魔法が使える
「魔法の時間だ」イヤ、覚えた魔法を確認してみようという事です。
今までの最低4つ、巻物を広げたので最大11個になる計算になる。魔法が使えるなんて思ってもいなかったが異世界だからね。
(主人公らしく? チートに近づいたと思いたい)
今の所、長々と詠唱(文句も知らないし)をしたり大声で唱えたり動作を必要も無く済んでいる。力任せと言うか力強く思い浮かべたりして魔法を発動している。本当に幸いな事に、厨二病の恐れは少ないと思う。いくら11才に見えても恥ずかしいものは恥ずかしいからね。
薄く色づいた魔石と色分けされた巻物。これらの色による違いが属性の違いなのか、どうなのかまだ良く分からない。今回はこの検証もしたい。エミリーも魔法については、常識に毛が生えたぐらいしか知らないらしい。だが自身が使える魔法については少し詳しい。火魔法と風魔法ね。他にも色んな種類の魔法があるそうだ。
僕はシンボルカラーと言うのか魔石の色属性と言うのは、色によって特定の魔力を効率よく魔法に変換するのではないのかなと思っている。ウェブ小説の受け売りだけど何となくそんな感じだ。魔石にはいろんな色が付いているが、色が薄いのもあれば濃いのもある。
赤色の火魔法、青色の水魔法、黄色の土魔法、ぐらいまではすんなりと理解できそうだ。緑色のは生活関連なのか、だとすると翻訳魔法か覚えているか分からない鑑定魔法あたりになるのかな? エミリーは聞いた事もない虹色が癒し・時空魔法ではないかと言っていたが? 偶然とは言え広げてしまった巻物だが、取り敢えず僕は複数の魔法を使えるようだ。(この場所で、使えるようだから使えるとしたい)
後、気になっていたのは巻物が何故か登録認証されていたようで僕しか使えない。じゃ、魔石は誰でも使えるかという問題が出てくる。エミリーが使えれば僕以外でもOKで使用可能だろうと思って渡してみた。その結果は魔法を唱えてもらったが魔石の効果が有ったようには発動しない。それでは僕が魔石にエミリーの物だと念じると威力? と言うかエネルギーと言うかそんな感じのが譲渡できるのかと思ったがこれも発動しない。
これで巻物と同じく魔石も登録認証されていると思った方がいいと結論した。だが、魔石エネルギーで動く物があるので人にはエネルギーを渡せなくとも、物にはエネルギーとして使える許可を出せるのではないかと思う。そうでないと魔道具とか魔石で動く装置とかが動かない事になるよね。これも追々分かるだろう。
1、確実なのは翻訳の魔法。エミリーの指導と経験でかなり話せるようになった。文字も読めるしね。ウェブ小説でも必ずと言って良いほど出てくる。これが無いと話が進まないからね。
2、癒しの魔法? 時空の魔法系かも? 若返ったんで、時間と空間をいじるのかと思ったんだ。依然話したように擦り傷や浅い切り傷ぐらいは何もしなくてもすぐ治るし。体調・気力が絶好調になる事もあってヒール系の癒やしの魔法かとも思えたけど。
でね、ヒールって何回も唱えていたんだけど、近寄って来たエミリーの擦り傷が見えたので、ウェブ小説にあったように細胞と皮膚とか思い出して唱えたら治ったので回復魔法もゲット。覚えたてだからなのか、使えるのは足の豆の治療程度。魔石が無いと魔力容量が足りないのかな? それならとだいぶ前から魔石・小を持って繰り返し実験しています。上手く行けば治療師として安定した生活が送れるからね。
3、火の魔法。エミリーも使っていた火の魔法、魔石を持ちながら使ったらブワーと炎が目の前に出て来たのでまゆげを焦がした。危なかった。料理に灯りにと役立っています。
4、土の魔法。廻りの土を使って壁なんかの塊を作れるの。圧縮できるみたいでテーブルとイスはこれでOK。今、マイブームの魔法。エミリーによると王国、帝国問わず人気の魔法との事。今では優先的に徴兵されるのではと言われるぐらい、軍に好かれる優れものの魔法。強大な土魔法によりアレキ文明では巨大建築物や長距離水道に舗装道路を造り上げている。インフラ整備用魔法と言える。
5、水の魔法。飲料水・お風呂・お手洗いなど大活躍です。まさに命の魔法と言って良い。旅人なら是非とも持っていたい。マァ、魔力次第なのだろうが50メートルプールはまだ無理、しかし練習を繰り返しているのでお風呂屋さんならやれそう。だんだん量が増えているので実力が上がっていると思う。
6、風魔法ですね。キャンプの時、火起こしに活用できるし焚き火の煙を自分の方にこさせ無いという利点がある。今では風呂上がりに最適な扇風機の強風を使えるようになった。ハンモックで昼寝をしても蚊等の虫が寄ってこれないという優れた魔法。日本に居た頃、キャンプで使えていたら本当に助かったと思うよ。これも訓練や魔石による強化バージョンがありそうです。
7、鑑定の魔法。シエテの町で気付いた。ほんの一部しか使えないみたいだ。よく考えると価値観によって金額が変動するだろうと思い当たる。かなり不安定で品物などの金額を意識すると日本円で幾らかが分かる時が有る。それがどうしたと言われると少し困る。
8、地味かもしれないけど地図の魔法だね。通ってきたり見たりしたところが地図に成る。アレキ文明時代の地形図が使える。地図としては使えるかもしれないが村や町、山や川の名前は現在と大幅に違っている。でも、マッピングできてツールを使えば生体反応を調べて索敵可能だったりするかも知れない。しかし、生体反応分かりませんでした。気配察知の魔法がいるのかな?
