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癒やされたいキャンパー。異世界を癒やしに行く。  作者: カトー
第2章 街へ行こう
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服装と装備の選び方

 シエテの町までは美しい風景を堪能できたが、残念な事にこれからは風景より人間を見なければならない。

「カトー、野営する商人や旅人を狙って、盗賊が出る事は知ってるな」

「ウン、盗賊なんて会いたくないね」

「まったくだ、だが王都に近づくにつれて多くなるんだ」

「どうして?」

「王都に近くなるほど、守備隊による巡視は多くなり離れる程少なくなるのだが」

「それなら少なくなるんじゃない?」

「残念だが、これは交通量の多寡や盗品の換金性が関係するに違いない。おかしな言い方だが盗賊も経済的に合わないのだろう」

「襲う商人達が少なければ、襲うチャンスも少ないからか。なるほどね」


 商業ギルド内の冒険者カウンターの前にいる。自己防衛はこの世界では基本だ。という事でエミリー―が依頼ボードで情報を見つけてくれた。武器を扱えるようにする初級コースの事だ。探してくれる間、僕が受付嬢を見て妄想していたのは秘密。これは依頼ボードまで僕の背が届かない為で他意は有りません。

「エミリー、ごめんなさい。小突くのは止めて」

すいません、見ている人は見ているって事です。


 商業ギルドには冒険者用の訓練所もあるし、武具の教官もいて色々アドバイスも貰える。刀剣・防具等も数打ちものなら販売もしてくれる。もちろん一般用体験コースも各種あるし、サポートもしてくれる。加えて商業ギルド関係者は優待料金が組まれている。エミリーの従者設定なので、一応僕もギルド関係者なって半額になるらしい。選んだ武具初級アドバイス付コースは割引で半日1万6000エキュ。依頼ボードには武具教官募集の依頼も出ているそうだ。

(教え教わる。需要と供給ですね。さすが商業ギルド、しっかりしていますね)


 魔法については、直轄城郭指定都市でも教わる所が無いみたいだ。商業ギルドも魔法の講習を受ける人数が少なく採算割れ確実なので初級コースもない。水魔法ならコップ程度の水量ではダメだが、魔法の才能が有るとされれば、だいたい15才には王都の守備隊や優秀なら近衛に、また教会に往くかして術師か魔法使いに成る。そこで専門の講義や練習を行う事になる場合が多い。


 ※ ※ ※ ※ ※


「諸君、ギルドの武器講習にようこそ。本日は初級コースとは言え応用も利く、必ず役に立っと思ってくれ」

「ハーイ」

「君達のほとんどは子供の頃から武器に触って来たと思うが、全く初めてと言う者もいる。知っていると騒がずに自分が知っていた事が正しいかどうか確認する事。意外と抜けている所もあるからな」

 武具初級アドバイスコースでもかなり突っ込んだハードな内容らしい。この世界の男の子、特に貴族や領主の子供達はそれなりの素養がある。騎士位になって何やらの大会に出るらしいので小さい頃から習っているのが普通らしい。日本人でそんな人は少ないと思うけど。僕もこのムンデゥスに来るまで本物の剣や盾なんて持った事無かった。ロープレ用のはアキバやネットで売っていたりするので持った事はあるけどね。


「剣や盾なんてどうやって使うんだ?」

 教官役の冒険者さんが実物を手に持たせて色々教えてくれる。初心者には様々な武具を触る機会はそうは無いだろう。得物を選ぶアドバイスでは体格や希望も考慮してくれる選んでくれる。


 剣なんて触ったこともない。鎧も美術館で西洋なんとか展で見ただけだ。当然、着方なんか解る訳ない。普通の日本人が西洋甲冑の訓練や使用方法を知る訳がない。それに加えて11才の体ではサイズ的に色々難しい。

 ここまで言って何だが、男子としては武具というのはロマンを感じる。という事で教官に僕が使えるかもしれないという得物を考えてもらいました。

(ウェブ小説の多くの主人公たちは剣術無双ですもんね。そりゃ、影響受けますよ)


「俺たち三人は普段護衛の仕事をしているから言葉使いが下手なのは勘弁してくれ。だが、実践的なアドバイスが出せるぞ。今日は五人と人数も少ないので二人・二人と一人で行こう。あぁ、カトーと言ったな。君は全くの初心者だそうだから、俺が教えよう。他の者は剣技に合わせて二人ずつだな。じゃ半日だけどよろしくな」

「ハイ、教官よろしくお願いいたします」


 最初は武器全般についての講義で軽く教えてくれる。それによると戦争における戦死者の半分以上は矢や投石などの飛び道具だ。残り2~3割が槍、棍等の長柄武器で、後の残りが投石機や刀剣類、戦斧、打撃武器、罠、火炎瓶、煮た油の火傷であったようだ。戦争だからね。この世界では一般常識らしいが。


