結界作動。帝都再び
帝都防衛戦において最も規模が大きく、長期期間に及んだ残忍極まる攻防戦として知られるのが、第一城区の戦闘である。帝国歴391年11の月16日から始まる帝都攻防戦は、90万以上の魔獣が帝都を襲ったといわれる。帝都に残った、100万人にも及ぶ人々との間に死闘を繰り広げられた。この時、魔獣は帝都の第一城壁を攻略しようと群れを、3群に分けて軍団の様に移動を開始していた。
フルダ平原を占領した魔獣は、列車砲によって一旦は集結を阻止された。砲撃により、3万匹ほど数を減らした魔獣は、再集結を果たし、2日後には帝都に進軍を開始している。防御結界が稼働した事により、今のところ第一城壁より中には魔獣は進入できないが、噂では何時までも結界装置が動くと言えないらしい。
帝国歴391年11の月17日。前月、防衛軍は魔獣にリューベック川を渡河され、フルダ渓谷出口、フルダ平原と、立て続けに撃退に失敗した。この戦闘で、帝国は最新兵器や貴重な兵員を失っていた。だが、アンベール帝が帝都残留を決め、「我は帝都に有り」の報を聞いて将兵は帝都防衛の決意を新たにした。
また、ナゼール宰相も談話を発表し、帝都民の理解を求めた。
「反転攻勢を開始するにしても、帝国各地からの援軍を待つ時間が必要だ。それ故、帝国南部の特別行政都市と同様に、遅延戦闘と籠城をすると言う作戦は、現状では至極当然だ。諸氏は、反攻できる時まで我慢するのだ。その為にも、少しでも魔獣の数を減らさなければならない」
帝都防衛軍の指揮官達は皆、出撃して魔獣を攻撃するだけの力は無いと判断している。さらに気になるのは、帝国南部に置いて、堀に堡塁と城壁を組み合わせた特別行政都市の防御でも、重魔獣の出現で時を経ずに籠城戦に敗れるという事であった。
魔獣は、帝都攻略を始めた。ケドニア側は、撤退する訳にはいかないし、降伏などは論外である。帝国には帝都ヴェーダを死守する必要があった。帝都は、政治・経済・金融の中心であり、工業製品を考案し、軍の維持に必要な物資を運用する最重要拠点である。
帝都を失えば、それらの損失も計り知れないが、人的被害は想像を絶するだろう。魔獣に占領されれば皆命はない。残らず殺害されエサとなるだろう。ケドニアは帝国、いや、国として崩壊するかもしれない。
11の月18日、魔獣の攻撃開始は空から始まった。帝都民は通常と同じように平穏な朝を迎えたが、一瞬にして地獄の世界に直面する。カラス型の魔獣とワイバーンは、第一城壁・第一城区に対して2万匹による、猛攻撃を加えられた。だが結界装置が稼働し、午後からは、この空からの攻撃を阻止出来た。
11の月19日、魔獣の魔獣中央軍は攻撃を開始し、第一城壁の防衛軍が反撃をしている。600年の歳月は、改修や増築などの理由で城壁の位置を僅かながら変えている。結界の範囲が及ばないことを見抜いたのか、魔獣右翼集団による総攻撃が開始された。帝都防衛軍は、籠城の初戦である第一城壁前での攻撃に対して持ちこたえ、反撃に成功したと思われた。
11の月20日、朝から魔獣による攻撃が開始されると思われたが、魔獣は大砲の射程距離12キロより近づかず、第一城壁より20キロの所に再び集まり始めた。この事は、気球と偵察小隊の報告で知らされている。気球は、200メートルまで上昇すれば50キロちょっとまで分かる。偵察小隊は爆風で崩壊したガレキの中を進まざるしかなく大変だったそうだが、この報により地上からも確認できた事になる。
住民を救う為に、帝都防衛軍は30万をバハラスに退避させていた。だが、避難しようとする人々は、未だに街道上にも多くいる。そこでは、魔獣は空飛ぶ魔獣を使って攻撃を行っている。防衛軍は、帝都からの避難を断念するしかなかった。その攻撃は広範囲に及んでおり、周辺地区はもちろん、アンベール皇帝運河でも行われていた。攻撃を開始してから数時間後には、魔獣は数隻の川船を沈没させ、運河の使用は危険と判断されて使用出来なくなっていた。
