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癒やされたいキャンパー。異世界を癒やしに行く。  作者: カトー
第2章 街へ行こう
19/201

両替でお金持ち


 ※ ※ ※ ※ ※


 この転移した世界ムンドゥスでは、暴力的で犯罪に溢れている。この危ない世界では、いつ何時、襲われたり事故に会ったりするか分からない。忘れないようにしないと。貴族やお金持ちは冒険者を雇いガードマンとしているが、そうでない者は自分の身は原則、自分で守る事が当たり前だ。とまあ大げさに言って見たが、日本でも海外旅行するなら当たり前というか常識だよね。


 シエテの町に入るまでは、犯罪まで気が廻らなかったがヒバリの宿に着いて前述の防犯対策をしてみた。従者として、お金のやり取りもするので腰帯に財布代わりに革袋を着けていた。今まで犯罪に逢わなかったのは運が良かったんだ。エミリーのすぐ後ろにいて従者の子供が大金を持っているとは思われなかったのだろう。


「カトー気を付けて行けよ。ここの市場も昼までは込み合うからな。たまにスリやひったくりなども出るらしいぞ」

「ハーイ」

「特に旅行者や女性が被害に逢い易いからな。あっちこっち、するんじゃないぞ。地元の子供の様な振りをするんだぞ」

「分かっているって。買い物に気を取られたりしないようするよ」

 とは言っても、異世界の市場の中はワンダーワールド。若干、興奮気味だ。ただ僕らは必要量が少ないので中々買うという選択にならない。それでも毎日のように通っている

「顔見知りも出来たし、挨拶しながら見て回るよ。じゃ市場の東門前だね」

そうそう悪い人はいないし、客商売だから愛想も良いしね。


「オ坊主、また来たな。大麦・小麦・豆の値段なんて調べてどうするんだ?」

「ちょっと調べものだよ」

従者設定なので、ご主人様の命令で情報を集めていると言うと、尋ねてもおかしく思わないようだ。

「今日は調味料なんだ」

 市場には、主食様々な副食や各種調味料がある。やはり高かったのは小袋に入れた塩や小瓶の蜂蜜。大壺から量り売りしてくれる。シエテの町は西寄りの内陸にあるし輸送費も掛かるのでしょうがない。蜂蜜は、まだ養蜂が普及途上なので、自然豊かな森でわりと獲って来られる分だけだが有ると言える。

 見ることも出来なかったのは砂糖。貴族は手に入るのだろうが、常設とは言え庶民の市場だし。ここには食料品ばかりでなく各日用品・雑貨や衣服など場所を区切って商売している。食用の生きた家畜は市場に近い場所に色々置かれていたが、移動用の馬やロバは扱かっていなかった。

さて市場横の食堂兼居酒屋で情報収集です。僕はいつもの通りお粥で、席も同じ場所だ。お昼時を少し過ぎると市場のオヤジさん達がボチボチ集まって来て食事とエールでにぎやかになる。そんな中に入り込み丁寧に話を聞くんだ。子供で、下の立場で苦労していると思われたのかな? ぶっきら棒に見える人でも、結構優しいんだ。


  今回は常連さんみたいな顔見知りの小父さん達6人。明日には町を出るので今までのお礼を兼ねて、エールを出す。まとめて1400エキュ。初めて出したけど、皆には気にするなと返されたが、最後には受け取ってもらった。いろいろ世話になってるし。

 集まっている皆に荷物の事を話すと、やはり貸し馬屋からロバを購入するのが一番良いらしい。ロバは賢くて頑固な生き物らしく、馴れたロバなら多少高くても良いはずと教えてもらった。

「どうだった、荷運びの話は?」

「エール一杯で色んな話が聞けたよ。やっぱりシモンの所が良いみたいだよ」

「そうか。私の方も買い物が終わった。後は両替だけだな。しかし、結構両替するんだな」

「ロバの値段次第だけど、次の町の両替屋までどのぐらいかかるか分からなからね」

「じゃ、ナタナエルの所で良いな」


 両替商のナタナエルの店は昼近くから営業なので丁度良い。2人で出かけたが、お店には1番乗りしたみたいだ。ナタナエルが警備しているのだろう冒険者と話していた。エミリーを見るとすぐに奥の部屋に通された。

