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癒やされたいキャンパー。異世界を癒やしに行く。  作者: カトー
第6章 要塞の秘密
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地下のホムンクルス

 帝国歴391年4の月7日 

 そしてその夜、僕たちは再び地下に降りて行った。7、8、9の3日間、時間をやりくりして地下に通った。その答えが出るかも知れない。


「申し訳ありませんが、隠し事をお願いする事になります。私たちホムンクルスはもちろん、この要塞下部の秘密は誰にも知らせないで下さい」

「秘密にしろってこと」

「そうです、あくまでお願いに成りますが。秘密を保持していただき、誰にも話さない様に。理由は、御気付きと思いますが?」

「そうかも知れない。薄々、感じていたんだ」

「やはり、現在のケドニア帝国に私たちホムンクルスの科学技術・魔法知識を広めるのは、些か早いのではないかと思います」

「エミリーは、どうしたら良いと思う」

「カトーには言いにくいが、イリア王国に仕える身では言わずもがなだろう」

「それは、秘密にしておけという事だね。なら、僕も同じだよ。行き過ぎた技術格差は、良くない結果をもたらすに違いない。極端な破壊とか行き過ぎた武力。戦争とかに繋がるかも知れないね?」

「そうなれば、イリアとて相手に成らないだろう。おそらくエバント王国の様に傀儡政権を作られて、植民地支配にどころか奴隷支配を強要されるかも知れない」

「そうだね。ウン。やっぱ、内緒にしておこう」


「ご理解いただけたようで、嬉しく思います。カトー様が来られた通路は後程、破壊して通行できないようにしておきます」

「エー」

「ご心配なく。魔石を補充して頂けましたので、転送ネートワークの再稼働が可能かも知れません。修理が出来るならば、転送ステーション113とも繋がります」

「そうなんだ」

「ネットワークのステーションは、実に多くが破壊されました。予想では、修理可能な物を含めても半数以下、悪ければ二割ほどでしょう。113は、状態保存の魔法も掛けられており非常に幸運でした」


「600年たっても動くんだ」

「エエ、113は途中まで起動シーケンスが行われていますよ。こちらの計算では魔石さえ補充すれば、早ければ15日ぐらいで全機能を回復します」

「機能って、転送だよね?」

「ハイ、こちらにも魔石が必要ですが転送可能になるでしょう」

「それって転移も出来るという事?」

「イヤ、転移は無理です。ただ、カトー様が転移して来たメリダなら、可能性が有るかもしれませんが」

「ホー、良いこと聞いた」

「メリダの上級管理ユニットが200日程前に報告してきましたが、転移時のデーターが残されている筈ですから」

「上級管理ユニット? 遺跡都市のメリダに?」

「残念ながら、今は連絡できません。報告の最後に機能停止を言ってきました」

「そうですか。でも行けば何とか成るかもしれないし。やってみる価値は有ると思う」

「そうだとも、カトー。良かったな、帰れるかもしれないぞ。諦めず、確実に進めて行けば道は開ける」

「ウン、エミリー。ありがとう」

本当に帰れるだろうか? 自分は本当に帰っても良いのだろうか? その時、ちらっとだけ思った。


 ※ ※ ※ ※ ※


「その時には、セバスチャンとエマと言いましたか? が上手くやってくれるでしょう。転送ステーション113を起動させて後、安全チェックをして20日もしない中に、通常業務が出来るようになります」

「転送できるという事だよね」

「ハイ、そうです。今は機能するのが二か所ですが、魔石さえ補充すれば数が増えて行くでしょう。先ほど申した通り、修理可能なステーションも有る筈です」


「そうそう、私どもには警備ユニットの上位機種が保管されております。後ほど、整備運用係の所に行きましょう。そうです、セバスチャンタイプです。取り敢えず状態保存の魔法が掛けてあるのにしますね。ちょっと大げさですが、上位機種の戦闘タイプの7台をお渡しして身辺の警護に付かせましょう」

「大げさ?」

「この要塞の、1階層にまだあると思いますが、大型のゴーレムを操作出来る機種なんです」


「それも良いんですが、エマタイプは、居ないのですか?」

「テロリスト達の攻撃が考えられたので、戦闘・警備強化用に優先して生産されたのでエバタイプは数が少ないのです。エバタイプが有るとしたら、各ステーションに配置されていた者になるでしょう」

「7台か? 思い浮かんだのは七●の侍、だね。でも、紅毛碧眼でないとこの世界は難しいかな。だったらシルベス●ースター●ーンの映画に有った傭兵団の外人さん達かな? 赤毛でも金髪でも良いか、男だし。あまり男性の容姿を考えるのも否だし。男性タイプなら何でも良いか」

「カトー、言葉に成っているぞ。マ、私は恰好良ければどちらでも良いが」

「エミリーさん、願望が出てますよ」


整備運用係は、いかにも頑固なメカニックオヤジと言う感じのホムンクルスだった。

「ハイ。では、認証コードはOKです。続いて使用者パターンの注入をしてください。ハイ、お疲れ様です。これで2日後には警備ユニットとして機能します。ですが、外皮の細胞が形成ですが、データーを用意して在りませんが、今回はここまでにしておきますか。良いですよ。細胞形成用のたんぱく質など、ここにはありませんからね。ありていに言えば狩りで動物を獲った後ですね。食料を十二分に準備して下さい」

