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癒やされたいキャンパー。異世界を癒やしに行く。  作者: カトー
第7章 ゴーレムとドラゴン
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ロンダの店の様子とMS-●6Sゴーレム

「みなさん、今日も頑張って行きましょう」

王都ロンダの、新しい名所「美味しいケーキの店」は今日も順調に店開きした。正確に言うと、押すな! 押すな! と言う声が出るほどの繁盛である。今では警備員となった冒険者たちが、汗だくで整理をすると言う何時ものでオープンである。

「タティアナ店長。今日の分、整理券終了でーす」

「またー。もー、ティールームのお客様だけでこれなんだから。いつもの様に、警備のエミグディオさん達よろしくねー」

「ここで、作るだけではもう無理かなー」

「そうですよ。もう、工場生産するべきですよ」

こうして、いつもの会話が繰りかえされ一日が始まるのだ。


「こんにちは、エマさん。いつも大変ですなー」

「これは、クラウディオさん。いらっしゃいませ。随分とごきげんの様ですね」

「イヤ、このように繁盛しているとは。もう王都の名所になっていますぞ。王都名物は数あれど、ここが一番だと。ケーキの虜になったと言う者ばかりですよ」

「ケーキですか?」

「行列も有名ですけどね。私も、この様な繁盛店にお力添えが出来て嬉しい限りですな。そうそう、サンスさんも喜んでいましたよ」

「ありがとうございます。そのお言葉、嬉しいですわ。皆にも励みになります」

「イヤ、本当の事を言ったまでですよ」

「お口の美味いクラウディオさんですね。で、今日はどのようなご用件なのでしょう?」

「あぁ、失礼。そのサンスがですね」

「失礼しました。私としたことが、申し訳ありません。気が付きませんで、どうぞ中の方へ」


「お邪魔します。セバスチャンさん、お久しぶりです」

「これはクラウディオ様、ようこそお出で下さいました。エマ、お茶をお願いします」

「セバスチャンさんもお見えとは丁度良かった。実は、サンスさんから連絡がありましてね」

「お待たせいたしました。どうぞ、冷たい紅茶です」


「フー、これは良いですな。生き返ります。で、話と言うのはカトー様が以前、お申しつけなられた、甜菜とかいう植物の捜索ですが」

「では、見つかったのですか?」

「ハイ、そうです。それで、サンスさんが直ちに現地に向かうとの事でしたので、私がお知らせに伺った次第です。何しろ、麦芽糖の再来に成るかもしれませんからな。慌てました」

「貴重な甘味ですからね。何しろ砂糖が、生産可能になるかもしれませんからね」

「そうですとも。巨万の富どころか、もはや巨億の富ですよ」


「よろしければ、こちらもどうぞ。新作の半生クッキーです。食感がしっとりして、美味しいと評判です」

「オォ、すいませんなー。紅茶のお替わりもお願い出来ますか? これも美味しそうですな。フー。それにしても、カトー様達は、ハアー、何処へ行かれたのでしょうなー。何時お帰りなるのでしょうなー?」

「その事でしたら、お出かけになる前におしゃってました。今は言えないが自分とてイリア王国の貴族の一人。青い血の義務、人々の為であると」

「それはそれは、ご立派ですなー」


 私が思うに、カトー様は昔からの知り合いには、事情を話たそうだった。だが、王国からの依頼である。大急ぎで魔石をケドニアに届ける途中ですなんて言える訳がない。それに話をするにしても誰は良い、誰はダメだと分類するのも拙いだろう。お帰りになられたら謝らなければと思う。必ずお戻りになると仰っておられたが、5年~6年分の運転資金だとポンと40億エキュの譲渡証を渡された時は驚いた。


 ありがたい事に、自分達を信頼なされて留守をご命じになられたのだ。結局、わたしもエマも、輸送の事を誰にも言いたくても言えない状態だった。翌朝、大急ぎで出発された事もある。店を一カ月も留守にするような大事な任務が、国から与えられたと告げるのが精いっぱいだった。


 留守番とは言え、タティアナさん達を始め私とエマの合計で十六人の運命を預かる身となっている。エマは、お店とタウンハウスの事で忙しくしているので、警備の男女性六人は、私が時間を作って稽古をつけている。私も段々と忙しくなってきた。お店も大所帯だが、任された以上は精一杯やるしかないだろう。こんな私に、皆さんが信頼を寄せてくれる。有り難い事だ。


 私とエマは、カトー様からお預かりした十億エキュを、運用して少しでもお役に立つべきだと判断した。経営するなどとはおこがましいが、幸い初期プログラムの中には経営学や経済学の初歩の情報と自立思考と演算機能がある。最初はカトー様が、良いと仰っていた麦芽糖に投資したのはやはり当たりだった。製造方法の特許料も、月々入ってくるようになったのは嬉しい誤算だった。