この空飛ぶ魔獣による、帝都周辺の町や村に対しての攻撃は、何度も繰り返し行われたと伝えられている。おそらく、帝都に侵入できなかった空飛ぶ魔獣達が、それに流用されたのだろう。多くの人々が、犠牲になったと思われたが、この攻撃による犠牲者数は不明あった。しかし、何千人もの人々が殺害されたと考えられている。
帝都は、結界によって守られているが、帝都を一歩離れれば、制空権の無いケドニアは無力で動きが取れなかった。帝都では、籠城の為に武器など持った事の無い者たちも、すぐに戦いに加わるよう要求されるようになっていく。
※ ※ ※ ※ ※
ワイバーンは結界を越えて進入できないと言われていたが、昼過ぎ、大型のワイバーンが1匹、空高く何かを抱えて飛んでいる。もう1匹は、かなり離れた処を飛んでいた。2匹は、帝都の上空500メートルを舞っている。
遠視の魔法を使える、城門の長距離・対空担当指揮官は訝った。隕石テロを防いだ時には、上空2キロの地点で機能したと記録されていたが、やはり600年の年月は機器に異常を起こさせていたのだろうか? 潰れたドーム状の結界が張られた昨日昼からは、100から200メートルの高度で、侵入しようとするワイバーンは確かに入れなかった。
帝都の中央辺りに来ると、60センチ程の物を落としていった。11の月21日、カトー達が、帝都まで200キロと近づいた時、それは起こった。帝都、水晶宮殿の上空には、大きな輝く光の珠が一つ現れた。結界は、持ちこたえた。最初は唯々、眩しかった。そして帝都の人々は、紅蓮に染まる空を見上げながら恐怖と絶望を知った。
高度500メートルで投下されたW19-B(略称、魔核弾頭)は、高度450メートルで起動、爆轟した。直径20キロ圏、面積にして310平方キロを消滅させるはずだった。その閃光は、200キロ離れて飛行していたカトー達も見ていた。
その閃光は、帝都は破壊できなかったが、防御結界の効果の圏外に居た者には死が訪れた。爆轟による衝撃波は、圧力の急激な発生によって音速を超える速さで炎を一気にふき出し火災を広げている。フルダ平原で起きたように、劫火の下で生き延びた生物はいなかった。
爆発は結界装置が働き、帝都には直接の被害が出無かったが、空中に発生した潰れた火球は、1秒後には直径90メートルの大きさになり、約4秒間輝いた。
この火球から放出された熱線は、結界により数万分の1に弱められていたが、爆発後には帝都上空に強い影響を与えている。爆心地上空の温度は4000度に達した。爆発点は数十万気圧となり、周りの空気が急激に膨張して衝撃波が発生し、その後を追って強烈な爆風が吹き抜けた。爆心地から、城壁までの結界内は無事だったが、1メートルでも出ていた家屋は完全に倒壊した。
皇帝の命により、第一城壁の外にいた者はおらず難を逃れたかに思えた。一瞬、木造の建物や可燃物から火の手が上がったかと思うと直ぐに消えた。結界の周りは凄まじい圧力変化で空気が押され、真空状態が起きたようだが、すぐさま強風が吹き込んで再び燃え出した。
激しい劫火は、ありとあらゆる物をごく短時間で燃やし尽くした。だが、結界装置は見事に働き、帝都の100万の命を守った。
城壁外の、建物等の被害は相当なもので、ほぼ全てが吹き飛ばされて破壊された。第一城区に収容されなかった野良犬が、ガレキ跡の地下から数匹発見されたが、いずれも気圧の低下によって眼球が飛び出し、 鼓膜は破裂しており肺と腸が潰れていたと言う。この爆発の帝都の人的被害は、耳に異常を起こした者が2000人程で、結界近くで軍務や作業していた者に限られた。結界は、有効であった。
結界は維持されているようで、依然として魔獣の侵入を防いでいたが、爆発後には空を覆うドームが所々乳白色になっており人々を不安にさせていた。魔獣の動きは無く、相変わらず待機状態のようだ。ここで、対空担当指揮官の報告により、ワイバーンが高度500メートルで来襲し、爆発が起きた事が知られた。
帝都防衛軍では、魔獣が待機状態にある事を重視していた。ワイバーンによる、爆撃が間近なのは間違いないだろう。ただ、何処から飛来するのかも不明である。対空警戒を厳にして結界が持ちこたえる事を、祈るしかないと言う状態であった。