「そうなるんですね」

「ハイ、それからで構いませんのでご希望の体型と容姿を決めてから行う様にして下さい。詳しくはセバスチャン達でしたか? 彼らの中にサービスオプションとして入っています。読むなり、任せるなりして下さい。出来立て?作り立てですかね? マァ、、顔が7台一緒だと不都合が有るでしょうから」


 整備運用係は、上級ユニットだが頑固そうな感じを、除けばごく普通の気の良いおじさんだ。7台の、調整中には色んな事が聞けた。ここの、ホムンクルスが稼働しているのは、ひとえに統合官のおかげだそうだ。


「カトー様。元々、この巨大ホテルには各種サービスを行う為、3000台程のホムンクルスが働いていたんです」

「大きな施設ですものね」

「テロが起こり、緊急対策センターとして動き出すと500台のホムンクルスは上部で作業に当たっていました」

「それらは何処に?」

「分かりませんが既に600年前です。ホムンクルスの稼働限界をとうに過ぎています。残っている者はおりませんでしょう」

「残る2500台のホムンクルス達は下部に移動して、待機状態となっておりました」

「待機中なら動かせるという事ですか?」

「いざとなれば、かなりの戦闘力を持たせる事が出来るかもしれませんね。しかしこの稼働中のホムンクルスの整備などで部品取りをしておりますので若干ですが数が減りますね」


 隕石テロの10カ月後、やっとの事でホムンクルス達が地上の様子を伺うことが出来るようになった。しかし、既に要塞上部には人影も無く、指示を仰ぐ司令部も無かった。要塞下部にいた人間は、テロリストの攻撃で全滅しており、岩盤も破壊されて、地上に出る事を諦めざるを得なかった。

 統合官は、待機状態が長引くものと考え、2500台の魔石エネルギーの使用を停止した。まさか、人間との再接触が600年後とは、思わなかったそうだが。


 遺跡都市メリダの上級ユニットもそうだが、いかにホムンクルスといえども運用寿命が有る。通常、管理ユニットの交換はおよそ200年である。その3倍以上を永らえたのは下位管理ユニット2500台の魔石が有った事だ。

 メリダの場合は、整備運用係が居なかったか破壊されたのだろう。上級ユニットのホムンクルス達は運も良かったが魔石と良い整備、良い交換部品が有り、1000年の長きに渡って稼働できるたようだ。


 しかし、魔石の交換が繰り返されると個性と言うべき特色が現れてきたらしい。元が汎用魔力工作物で自己学習・自立作業可だ。魔力によって性格とも呼べるものが形成され、さらに特徴的な身体所の差が表れ始めたそうだ。


「統合官、終わりました」

「そうか、早かったな。カトー様、ご存知だと思いますが、セバスチャンとエマには外骨格として飛行ユニットが付けられます。魔石補充の目途が立って、時間さえ頂きましたらこのムンドゥス全域の探査をさせる事も出来ますが」

「それで2人1組にして、と言うのはどんな意味があるんです?」

「安全性と信頼性の事も有りますが、一番の理由は修理キットの部品数を多く一度に運ぶ為です。2人で運べれば、ほとんどの修理が可能ですからね。修理を済ませた所から転送網を拡げられます。何度も運ぶより、効率的と思われます」


「後で座標データーをお持ち下さい。とても小さいものですが、セバスチャンかエマに渡していただくと解析できます」

そう言って、整備運用係のホムンクルスは、小さな金属片? を渡してくれた。マァ、USBメモリかSDカードみたいなもんだろうな。


 序でに、魔石の再生ができるのかな? この間の、絨毯の魔石で気になっていた事を聞いてみたら。豊富な魔力が、有れば可能だが魔石を作った方が早いと結論付けられていた。ただ、六百年前と違って、魔石の生産がほぼできないのであれば、やってみても損はしないと言われた。

 