実に8個も覚えられた。重なっていたのは一つだけになるのかな? 色違いを選んだのが良かったのか、ラッキーだったと思う。未だに使いこなせないけどローブの結界もある。このローブはフードをかぶれば光学迷彩による透明化が出来ると言う優れものである。エミリーが着ても使えるという節操のない奴である。尚、使用時には体内魔力? が必要なのか長時間の仕様は無理である。
※ ※ ※ ※ ※
古代文明の人は巻物を拡げるだけでこんなに魔法が使えたなんてどんな世界だったんだろう。少ないと言われる体内魔力でも、かなりの事が出来るんだ。これがフルスペックの魔法の世界は、進んだ科学と同じかそれ以上だったんだなーと思う。巻物や魔石が金庫室に有ったのは、やはり当時も貴重な物だったんだろう。金、ミスリム、宝石、財宝が一部屋あったけど、お金以上の価値っていう事なんだろう。
「エミリー、今日は薪拾いをしなくていいと思うよ」
「何故だ?」
「僕の火の魔法は、薪で沸かすより早く沸かせるらしいんだ」
「だから何故なんだ」
「焚き火で風呂の水を沸かすのは、薪がいるよね。集めるのは意外と手間じゃない?」
「そうとも、でもお湯を作る為には集めないとな」
「今説明するよ。水魔法で集めた水の水温はだいたい気温並みになるみたい。ここまでは良いよね」
「ウン」
「焚き火は下からの対流でお湯になるけど、僕の火魔法では幕のように水を覆うので効率が非常に良い」
「それって」
「その通り。焚き火だと炎にあたるには1面、僕だと6面。湯船が立方体だからね」
「そうか!」
「かなり応用が利くよ。まず焚き火では場所探しと燃料の薪が必要な為、いつでもとお風呂が沸かせると言う訳にはいかないよね」
「オー! それって」
「火魔法なら床が土や石など延焼の可能性が無ければ、何処でもOKという事になるね」
「ウン、ウン」
「水魔法で水を操れるので浴槽も必要ない。場所を選ばずお風呂に入れるという事になる。それに馴れてきたので、足の指先までお湯を作れるようになったしね」
「カトー、でかした!」
「ちょっと気になるのは、蒸留水の様な水は無色透明なので足元までよく見えるという事ぐらいかな」
「マァ、それぐらいなら構わんぞ」
この方法で一番だと思ったのは、郊外だと椅子の様な岩? に座って使える事。足先まで浸かれるし、汚れない。半身浴も自由自在だ。岩場が平らなら、なお良い。お湯を平たく作って横になって寝られるという岩盤浴仕様も可能である。
馴れると言えば、魔法は使えば使うほど出来るようになって行くみたいだ。練習効果なのか、レベル上昇とかが有るのか分から無いが? 体内魔力量が増えたのか? 魔石・小を使わなくとも、温めのお風呂なら沸かせるようになった。
「エミリーも、すっかりお風呂が気に入ったみたいだね」
「最初は、3日に1回の入浴の予定だったけどな」
やっぱり気持ち良いのだろう、かなり気にったらしく今では毎日入るようになっている。
(ハイ、それは良いんです。僕もエミリーと一緒にお風呂入るのが好きですから。あー訂正します、僕もお風呂が好きですからにします。2人分位なら、水魔法だと魔力量も変わらないのか疲れもしない。まぁ、魔力量なんて測ったこともないし、僕の中にどのぐらい有るか無いかも分からないし。要検証だね。今はヒールも少ししかできないが、水魔法の様に回数を増やしたり訓練したりすれば使えるようになると思うんだが? どうだろう?)