 麦芽糖の投資をしてから、両替商のクラウディオはサンスと一緒に時々訪ねてくる。今回は、カトー様の御命じになった甜菜を発見したそうだ。お預かりした十億エキュは、五から六倍しかならなかった。今ではお菓子工場の建設に使って、残りは三十億エキュになってしまっている。今投資しても四十から五十億くらいしか儲け出せないだろう。もっとしっかりせねば。


 ※ ※ ※ ※ ※


「あぁ、早く帰りたい」

「どうした、カトー」

「領地の別荘で、昼寝とまでは言わないが、せめてロンダに帰ってケーキを食べたい」

「いい加減諦めろ。イリア王国の男爵ともなれば、それ相応の気概を持たんか!」

(エミリーは、かなり厳しい副官だよ。働け働けとねー。エミリーを護衛兼監督にしたんじゃないか? まったく殿下の人を見る目もしっかりしたもんだ)


「それで、これからどう働くんだ? イヤ、動くんだ?」

「ウン、その事だけど帝国側は何とかなりそうだけど。王国側、それもセシリオ殿下だね」

「殿下に、不義理が有っては申し訳ないからな」

「とりあえず、影さんを見つけて連絡を入れようかな」


「エバントの時は、向こうが見つけてくれたが、ここはケドニアの要塞の中なんだぞ」

「そこなんだけど、腕輪が、使えないかと思ってね」

「効力は三十分だ。第一、通話距離の制限もあるんだぞ」

「ウン、だからリミニに行く前。こないだの式典の時、人がいっぱい集まってくれたろ。その時、押しておいたんだ。影さんもいるんじゃないかと思ってね」

「カトー、賢いな。とでも言うと思ったか、そんなの上手く行くはずがないだろ」


「トントン」

ドアがノックされて、封筒がドアの隙間から入れられた。


「エミリー。なんか、お手紙来たよ」

「フーン。なんて、書いてあるのだ」

「今度の食事が終わったら、腕輪をサービスワゴンの保温器に入れておいて下さい。魔力を、補充してお返ししますって」

「ウーン。ありがたいが、何か理不尽な気持ちがする」


「カトー様、お久しぶりです。さすがに帝国南部までは、お供が叶いませんでしたけど如何でしたか?」

「エーと、影さんですね。イエイエ、腕輪有難うございます。ホッとしました」

「式典、華やかでしたね。たくさん見ましたが、外国の公使では中々の規模ですよ」

「はぁ、そうなんでね。エーとでは、順を追ってお話します。いいですか?」


「……、エ? 何です? それって? ハーイ? どうしてそうなるんです?」

という事で二十七・八分話した。時間がかかったのは、ケドニア側の転送システム云々が、影さんの理解の他だったからだ。結局、噛んで含めて説明したので、少しは分かってもらったと思うけど。

(マ、肝心な所は伏せたので、よけい分かりづらかったかもしれないな。それに続いて転送システムだろ。ホムンクルス、アーティファクト、ドラゴンだもんなー。ホント、報告書を送る立場じゃなくて良かったよ)


「エミリー。通じたと思う?」

「ウン。まぁ、良いんじゃないか? 腕輪、また魔力の補充に出さないとな」


 ※ ※ ※ ※ ※


第一王子セシリオ殿下と副官のシーロとの会話

「シーロ。これが、分かるか?」

「おや、珍しいですね。閣下」


「ウーン。影は、普通こんなに長文を送っては来ないですよ。と言っても正規の暗号文ですし。これは本物なんでしょうね」

「やはりな。で、中身だ」

「転送システム、ホムンクルス、アーティファクト、ドラゴンですからね。それに帝国、この場合は要塞司令官なんでしょうけど。カトー男爵も大概ですな。殿下の立場で無くて良かったと思います」

「シーロ!」

「ハハ、失礼。意見聴取の為に、カトー男爵に早急に戻ってもらいますか?」

「イヤ、もう少しで偵察も帝国の状況も調べ終わると思う。今少し、待つ事にしよう」

「ハイ、仰せのままに」


 ※ ※ ※ ※ ※


 ケドニア要塞の第一階層には、巨大な正面入り口に続く部屋が有る。嘗て、騎士の間と呼ばれた部屋には12基の彫像が魔法の力なのだろうか? 六百年を経ても、未だに黒く鈍い光を返しながら佇んでいる。


 ホムンクルスの整備運用主任(親方)は、上級ユニットだが頑固そうな感じを除けば、ごく普通の気の良いおじさんに見える。僕が、騎士の間の話をするまではそう思っていたんだ。その時のエミリーとの会話を話した後の事なんだけど……。