「君の場合、そうだな。」

「カトーで良いですよ。教官」

「そうか。良し、カトーの第1候補は斧だな。斧は、農民に限らず薪木をとるなど日常生活に欠かせない物だ。手近な物を武器にするのは自然な事だ」

「そうですね。手近なのは良いですね」

「扱いに慣れた斧は剣や弓のような訓練をしなくても直感的に戦う事が出来るし、武器としても優秀だ。振り回す事で重い一撃を与えることができ、防具に防がれても衝撃は十分なダメージとなる。刃が厚く大きいので耐久性があり、刃が欠けても差し障りないしな」

「僕もそう思いますけど、持っていてるとかなり重いんですが」

「そうか、かなり重いのか。残念だな。斧は徒歩の場合はベルトに挿せるし、ロバの時には鞍の前にぶら下げれば良いんだがな。それに普段は木を切ったり削り、ハンマー代わりに使ったり、物の作成や破壊もできる。いろんな使い方があるし、製造コストも低いので売値も安い優れもんなんだがな。しょうがないな」

「すみません」

「なに気にするな。それじゃーと第2候補は鉈だ。鉈も農民が好んで使うのは斧と同じだ。多くの戦場で見られ、槍と並んで鉈が白兵戦での武器として使用されている」

「これも重いんですけど」

「そうかー。でも、大丈夫だ。得物は、まだある」

 同じようなハンマー、つるはし、フックなど打撃系は重すぎてダメ。刀剣は実戦ではあまり使われないそうだ。護身用に近い感じだし、第一サイズが大人用なのでこれは無し。

 短剣タイプを持つのが辛うじてという感じだ。槍は簡単そうに思えたが、ちゃんと使うには鍛錬する時間がかかるので無理。弓矢は技量面も考慮して無し。細身の剣のレイピアも試したが剣技が成っていないのでこれもダメ。(今まで持ったこともないし、フェンシング? 何、それ、美味しいの? と言う位だし)


 教官は何とかなるさと慰めてくれましたけど、この半日コースでは色んな事を教わりました。このムンデゥスの少年少女は刀剣を振ることが出来るようですが、都会で暮らしてた普通の日本人には近接武器というのは馴染まないという事です。馴染まないだけで出来ないという事ではありません……。はっきり言うと、僕には無理かなって事です。ウェブ小説の場合はスキルとか魔法とか出て来て、無双状態になれるみたいだけど残念ながら今はそんな事は出来ない様だ。ひょっとしたら何処かにそんなスキルが転がっているかもしないので諦めはしませんけどね。


 ギルドでの半日講習後に、エミリーに相談すると棒でもナイフでもまず体幹の訓練をしなさいと言われた。基本的に殺傷技術は教えてもらえない。下手すると自分自身を傷つけてしまうそうで、護身術的な内容だけという事でエミリーに基礎を教えてもらうことになった。結果、僕の場合は逃げるのが一番であると言われました。

(エミリーさん、そんな身も蓋もないもう少し言い方があるでしょう。でも、そんなもんですよね。多くの日本人男性はロマンを持ったままの方が幸せだろうと思う)


 それでもこの世界は物騒ですので、とりあえず装備品の第1候補は棒乳切になりました。いつかは槍を使えるかもしれませんしね。道具は上手に扱うにはそれなりの技能を必要ですが、取り回しに便利なのはほどよい大きさで扱いやすい物です。この棒の長さは乳首の位置で、振り回し・打ち下ろし・突いて・絡めて良しと、かなり有能であるとされています。僕の場合は杖にもなりそうです。

(一部、期待されたかも知りませんが、これはヒノキの棒ではありません)

魔法使いの杖みたいですが、いつかはミスリムの棒を塗装して目立たないようにして持てるかもしれません。


 装備品の第2候補はナイフ。サイズ的にナイフが手に馴染みそうです。と言いたかったのだが攻撃用の鉄のナイフでは重くて取り回しが出来なさそうだ。日常のカッターのようなナイフですね。まぁ、重量の事なら軽いミスリムのナイフで何とかなりそうですが。


 ※ ※ ※ ※ ※


 これからシエテの町で、この世界の装備を整えて旅に出る事になる。服が、一番時間がかかると思っていた。生地屋に行って、採寸して縫い付けしてあれこれと思っていたら意外と早くセミオーダーメイドでも2日間で出来てきた。生地屋の親方が言うには、女衆の時間がかかるのは他の仕事をこなしながらなので、僕の様な場合は大人の小さい判なので採寸も見ただけでいいそうだ。そう、赤ん坊用はともかく、子供服という物が無いらしい。


 採寸の単位も指とか手の平とか。ベルトで調整という事だが、僕がフラップのあるポケットを付けてと言ったらそんなやった事の無い仕事は余分に2日掛かると言われた。ここでは小物やお金はベルトに革袋を結ぶのが普通。で「ポケットは自分で付けろよ」なんて言われました。でも要るよね。