そんなことを考えながら、いつものように水魔法で大きな塊を作りお湯を沸かす。熱い方が好きなエミリーは湯が冷めそうになると自分の火魔法で温めている。日本人だけなくこの世界の人もお風呂は気持ちいいそうです。
「やっぱ、お風呂は良い」
※ ※ ※ ※ ※
「良し、カトー、止めても良いぞ」
今までになかった、便利で役に立つ様々な魔法の使い方はエミリーのアドバイスによって更に進化中だ。代表的なのがお洗濯。エミリーにあれこれ言われて魔法を使っていたらヨーロッパ風の温水洗濯機ができた。服や装備品・靴も入れて温水で洗濯する。汚れは落ちるんだが、武具には部分的に革を使っているのが多いので結構気を使う。石鹸代わりの灰汁を、入れる時を間違えないのが綺麗に仕上げるポイントになるね。最後に薄く油を塗ってOK。
「1番2番は洗濯完了だ。3番は乾燥が足りないのぞ」
慣れてきたので、同時に3つの水塊を作り、温水、撹拌、脱水、乾燥とできる。でも、どこかのコマーシャルみたいに、お日様の匂いが好きなので洗濯物は日に干したいんだ。それに、まだ洗濯物を畳む事は出来ないが可能性は有ると思っている。
「たまに魔法の使い過ぎでヒーヒーなるが、これも訓練と思って頑張るよ」
「えらいぞ」
「ここら辺は、ウェブ小説情報通り魔力量が増えるかもしれないという前提で、訓練としてですね……」
「地面に落とすなよー。洗い直しになるぞ」
「これ、本当に訓練になるんですよね?」
翻訳の魔法。前にも言ったが一番役に立っている。人間にとってコミュニケーションは大切ですからね。有ると無いとは段違いだ。翻訳魔法は、私、加藤本人が具材・文物等の名称を自動的? 無意識? に日本名に当てはめております。本人がこれに一番近いと思うという事です。出来ない日本語への翻訳もそれなりに訳しているようだ。細かいことはいいんだよー。と思っています。ソースとしょう油ならまだしも、地雷原入るな! なんていうのを、翻訳し損なうと大変です。少し古い言葉だとしても、語句や意味まで翻訳するって最高です。
水の魔法。これも役に立っている。僕のは少し生活感が強いようですが飲料水・風呂・洗濯にお手洗いに必戴です。遺跡都市からの旅で、水が無いとどれだけ大変か分かりました。
応用しているのは日本の自慢、トイレの温水洗浄ですね。プライベート要件なので少しだけ。まず土魔法で壁を立てるんですが、和式洋式、今では両方作れますがちょっとした工夫が要ります。壁の分で掘った穴が出来るんです。和式の構造はわりと簡単ですね。お好みで使用してもらっています。誰がどれを好んでいるかは、プライベートなのでお答えできません。
最初の頃、洋式は便座の形が上手くいきませんでしたが、今は座る時にヒヤリとする事さえ我慢すればOKなレベルです。洗浄ノズルの水流は水魔法が出来ないと使えません。後はコントロールです。僕は火魔法による複合同時魔法も使えるので温水、送風、乾燥と日本規格で動作してます。移動時には埋め戻します。都市では家の床が石の所が多いそうですが、どうなるのでしょうか?
風魔法ですね。風呂上がりの扇風機として風力強で使えます。応用も効きます。虫よけもそうですが、キャンプの定番ともいえる燻製作りにも使っています。これ、薪拾いの時に桜の木に似た枝を見つけた時にはヤッターと思いましたね。今まで行った市場では牛肉は手に入らなかったのでビーフジャーキーは出来ませんが、豚・猪・鶏・兎・川魚・チーズ・卵等色々な物があったので様々な燻製を作りました。
同じ干物でも、水魔法でいっきに水分を除くとカチンコチンの鰹節みたいに成ってしまうんです。風魔法を使うとジューシーなのを味わえます。
酒場におつまみとして売り込むつもりですが、エミリーの消費が凄いのでストック出来ないのが残念ですね。ちゃんと作るのは時間もかかります。燻製の風味自体は十分程で付き、結構旨いので食事の時には追加の一品に成っています。でも町の中の宿屋では、乾しカゴを吊るすのにエミリーの槍を使うので少しご機嫌ななめです。
そうそう、桜の枝ですが鑑定魔法です。日本円の換算以外にも使えました。ただ、誰か一度教えてくれないと名称とか何かとは鑑定出来ないみたいです。最初、エミリーが教えてくれるまで分からなかったんですが教えてもらったら以後、小さな木切れが混じりあっていても分かるようになりました。木の名前も、杉や松、柘、柳、エミリーが知っている木の名称になるんです。教えてもらってない名称は出て来ませんね。ウェブ小説で読んだように、鑑定すれば丸分かりでは無いのでちょっと残念な気がしますね。
