表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
癒やされたいキャンパー。異世界を癒やしに行く。  作者: カトー
第3章 王都へ行こう
28/201

王都へお散歩

 イリア王国歴180年15の月5日

 王都ロンダへ行く途中に、エミリーから説明を受けた。

「隕石テロ後は、この大陸も群雄割拠する戦国時代だったそうだ」

「混乱期と言う奴だね」

「アァ、そう言えるな。イリア王国が、建国された地も例外では無い。城壁が再建された理由は、何時終わるとも知れない防衛の為だ。王国は180年以上前になるが、ケドニアから移って来たんだ」

「フーン」

「今でも、隣にはケドニア神聖帝国の属国エバント王国がある。北方には王国領とは成っているが独立機運の強い民たちがいる」

「そうなんだ」

「未開の部族だと言われている」

「未開ねー?」


「王都と言われるまでのロンダの歴史も結構古くてな、古代アレキ文明時代から城壁や水道施設も整備された都市だったようだ」

「歴史の有ると言うのは、そういう事なのか」

「そうなるな。人々は、あの600年前の隕石テロをなんとか乗り越えたが、多くの都市が破壊され崩れた。中には完全に、捨てられた都市もある事を思えば幸運かも知れない」

「メリダみたいにね。人々の記憶にさえ残らないなんて寂しいな」

「幸運だったと言えるが、王都ロンダも、結界魔法により辛うじて隕石の直撃は免れたといった所で被害が無かった訳では無い」

「そうだろうね」


「テロ以後、広域防御結界壁等、高度な魔法技術の大半が失われたそうだ」

「失われた技術か」

「テロ後、群雄割拠の時代を迎え支配階級も何度か入れ替わる」

「何となくわかるよ。それ人間同士の、生き残りをかけた戦いだね」

「600年の間に、城壁には再び城門が構えられ、堀が拡がり、跳ね橋なども作られた。都市機能が徐々に回復して行く」

「仕方なかったかもしれないが、戦争なんかしなければもっと早く回復したんじゃないかな」

「そうだな。そして、城壁と水道施設が優先して再整備されたという事だ」


「生き残った後でも問題は山積みだったという事だね」

「そうなるな。でもな王国では乱世が終わり、安定しても百年ほど城壁造りをやめなかったんだ。いつ戦乱の世に戻るかもしれないし、此処までやるとな、いわば伝統みたいになっていたんだ。領主である貴族達も見栄を張っていたしな」

「人間的と言えば人間的だよね」

「特に、城壁等の治安に関する設備はその地に暮らす人々の望みで有るし、他の脅威もない訳では無く残っていたのも事実だ。また当時は、まだ魔法使い達の魔力が強くてな土魔法による建設が可能だった事もある」

「それで、凄い破壊の後でもインフラの再構築が出来たんだね」

「確かにな。魔法により、費用と時間が少なくて済んだのは、何より召し抱えていた土魔法の魔法使いが、それなりに居たからだと言うのもある」


 現在のロンダの城壁には、一定間隔で望楼が設置され、内部の丘陵に城館が建てられ王宮が造られた。(お城の事です)周辺には家臣団が住み、耕地と、井戸もあり籠城に耐えられるようになっていた。

 第一(胸壁高さ4メートル幅1・5メートル)、第二城壁(外城壁高さ9メートル幅2メートル)で第三城壁(内城壁高さ17メートル幅3メートル)の城壁を持ち各城壁間は3キロ近くある。王都の直径は20キロにもなる。三重の城壁と深い掘が設けられ防備は厳重だ。


 王家がケドニアから移り住んできた当初、防御施設の建設過程では、木造の砦からスタートして石造りの城が出来て行ったらしい。住民の保護と防衛の拠点となり領主等の屋敷も整備される。だんだんと、時代が進み城は統治するシンボルになって行く。小高い丘には城が造られ、城壁と堀が築かれる。廻りを取り囲むように第二の城壁が貴族たちの私邸を囲む。