 下着には盗難防止用に、隠し袋を縫い付けた。金貨とミスリム硬貨それに魔石を入れるつもりだ。追剥が身包み脱いで置いていけと言っても、こればかりはご勘弁をという事で逃げ切りたいです。魔法の発動条件の距離の問題を解決したら、(十中八九距離の問題だと思うが確信はまだない)縫い付けタイプのポケットに変更して、洗い替え用に3セット用意する予定。


 この王国の人が、1カ月に一回だけの洗濯で済ましているとしても日本人の僕には難しい。どこでも洗濯し乾燥できるよう魔法を覚えるのは急務だ。宿の部屋だと埃が舞うので、できれば外が良いんだけど。人に見られるのがためらう理由だ。エミリーと僕の洗濯物がヒラヒラと空気中に漂っているのを見るとまずいとは思うんだよ。でもやってみると、魔法なら生地の痛みも手洗いより少ないし、火魔法よりも風魔法の方が早く乾くというのはちょっとした驚きだ。


 下着を鎧下替わりに着て、ミスリムのチェインメイルを装備する。これは軽いので助かるが、もし鉄製だったらぞっとする重さだと思う。僕には鉄製チェインメイルを着て動き回るのは無理だ。お付きの人にペンチでリングをこじ開けながらトイレを手伝ってもらうのも嫌だし、めちゃ肩こりしそう。

 ミスリルのチェインメイルを隠すように上に着るのは、セミオーダーメイドした商人の服だ。これはいわば街着ですね。隠しポケットが内側に四ツ付けてあるんだ。何となく、ポケットが一杯付いていた釣り用ベストを思い浮かべたよ。


 それで最後にフード付きのローブを羽織るわけだ。ローブは例の見えなくなる光学迷彩タイプ。前は帽子を被ってなかったのでうっかりすると透明人間になっちゃうんだけど。珍しい黒髪と言われるのも何だし、髪を染めるのもね。染めているという人にもあったことないし、薬剤も無いかも知れない。今の処、忘れないように幅広の帽子を購入して被る事にした。


 フードなんですけど、すっぽり被っても中から外が見えるんだ。偶然発見したんだが念じると音も消せる。身動きしなければ余程の達人か動物ぐらいしか分からないと思う。声だけなら横にいるエミリーにも通じないし叫んでも分からないようだ。


 これは結界かも知れないと思って、エミリーに火魔法で攻撃してもらった。確かに焚き付け用の火魔法だが、他に魔法が使える人がいないのでしょうがない。火魔法はローブに当たる直前に、消えてしまうんです。

まだ要検証ですが、結界が張れているのかもしれないな? 


 装備品としては棒乳切のサイズの棒、それにミスリムのナイフと食事用の普通のナイフ。靴はハイヒール気味のレデルセンとよばれる革ズボンみたいな感じのブーツ。

何となく魔法使いと言う雰囲気に近づいてはいる。小さな、灰色のガ●ダルフと言う処だな。


 ※ ※ ※ ※ ※


「オ、どうした? カトー」

「なんとなくテンションが上がっているんだ」

 荷造りして整理したので、麻袋の数が僕のは6個で追加が3つ。残念な事に、日本の食糧は殆ど残っていない。

(一度隠した財宝や食品等の処へ戻る事も考えないといけないかなー)

 追加はエミリーの私物に食料と雑貨で3個、合わせて9個になる。ロバ2頭に振り分けて積んである。

「カトー早く乗れよ」

「ハーイ」

 僕がどちらかのロバの上に座るという事になっている。すいませんエミリーは歩きです。歩けると言ったんだが、歩みが遅くなって宿営地に泊まれんと言われましたんでロバの上になったのだ。マ、背が高くなって世間が良くわかると思っていたら地図の魔法と連動していたんだ。これ、今までに通ってきたり見たりした所が地図に成って頭の中に浮かぶってやつだね。ウェブ小説ではよく見るけどダンジョンなんかで皆使っているね。


 この魔法、これは翻訳の魔法と同じで過去データになるんだろうが、あっただろう町や村、この大陸の姿・形だけでなく恐らくこの惑星規模の地図が出て来る。現在の名は違っているだろうが地形はあんまり変わらなかったと思いたい。遺跡都市メリダはメテオが有ったみたいで変わったんだろうが、エミリーは南大陸など聞いた事も無いと言っていた。おそらく他の場所でも随分と変わっているかもしれない。


 後、残念なのはこの魔法を覚えた、スイザの村から遺跡都市メリダまでの詳細が分からない。スマホの写真と見比べておおよその見当はつくんだがね。地図の魔法と関連づけしてあるみたいで、メリダみたいに地名・地形等を新しく見たりして経験? 体験? すると情報が更新される感じだ。


 それと気付いたんだが意識しないと魔法が出来ないんだ。訓練と言おうか修行と言おうかそんな事をしないと魔法が出来ないという事だ。正直に言うと水魔法みたいに日常的に使うのは良いんだが、何処に行っても勉強と努力が必要だとはねー。これじゃチートになるのも大変だろうな。マ、今は面白いので続けられてるが、何時まで根気が続くかなー。


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