「良くいらっしゃいました。エミリア様、して本日のご用件は」

カトー、出しなさいとエミリーが言ってきた。僕は用意してきた革袋をテーブルに置いた。

「カトー様でよろしかったですか?」

「ハイ、カトーです。両替をお願いいたします。潰し金を持って参りましたので、王国金貨多めで。1割ほどは銀貨でお願いします」

「潰し金1袋ですね。では、秤を持って参ります。手数料はお引きして1割でどうでしょう。よろしいでしょうか」

「それでお願いいたします」

「番頭が量っている間、お茶でもいかがですか」

「ああ、すまない。この後、旅に出るので残念だがしばらく来られないな」

「さようで御座いましたか。エミリア様、行き先をお聞きしてもよろしいですか?」

「あぁ、そうだな。王都に行くので、高級品も扱う両替商を教えてくれないか?」

「ハイそれでしたらクラウディオ・アルモドバル・メリノがよろしいでしょう。私の親方筋で、王都の第2城壁、西門近くに店があります。後程、紹介状を宿に届けさせましょう」


「お待たせしました。カトー様、全部で王国金貨54枚分になりましたので、金貨は50枚、後の4枚は大銀貨で30枚です。よろしいですか」

「はい、それでお願いします」

「ただ今お持ちします。ご確認ください」

「それでは良い旅を。お戻りの際は、またご贔屓に」


 市場で隠しポケット用に布と針や糸を買い足して、その後一廻り。買い忘れが無いか再チェックして、顔見知りとの挨拶を終えた。シモンからロバ2頭を買う事にして城門に向かう。予算はロバ1頭250万エキュだ。


 シモンの所に着くと、折よくこの町に来る時に借りたロバがまだ居るらしい。道中、世話をしたので気も知れているし、相性も良いようなのでこれに決めた。シモンは動物好きが分かるらしい。少し年を取っているそうだが、ちゃんと世話をしてくれるならとおまけしてくれたので、ロバ1頭200万エキュで手に入れることが出きた。

 明日の朝に出発するのでシモンに購入したロバをそのまま預けて宿に帰る。エミリーにお願いしたんですけど裁縫はまったくという返事だ。天は二物を与えずという諺を思い出した。今夜の予定は仕立てた服と下着に隠しポケット縫い付ける事に決まりだな。


 ヒバリの宿もいよいよお別れです。朝食後、シモンの所にロバを取りに行き宿に戻って荷物を括り付けた。宿の皆にも挨拶を終え、名残を惜しんだ。モニカが目を真っ赤にして涙ぐんでいた。主人のエステバンは早く行けという目をしているし女将さんのオリビアさんはまたかという感じだった。


 ※ ※ ※ ※ ※


イリア王国歴180年12の月8日

 西はスイザの村からシエテの町に着き、東のタラゴナの町続く街道。棒を杖代わりにしてロバの手綱を曳いている。

今、僕たちは門から出てスイザの村に向かっている。昨夜、エミリーと相談して一度スイザの村近くの隠し場所に戻ることにした。遺跡や途中の隠した財宝入りのゴミ袋まで戻るのは遠すぎる。より近いエミリーと会った場所に戻って、隠した物一式を回収しようという事だ。遺跡都市メリダと比べれば近いし、財宝なんて発見されていたら嫌だしものすごく損したと思うし。

「有ると良いね」

「あるだろう。誰かに見つかったという話は聞いてないぞ」

「ウン、隠した物はまず魔石だろ。次に日本の物が有って、折り畳み自転車に空のペットボトルかな。念の為、開封したレトルトパックなどのゴミも形が良さそうなのも纏めてある。後は財宝と言おうか宝の地図、とキャンプ用品で持ってこれなかったものかな」

「カトー、結構あるじゃないか。ゴミも持ち歩いていたのか?」

「日本人なんだよ。捨てるのは分別してあるからそこそこ綺麗だし」

「ゴミが?」

「食器トレーなんかは薄くて割れないし軽いいんだ。砂漠の民方式で汚れは砂で拭ったからね」

「へーそうなんだ。頭良いじゃないか」


 でも、。回収できれば、軍資金の強化になる。お金は大切だよねー。、。特に日本の食べ物は、僅かしか無かったがエミリーも甘味に期待している。

「今使っているこの空のペットボトル。捨てるには惜しいと思わない?」

「そうだな。確かに水は漏れないし軽い。中身も見えて残量が分かるのが良い。持って歩くにも便利だ」

「日本じゃ、便利すぎてポイポイ捨てる人もいたけどね」

「それカトーが言っていたが環境に悪いと言うのだろ」

「そう。だから持って歩いている。二度と手に入らない気もするし、いざとなれば水筒として売れそうだしね」

「だが、カトー魔石や財宝があるんだぞ」

「それがね、隠した所にはもっと置いてきたんだ」

「だからな。見つからないかと心配だったんだ」

「そうなるね」

「何がそうなるねだ。行くぞ」

「イヤ、誤解だよ。僕はエミリーには資金援助して復讐の資金にしてもらう心算だよ」

「そうなのか? すまん」

「エミリーとは今後も一緒に行動する事になる。巨額のお金を出したからといっても言う事を聞けなんて言わないよ」


 断じて援助交際ではない。はずだと思う。先立つ物は何とやらで、エミリーにはお金の事は感謝されたが、商会を取り戻した後必ず返済すると言って譲らなかった。証文まで書くと言うのを気持ちだけで良いよと言っておいた。 エミリーの真面目な性格が分かる。しばらくして複雑な表情をしていたが、僕に聞こえるようにボソッとつぶやいた。