 城壁を境界として、見張り所から塔に替わり防備が強化される。順調と言えば順調だな。経済力の向上につれて、城壁の建築費も規模も大きくなり再建される距離も伸びて行く。内部には市場や商店等の商業施設が育っていく。


 商業が発展し第二城区内には、市民の家々・商家のある市街地が作られる。それまでには無かったレストランとホテル・高級娼館や衣料専門店が目を引いいたらしい。第一城区の貧民街と言われる場所にはおきまりの安酒場・宿屋・娼館が軒を連ねて旅人を待ち構えている。

 王都を含め、多くの都市では城壁の外側にも農地あり、家畜が放牧されていた。城壁で区切られているよう見えるが領主や役人の権限は城壁の外までちゃんと届いていた。その地に住む者も城壁の新設・維持・補修をし、今は無いが敵軍の襲撃に備え、場合によっては守備兵ともなった。西欧の中世都市の発展と似ていると様だ。


※ ※ ※ ※ ※


 王都近くの森に空飛ぶ絨毯を降ろし、木の枝葉でカモフラージュして北の直轄城郭指定都市ビルバオの町へ向かうビルバオ街道に出た。イリア王国では主要街道は、5メートル幅とされ馬車や荷車の通行を維持するように整備されている。間道では3メートル前後とまちまちだ。国境を超えると4メートルを超える事は無く、荷馬車一台が退避スペースを利用して通行できるのが限度だ。

 建設工事中に発見される大昔の古代文明のアレキ時代の道は、最盛期には歩道を含めて12メートル幅もあり、中央部には排水路が作られていた。

「エミリー、凄い道だね」

「デコボコの事を言っているならその通りだな。もうすぐ王都だ。おそらく昼前に着いて城門を潜る事が出来るだろう」

「空飛ぶ絨毯はチョット何だから少し手前で隠す事にするよ」

「確かにこんな物で乗り付けたら騒ぎになるな」

「それと、入城の時にエミリーは門番に顔を合わせないよう列に並ばないとね。僕は従者ではなく冒険者見習の様に見えるかな?」

「見えなくは無いが……」

「マァ良いや。門番には一人四百エキュの入城料を払うんだったね」

「その通りだ。今度はちゃんと小銭を出すんだぞ」


 エミリーは王都守備隊に居たので宿について聞いてみたが、兵士として王都に居た訳で宿はあまり詳しくはないようだ。それもそうだ、宿舎があるはずだからね。それに兵士や役人の使う宿では、顔見知りがいたりしたらなにかとまずいだろう。そこでシエテの町のヒバリの宿のエスタバンから聞いていた宿にした。

 西門から、第二の城壁に向かう途中のシロチドリの宿だ。両替商のナタナエルが教えてくれた、師匠筋と言うクラウデゥオの店が第二城壁の西門近くにあるそうなので都合も良いだろう。


 石造りの五階の建物の前で、千鳥なんだろうか白い鳥の絵の看板を見上げていた。思い出してみると、今までの宿屋の看板には鳥の名前と絵が描かれていたな。こんな処にも、現地の人にしか分から無い約束事が有るみたいだな。

「エミリー。シロチドリの宿って、ここみたいだよ」

「部屋が空いてるか聞いてこよう。冒険者が使うには、少し高そうだが良いだろう」

「あ、お風呂に湯船があるかちゃんと聞いてね」

「風呂はあるだろうがいつもの蒸し風呂だと思うぞ」

「やっぱり、高い宿にしかないのかな」

「そうだな。マ、泊まるのは、五日位で良いだろう。ここで泊まれるようなら、一息入れてから両替商のクラウデゥオを尋ねてみようか?」


 宿代は三階なら一泊一部屋朝食付きで四万エキュ、四階なら三万六千エキュだ。王都はやっぱり高いね。シエテの、倍近いし荷物も少ないので四階にしました。五日で二十万エキュにまけてもらった。ここも蒸し風呂だった。湯船に入って「極楽、極楽」とはいかないもんだ。王都にあると聞いた、公衆浴場に是非とも行かなければな。