 統合官にも、再生途中の魔石を見せると非常に興味を持ったようだ。統合官は、魔法関係は彼が取りまとめをしているので保管庫主任を再度、尋ねるよう念押しされた。


 ※ ※ ※ ※ ※


「帰還者のカトー様は、既にお使いですが魔法の巻物が少しですけどストックしてありますので、いかがでしょう? 御使用に成られますか?」

「オー、チート来た! 失礼、興奮して思わず大声を上げてしまいました。それはどのような?」

「ハイ、認証コード登録前ですので、エミリー様も使えますけど? 如何いたしましょう」

「エミリー、もちろん使うよねー!」

「あぁ、すまないな。もちろん喜んで使わせてもらおう。これで、私もりっぱな魔女に成れる」

「そういえば、魔法が貧弱だと言っていた事も有ったね」

「そこまでは言った覚えは無いが、マ、今日の処は良いだろう」

「私たち、ホムンクルスは魔法が使えないので、宝の持ち腐れでしたから。ただ、魔力の不足は魔石で補う事になりますが?」

「ハイ、魔石には不自由してませんので。でも、エミリーの分がどうなるのかな? メリダの宝物庫の魔石と巻物は、僕で登録されているんですよね」

「エミリー様にはメリダに行ってもらう事になりますが、それは登録者の追加という事で良いと思いますよ」

「では、保管庫の方にどうぞ」


 ※ ※ ※ ※ ※


「保管庫主任いるか?」

「ハイ、こちらに。統合官」

「保管庫主任です。よろしくです。念の為、申し添えますが保管庫内では私の指示に従って下さい」

「本人を前にして言うのもなんですが、この者は少し熱心過ぎて○○バカと呼ばれています。なに、気性は良いですよ」

「統合官!」

「あぁ、すまん。お二人は大事な人だ。よろしくな」

「もちろんです。では、どうぞこちらに」


 このホムンクルスは、セバスチャンタイプと言うより某国産有名ゲームの商人トル●コにそっくりだった。トコトコと通路を歩いて10分ほど下の階層まで降りてきた。ここで今稼働しているのは、全て上級管理ユニットで区別するために役職で呼び合っているそうだ。統合司令ユニットは統合官と言う具合で、自分は保管庫主任あると言っていた。個体名や役職名が付くと個性も出てくるのかな?


「魔法の巻物が、ご希望と聞いております。ここに有る巻物ですが時期的には、テロ前の不穏な世相でしたので、攻撃系の魔法が多くなります。日常生活の役には、あまりと言うのが本当の所ですが」

「そうなんだ」


「着きました。この保管棚です。それでは、お二人に今お持ちの魔法名をお聞きします」

「わかりました、エーと。順番にして言うと、僕は1、翻訳の魔法。2、癒しの魔法(ヒールを含みます)3、火の魔法。4、土の魔法。5、水の魔法。6、風魔法。7、鑑定の魔法。が使えると思います」

「そうなんですか。結構な使い手ですな。エミリー様は?」

「私は、火魔法と風魔法が少し使えます」

「了解しました。ヒールは有りますが、癒しの魔法と言うのは聞いた事ありませんなあ。その魔法は、若返って気力体力抜群で怪我も治っているとの事でしたが」

「エエ、魔石・大だと大体ですが1年若くなるみたいですけど? ここには無いんですか?」

「すいません。無いですな。マ、今在庫があるのだけでも、やっちゃいましょ。運ぶのは、私がやります。なに下手に運ばれると、巻物が登録認証してしまうのですよ。私なら、魔法が使えないので関係ありませんからね」


「そうそう、お尋ねの魔石の再生ですが、実物の魔石をお持ちだとか。宜しければ、研究の為に暫くお預かりしても、いいでしょうか?」

「構いません。もちろん預けます。しかし随分と興味深そうですね」

「ハイ、それはもう。魔法は私のライフワーク研究なんですよ」

暫く、魔石に再補充された時の様子や条件などを細かく聞かれた。


「ところで、ここにはどんな魔法のストックがあるんですか?」

「有名どころでは、エート定番の火魔法ですね、もちろん水に風、土も有りますね。中には重力魔法なんて珍しいものが有りますが、そうそう、水魔法とはちょっと違いますが氷魔法が有りましたっけ。でも、氷の槍魔法という攻撃系の魔法だからなー。マァ、生活魔法で役に立つのはライトとクリーンぐらいになりますかね」

「フーン。ところで、収納魔法って有ります?」

「収納魔法ねー。聞いた事、無いですな。何なんです?」

「収納魔法・ストレージ・空間魔法。呼び名は色々なんですが、亜空間に無限にしまえて、経過時間もないという優れものの魔法なんですけど」

「何ですか? それ? 有ったとしても、亜空間を作るなんて膨大なエネルギーが必要なはずです。おそらく魔石の常時使用でもしない事には、とても亜空間を維持する事は無理ですよ」

「そうかー収納魔法は無いんですね。あぁー、もう良いです。重力魔法・氷・ライト・クリーンですか。それをお願いします。収納魔法、欲しかったんですけどね」

「そうですか、残念だったですね。他ので、我慢して下さい。ハハ、もっとも夏が暑いからと言って、氷の槍ばかり出す訳にはいかんでしょうけど。そこは工夫して下さい」

「イヤ、良いって事です。有るんだったら、その魔法を皆下さい」

おねだりするなら、今でしょー。と言っていたのには驚いた。やはり上級管理官の言う通り、かなり変わり者のホムンクルスだったらしい。


「この後は、管理官にドラゴン係にお連れするように言われています。どうします?」

「どうって? 行くんでしょ」

「あれも変わっていますからな。では、これにて失礼します。楽しい時間でした。またお越し下さい」

どうやら、ドラゴン係と言うのも一筋縄ではいかぬらしい。それにしても此処のホムンクルス達は本当に個性的なんだ。


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