「エミリー。ここにある、彫像達って動きそうだね」

「あぁ、私もそう思う。斧と魔法使いの杖みたいなのを持ってるな」

「でもって、ヒート・ホ●クとビー●ライフルに似ているな。なんてね」


「マルタン大佐。これは、動きませんよね」

「彫像ですからな。動かないのは当たり前でしょう。何百年も動かず経っているそうです。しかしカトー殿の水魔法を見た後では、動かないとは言い切れませんなあー」


「まさか?」

「冗談ですよ。要塞が再発見される前から、こうだったそうですよ」

「カトー、触るなよ、絶対に触るなよ」

「ウン、分かってる。数は、12体あるね」

「良いか。今日中に、要塞全部の貯水槽に水を入れるのだぞ? 次に行くぞ。マルタン大佐、お先にどうぞ」

「ごめん。今、行くってば」

「もー、カトーおいてくぞ」

今となっては、要塞に着いた頃の懐かしい会話だった。


「要塞を案内してもらっていた時なんだけど、騎士の間と言うのがあってね。凄い迫力だったんだよ」

「まて。今、何と言った?」

「凄い迫力だったんだよ」

「違う、騎士とか」

「騎士の間だよ。彫像が12体、上半分溶けて無くなったのが一体かな? 正確には11体と、壊れたのが1体あったと思うよ」

「そこ、詳しく話してくれ」


「オー! やっぱり、まだあったんだ!」

「何が?」

「MS-●6型ゴーレムに決まっているじゃないか!」

 見た感じでは機体自体は、状態保存の魔法が掛けられているのだろう。非常に良い状態と思われる。しかし、整備用架柱は? 足場は何処? 整備用リフトが無いじゃないか! 点検、潤滑油の交換、装備の交換など大型ゴーレム整備には欠かせないリフトアップさせる機器が見当たらなかった。

(カトーは首をしめられ、肩を揺すられる尋問を整備運用係から受けて口を割った。その位の、迫力だったんだよ。きちっと全部、思い出すまで許してくれなかったんだよ)


 ゴーレムは、17・5メートルあり、起動させるには中に乗り込まなければならないらしい。戦闘管制員と操縦員の2名が搭乗できる。その座席後部には、荷物置き場兼、補助席が1つ。緊急時等には3名が乗れると言う仕様だ。

 整備用架柱が、1個分隊分の12本ある。戦闘用強化装甲された大型ゴーレムは、搭乗員がいなくても独立して運用できる思考演算能力を持つが、戦闘用ホムンクルスが搭乗して合体し操作させる事により、圧倒的な戦闘力と思考演算能力を手に入れる。


「第四世代ドラゴン用の強化装備としても使えるんです。この機種のゴーレムはドラゴンに騎乗させて飛ばすよう設計されていて真のドラゴンライダーと呼ばれていたんです。MS-●6Fは戦闘用強化装甲で、MS-●6Sは指揮官用です。ファンの間ではドラゴンライダーと呼ばれ親しまれています。大きさは17・5メートルで、第四世代のドラゴンが70メートルですからね。絵づらも、良いですよ」

「ファンと言っても、何処の誰かは分かりそうな気がするんだけど」

「それはともかく、部隊間通信網と言うのは生命線ですからね。指揮官用は、その分僅かですが戦闘力が落ちています」

「フーン」

「6Sは、基本6Fタイプと同じですが通信機の機能を上げています。ドラゴン経由でなくとも、1500キロ前後の通信が可能で20機の6Fが指揮できます」

「分隊規模なんだね」

「拠点破壊用に、魔石・小(火属性タイプ)を入れた無誘導の魔力弾を撃てます。これ、ちょいとしたクレーターが出来るそうです。攻撃可能範囲20キロ園と、聞いた事があります。装弾数3発の、発射機を使えばかなり遠距離まで届きます」

「破壊力が半端ないな。逃げる時間も考えないと」


「重魔獣ですと、展開位置が離れていると思いますので、主兵装の炎の斧の方が良いでしょう。炎の斧の刃の部分に魔力を通して、スパッといきます。きれいな赤い刃に、見えるそうですよ」

「イイですなー。ぜひ、見てみたいものです」

「魔力を通さない場合はサーベル猪・サーベル虎のサーベルと同じ威力だそうで魔獣集団程度には、そうですね大型魔獣にまでは効きます。でも、5~6匹でしょう」


「副兵装の武器には、遠距離でも直線状に敵を狙える1500発を内蔵した魔力弾発射機があります。魔法使いの杖に似た奴です。これは接近戦にも使えまして、レバー操作で簡単に散弾状に広げられます。もちろん、1発ずつでも行けます。狼の魔獣なら、やれるでしょうが照準が甘いのでね。3点射機能でも、ちょっと狙うのに苦労すると思います。ポッドは腰に装着され、炎の斧を携行したまま使用できます」

「やはり、練度を上げないとね。素人じゃ、1発必中と言う訳にはいかないでしょう」


「ランドセルに、予備燃料タンクと予備ポットをドラゴンに搭載しておけばいいですし、補助推進器で長ジャンプが可能です。エェ、20秒ほどなら飛べます。ランドセルの、左右両側面に1基ずつ固定します」


「レーザー兵器ではありませんが、炎の斧を標準装備したのは俊跋ですな」

「私、好きですなー。これ、決まった! になりますよー」


途中、何時の間にか話に入って来たドラゴン係の主任が、整備運用係の主任と手を取っての熱く語りあっていたのが印象に残っている。


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