 ※ ※ ※ ※ ※


 両替商のクラウデゥオの店は、立派な玄関があり両脇に警備員と思われるムキムキの冒険者が立っている。警備員の一人にドアを開けられて中に入いる。

 入った部屋は、頑丈な金属製の格子で2つに分けられている。ナタナエルが持たせてくれた紹介状を受付に渡すと、クラウデゥオが直ぐにも会ってくれることになった。金属製格子のドアを抜けて、商談用と思われる奥の部屋に通される。フワフワのクッションのいすに座り、高そうなテーブルにお茶とお菓子が置かれる。

 お茶を飲み終えたタイミングでクラウディオが入って来た。ナタナエルから聞いていた話では、宝石や魔石は時間が掛かるだろうが手数料次第で換金できるはずだ。


「初めてお目にかかります。加藤良太と申します。東方の姓名の為、習慣で名前がリョウタ、家名がカトウになります。皆さんリョウタと発音しにくいようなのでカトーとお呼びください。以後、お見知りおき下さい。こちらは、エミリア嬢です」

「両替商を営む、クラウディオ・アルモドバル・メリノです。こちらこそよろしくお願い致します」

(この大陸では、普通は名前+ミドルネーム(ない場合も多い)+父の苗字+母の苗字となっており、カトーの苗字+名前は確かに珍しいと言える) 


「シエテでは、ナタナエルがお世話になったようですな」

「イエ、イエ、こちらこそ」

「で、カトー様でよろしいですかな。紹介状によると、何でも非常に珍しい物をお持ちだとか」

「ハイ、こちらの魔石なんですが、両替が可能でしょうか?」

「魔石ですと! それは、それは」

 クラウディオに魔石の話だと伝える。重要な件での対応は予め指示されているのだろう。警備員が部屋の外に出て入口が施錠し、店員も警備に付くかのようにクラウディオの後ろに立つ。僕は魔石・小を1つ、机の上にゆっくり置いてクラウディオの顔を覗き込み、さらに2つの魔石・小を取り出し横に並べた。


「いつもなら、お時間を頂いて調べます。が、ここから拝見した処まず間違いないと思います。早速、鑑定させていただきます。もちろん念の為ですのでお気を悪くしないで下さい。何しろ魔石ですからな」

確かに偽物を掴まされたり、目利きが出来なかったりすると大変だろうね? クラウディオは魔石を持ちながら、弱いが鑑定魔法が使える事を教えてくれた。

「物が物だけに鑑定魔法を使いましたが、この事はご内聞に。いつもは鑑定士を呼んできますが、不都合な事もありますので」

(口止めはされたが、両替商で大店ともなると鑑定魔法は必要になるよね。まぁ公然の秘密かもしれないけど)

「長年この商売をやっておりますが、魔石を一度に3個もお持ちいただけるとは。いやはや、両替商冥利に尽きます」

吹き出す汗を拭いながら、こちらの条件を聞いてくる。


 両替の期限は、1つ目の魔石の買い取り分は手付が4分の1で直ぐに。4分の3が明日より2日以内に精算。残りの魔石2個は、委託販売で時期を見ながらだ。売れるのは、確実なので3カ月以内までにという破格の条件だ。と教える。大急ぎで市場から公証人が呼ばれて来て書類が作られた。気が変わらないうちにとでも思ったのだろう、書き終わると店の皆がほっとしているように見える。かなり美味しい取引なのかな? 