「よく聞く話だ。あこぎな金貸しが、落ちぶれた貴族の娘を金で良いようにする話だな」

「エー! 何で分かったの?」

「カトー、お前!」

「エミリーも冗談でしょ、僕も冗談だよー」

後で、からかったのはお互い様という事になったが、エミリーとも随分と冗談が言い合えるようになった。


イリア王国歴180年12の月10日

 回収に向かう道々、魔法が目立たたず使えて、色んな魔法を試せそうな場所を考えてみた。街中では何かと都合が悪いし、商業ギルドにも魔法関連の訓練場は無いそうだ。火魔法なんて爆発する系はやばいだろうし。魔法の練習ともなればどんな威力が有るかまだ分からない。人気のない郊外でした方が良さそうだ。他の見つかりにくい場所でも同じだろうし、ある程度は知っている場所にしよう。


 シエテの町へ来る途中でレイナ達と出会ったトルトサの村が良さそうだ。あそこなら人通りも少なく、脇道から森に入ればまず見つからないだろう。ついでにカートの荷物も回収できるし。金銀財宝にレトルトや空のペットボトルはダンボール箱ごと、自転車は輪行袋に入れてビニールでグルグル巻にしてあったはずだ。


 シエナの町を出て、隠し場所にたどり着いたのは2日目のお昼。回収しがてら魔法も確かめる場所に移動しよう。

「ここらあたりなら、人目を気にしないで魔法が試せそうだ」

「そうだな。出来ればもう少し奥に行くか。街道からは見えなくて平地が良いと思うんだがな」


「そう言えばカトーは、詠唱しないな」

「恥ずかしいのです」

「何を言ってるんだ。詠唱すると魔法の発動が楽になるし、威力も増すはずだが」

「そうなんだ」

「あぁ、無詠唱の魔法使いは珍しいんだ。いきなり発動すれば、周りの者に魔法の種類も威力も分からないから先制攻撃が出来るからな」

「先制攻撃なんて、そんな場所にはいかないようにしたいし脅かさないでよ」

「狩りだよ」

「音を立てると獲物が逃げてしまうだろ」

「猟をする時役立つんだ」

「フーン、なるほどね」

「もちろん、町で色々と不味い事が出来るかもしれない時にも役立つからなぞ」

「やっぱり」


「カトー、広い所と言うのはどの位なんだ?」

「魔石を使うとかなり威力を増すので危険だと思うんだ」

「そうなんだ」

「念の為なんだけど。魔石を使いこなす訓練だけど危険な状態にもなるかなと言った処かな」

「じゃ、魔石のエネルギー? を使えば危ない場合もあるという事だな」

「マ、少しずつでも慣れるしかないね」


「エミリー、そろそろお腹が空いてこない?」

「そうだな。少し狩っとくか」

食事といえば、動物性たんぱく質はエミリーが獲って来てくれる。副産物の毛皮も貯まってきた。だが肉も毛皮も解体しないと手に入らない。特に気分も技術も大変なのが、猪や熊の様な大物の解体だ。多く日本人は鶏も絞めたことが無いと思う。肉はスーパーに置いてあって、買ってくるもんですもね。分かっていたが命を頂くというのも難儀なものだ。


「じゃお願い。大きいのは今度にしてね。今日はウサギぐらいで」

「ウサギのソテーか。悪くない」

「今日のパンは市場で買った堅パンになるから、スープどうする?」

「それも良いけど、あの美味かったレトルトという日本食をまた食べたいし」

「もう少ししかないから半分ずつな」

「それに」

「それに? 甘味が不足しているとエミリーが目で訴えている」

「分かっている」


 そうそう折たたみ自転車と財宝、食料も変わらず置いてあった。残念だがレトルト食品も少なくなり、日本の味が遠くなる。特に砂糖を使ったお菓子はエミリーにも人気だった。最後の羊羹はエミリーと半分ずつモグモグした。もうドロップぐらいしか残って無いよ。


 自転車どうしよう、やっぱ目立つよな。捨てるのは勿体ないし、ドワーフも見かけない。自分で工夫してあれこれしても上手く使えないよね。生産に関係するなら鍛冶屋の知り合いがいるなー。今のところは折りたたんだまま荷物になりそうだ。とりあえず持って移動する事にしたけど、これズートお荷物になるのはもったいないと思うよ。


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