この中でも癒しの魔法? ヒールみたいな回復魔法かな、火魔法などと違って派手で無かったんですが意外と良いですね。浅い切り傷や擦り傷などもそうですが、この世界の服に替えた時、キャンプ時の靴もレデルセンのハイヒール気味のブーツに換えたんですが、足の豆が痛かったのがあっという間に治りました。馴れればもっと出来る気がします。念じる時は光っちゃいますので、夜なんかはちゃんと考えて目立たないように時と場所を選ばないといけないと思ってます。
火や風、土もそうですけど地図や地形の魔法も念じなければ使えないのも気付いたんです。それに、大きなというか威力がある魔法の時は魔石が要る事が分かりました。普段使う分には、体の中の魔力で足りているんでしょうね。最近は魔石が無くてもお風呂が点てれるようになったのは体内魔力が増えている所為かもしれません。
水なんかは魔法で作ってもズーと水であるという感じす。これは水分を集めた結果が水という物質になっているという事です。火の魔法が消えてしまうのは、念じるのを止めるとガスみたいな燃料の魔力が尽きるんじゃないかと思っています。爆発するような火魔法は魔力を沢山、集中すればするほど大きくなるはずと思っています。
最初の頃は土魔法なんかで、大きなテーブルを作ると翌日には崩れている事もあるので、何らかの固定する方法か硬化する力を見付けたいと思っていました。という事で丁寧に魔力をこれでもか、と言うぐらい注ぐと硬化することが分かりました。これでトイレの洋式便座に安心して座れます。
魔力はたくさん要りますが、魔力が必要なら魔石もあります。それに魔力も伸びているようですしね。幸いな事に無詠唱派になってしまった僕は、魔法発動の規模が大きくなり過ぎないよう、むやみに魔石は使わないよう注意しないとね。体は11才なので厨二病を発症してもおかしくないのですが無詠唱でホントに良かったと思っています。
パーティーなんかの魔法使いは連帯の為に言わなきゃいけないそうですが、あんな呪文、長いだけでなく人前で恥ずかしくて堂々と言えませんよ。僕はシンプルに火魔法・水魔法と思うだけで威力とか効果とかはイメージだけでやっています。
※ ※ ※ ※ ※
イリア王国のテーブルは木を荒く板状に斧や鉈で製材したものだけです。まだ鋸や鉋が一般的で無いので仕方が無いのですが。僕が作るのは日本のテーブルとも少し違うんです。土魔法で造るんですけど硬化が出来るようになったので、天板がツルツルでガラスが置いてあるかのようにピッカピッカ。これは僕のイメージの為かと思うんです。
小さ目のテーブルなら細部の彫刻や透かしまで作れるようになりました。魔力を多めにしたら時間を置いても壊れそうもないんです。机ばかり作るのは何かおかしいので椅子も家具も作りましたよ。エエ、土魔法がらみで作れそうなのは何でも作りましたよ。
「カトー、どうしたんだ? そんなに興奮して」
「作れるんです。大事な事だから二回言います。作れるんです。お約束です」
「何がだ」
「ガラス。物質化した小さ目だけどガラスだよね、これ。河川敷の砂を見てふと思ったら作れてしまった!」
「ガラス? ガラスかー」
「これ熱が必要ないんだ。出来た時にピカッと光るけど、エネルギーは魔力だけで良いんだ」
「川砂から?」
「薄々、水魔法を使う原理でね。そうじゃないかと思っていたんだけど、実際に出来るとなるとかなり興奮するよ」
「そうだな」
「材料や素材さえ揃っていればガラスでも金属でも化合物を何でも作れるという事だよ」
「おとぎ話の錬金術師と同じ事が出来るのか」
「魔力の量と魔法を組み合わせればですけどね」
「それじゃ普通の者は無理か」
「マ、普通はどちらもないので無理なもんは無理という事か。カトーしか出来ないのは仕方ないな」
「アァー、もっと化学や物理を勉強しておけば良かったなー感が半端ない。ほぼ完璧というぐらい忘れちゃったし、スマホにある小説が頼りになっちゃうな。ウェブ小説の科学や物理情報は正確なのかなー?」
(そうそう、魔石の発動条件は、ある程度コントロールが出来るようになりました。これで癒しの魔法の暴走も不意な発動も無くなった。コツをつかんだと言うのかな、むやみやたらと魔法が発動するのはかなり困った事になるので一安心です。まぁ、強く念じ過ぎるとダメそうだが、そうそうある訳でも無いだろうし)
沢山の魔法を使えるようになりましたが、使える量というのかレベルに合わせて限度というのかがあるみたいですね。水魔法でもお風呂の大きいのは出来たけど、まだプールの様なのは出来ないし。同じように火魔法もお風呂はOKですけど、魔石を使用できないと爆発などを起こす事はは無理という感じ。適性というのもあるのか、土と水魔法は今でも結構できると思う。魔石が無くとも練度が上がれば威力や効力上げなんてのができるかも? と思っています。




