

口を開け、奥の方から何やら真っ赤な物が吹き上がってくるような?

「タンマ! ドラゴンブレスは、要らないから!」


人間と話すのは、随分と久しぶりだそうだ。

「人間は、もろいの! アッと言う間に燃えちゃうの」

「主。怒るな、ワシとてウッカリする事も有る」

「エミリー、このドラゴン変わってるー」

「そうだな。人懐こいようで、ちょっとウッカリさんか?」


「で、何でここにいるの?」

「イヤ、ワシは呼ばれたので来たのだぞ?」


「第二世代のドラゴンじゃったが、もう半年ぐらい前か? この巣から居なくなったんだが。それまではたまに会って、近況や出来事を話していたのだ。南に行くと言っていたが、未だに帰ってこん」

「フーン、デートか?」

「ちがうわい。もう同族とて、片手で数えれるほどじゃ。気にもするわい」

「そうかー。ごめん」


「エミリー。このドラゴン悪もんじゃ無さそうだよ。何で、話さないの?」

「カトー! そんな事、決まっておるではないか。伝説のドラゴン様だぞ。直答など、恐れ多い」

「エミリーとやら、そんなに畏まらなくても良い。気に入らなくとも、火など吹かん」

ドラゴンは、気にするタイプらしい。


「昨日も、来たのは良いが。マ、帰っていないだろうとは思っていたのだ。しかし、近くに来たら、主が呼ぶのでな」

(そう言えば、要塞のドラゴン係のホムンクルスが何か言っていたような?)

「2~300キロなら、思念波が届きますので来ますよ。いたら、向こうが見つけてくれますよ」

はっきり、思い出した。


「まぁ、近づけば、同期が復活して命令できますよ」

もう、一つ思い出した。

「ごめん、僕だわ」


「ドラゴンの名前か?」

「うん、いくら何でも、第四世代はかわいそうだ。1000年単位の寿命らしいから、ミレニアムで ミレアでどう?」

「ウン、良いかも」

「ワシも気に入った。これで、名前持ちじゃ。善きかな、善きかな」


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