「クラウディオさんが良い値を付けてくれれば、このテーブルの上にさらに魔石が並ぶかもしれませんよ」

「なんですと! まだあるのですか?」

「さて? それはどうでしょう?」

「ウーン、左様ですか……分かりました。この様なお取引なら、いつでも大歓迎です」

クラウディオの頭の中には、売りつける先だろう聖秘蹟教会や貴族たちの顔が浮かんだのか愛想が崩れている。

「こちらこそよろしく」

「ありがとうございました。何かお役に立てる事があれば、なんなりとお申し付けください」


 商談も一段落し、再度お茶と甘い菓子が出てきた。エミリーが、タラゴナでの話をさも世間話のように装って言い出した。

「ところでクラウデゥオ殿、付かぬことを聞くがミテロ・マトス・ベラスコをご存知ですか?」

「存じております。タラゴナの町の領主、カミロ子爵・マトス・セディージョ様の父ミテロ・マトス・ベラスコ様の事ですか? 確か、ミテロ様はクリスティナ様の義理の従兄弟のはずですよ」

「そうなんですか」

「クリスティナ様は第三王子エドムンド様のお母上で、側室のクリスティナ・アマランタ・レイバ・ベラスケス妃の事ですな」

流石、王都の有名な両替商だけある。言い間違いが無いか、小さな革手帳を見ながらすぐに答えてくれた。

「何かありましたかな」

クラウディオは笑顔の中、きらりと眼光がエミリーを見返す。ここではエミリーの判断に任せる。

「実は、友人が困っていてな」

「ホ~ご友人ですか」

「そうだ、友人だ。力を貸してくれと」

その後、エミリーは仮の話としてタラゴナで起こった事を、場所と名前を変えて順に話し始めた。


「エミリア様、いやエミリー様お話はよく分かりました」

「うん、エミリアだぞ」

「もういいよ。エミリー、クラウディオさんはもう分っているよ」

「エ、ほんと!」

「ハイ、エミリー様は嘘を吐くのが上手くないですな。お話を聞くに、イバンさんに起きた事は私もおかしいと思っております。ナタナエルから送られてきた手紙にも、そのような事が書いてありましたし。今後の事もあります。このクラウディオもお力添えいたしましょう」


 クラウディオが両替し買い取った魔石・小1個の価値は色と形により変わるがおそらく10億エキュ以上だろうとの事。今回は切良く10億エキュ(2億5000万円)とした。クラウディオから受け取った魔石代金は手数料が1割の1億引いて9億。手付金でも2億2500万エキュで、王国金貨で1枚が二22万5000エキュなので1000枚の金貨が目の前に運ばれてくる。


「カトー、ミスリム硬貨で良かったんじゃないか?」

「でも、両替手数料が掛かるのは嫌なんだ」

「金貨だとまだまだ出て来るぞ。クラウディオさん、どの位になるんだ?」

「15キロの黄金は重いでしょうな」

「15キロかー」

「手数料を節約するなんて、気にしなくても良いぐらいあるのに」

「勿体ないと思うなんて性格が出てしまうな……」

そうこう話をしている間に金貨が机に積まれていく。

(どうやって持って行くんだ?)


「では、金貨1000枚です。どうぞ、お確かめ下さい」

「エミリーはその山、僕はこっちから数えるよ」

「でも、どうする?」

「どうする? って言っても、持って帰るんだよ」


 積まれて困ったのは、僕たちが最初では無かったらしい。両替商達は、こうゆう時の為に運搬用に金貨を運べるベストを持っている。大人用の服の前後に沢山のポケットを作り金貨の小袋を収納できるのだ。上にローブでも、羽織れば目立たず輸送できる。

 金入りベストはちょっとしたボディアーマーになってしまう。10キロ位は運べるそうだが、エミリーでも鎧とは勝手が違うのか長時間は体力的にきつそうだ。僕には無理なサイズなので、お腹の周りにベルト状に巻く帯タイプを渡される。これは小袋に三百枚の金貨を5つに入れて4~5キロを持ち運べる。本当は大人用であるが、何とか付ける事が出来る。

「お似合いですよ」

ベストとベルトは、初回限定サービスですとクラウディオにニコニコ顔で言われた。


 クラウディオに、王都にあるミテロの屋敷を教えてもらうが、城壁内の貴族の屋敷エリアには、許可証が必要で一般人は入れない。とりあえず、宿に帰り計画を立てる事にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