この対空警戒でピリピリしている時に、帝都に近づく不審な飛行物体が発見された。空飛ぶ絨毯に乗ったカトー達であるが、案の定、狙撃兵から小銃の攻撃を受けるという一騒動が起きている。帝国の国旗が見えた事と、イリア王国の使者である事を名乗ったので無事着陸が出来た。監視所で止められて、確認の為に直ちに公使館に伝令が送られた。
※ ※ ※ ※ ※
「失礼、自分は皇帝府付きのレオポルド・ロラン・パイユ近衛中尉です。カトー伯爵ですね。で、こちらはエミリー少佐ですね」
「そうですが?」
「では、こちらへどうぞ。皇帝陛下が、お会いになりたいそうです」
「はい? しかし、自分達は公使館へ急いでいるのですが」
「カトー伯爵、申し訳ありません。外交官の身分をお持ちですので,お断りされても致し方無いのですが。無理を承知でお願いいたします」
「相手が皇帝陛下では、お断りする訳にもいきません。伝言を書く間、暫くお待ちください」
「有り難うございます。では、お待ちしております」
「カトー伯爵。エミリー少佐、よく来てくれた」
「御尊顔を拝し奉り、恐悦至極に存じます」
「あぁ、皆の者、ナゼール以外は席を外してくれ」
「陛下、人払いできました。今回は、ご命令通りゴーストもおりません」
「ナゼール、ご苦労。さて、お2人とも、ざっくばらんに話してくれ。もちろん、無礼講で良い。ワシのことは、アンベールと呼んでくれ」
「陛下、それはちょっと」
「構わんよ。何なら、日本語でもいいぞ。不躾とは思うが君は何者かね? カトー伯爵」
「日本語で、ですか……分かりました。では、失礼して。僕は、加藤良太。27才でした? 独身です。転移者? だと思います。僕は日本人ですが、エミリーはムンドゥスの人です。事情は、話してあります」
「そうなのか。カトー君は転移者だったのか。このムンドゥスの世界には転生者しかいないと思っていたが。ワシは、転生者だ。日本人だった時の名は憶えていない。生まれてから、アンベールとして育てられたんだ。もっとも、19才で、はねられて転生した浪人生だったのは覚えているよ。なろうは読んでいたけど、良く分からない知識の思い出だけで、77年生きて来た。あぁ、ここに居るナゼールは、普通にムンドゥスの人間だ」
「転生者、なんですか?」
「転移者、なのか?」
「まぁ、お互い疑問も、多いだろうし言い出したら、らちが明かないな。順番に行こう。カトー伯爵はケドニア語も流暢に話せるし、エミリー少佐も通じる様だ。エミリー少佐とナザール宰相は日本語がダメだから、言葉はケドニア語で良いかい?」
(皇帝が、自分の事をワシと聞こえるのも、翻訳魔法が一番近い意味の日本語で訳しているらしいし、口に出す時は自動でケドニア語になっている。久々に翻訳魔法の凄さを感じた。1時間ほどで、大まかな処は分かってきたが、どこか妙だ)
「あの、要塞の人型決戦兵器だったか、ゴーレムの話を聞いた時、確信したよ」
「ジークジ●ンていうやつさ」
「カトー君の話によると、人型決戦兵器が正義の味方? 白い悪魔の連邦軍が勝ったと言っていたが?」
「RX-78-2ガ●ダムです。ファンの間では、機動戦士ガ●ダムと呼ばれ親しまれています」
話をしてみると、ストーリーはかなり違うが、初代ガ●ダムの大きさは18メートと言うのは同じらしい。
「悪の連邦軍が負けたんじゃないの?」
噛み合わない話の原因は、一つしか思い浮かばない。
「どうやら、並行宇宙か? 時間軸が違うようだな」
「パラレルワールドと言うのかな? タイムラインが、少し違うんだ」
さらに、話を聞いて行くと、両者は絶対に違う世界の事と分かった。
「これだけの差が有っても僅かな差なのでしょうか?アンベールさんがいた世界は、令和でなく平成が続いているのですよね? ってバカな」
「カトー。アンベールさんって、陛下に失礼です」
「エミリーさん。気にせずとも良いから。良いから。それでどう思えるのかな?」
「答えは、どうやら、多元平行宇宙ということになりそうだですね」
「エェ薄々、そうじゃないかと思っていましたが、しかし日本じゃないのに同じ日本とはね」
「ワシも、この年になって量子力学とか、二重スリットなんて良く分からんよ。量子テレポーテーション技術の原理なんて何かね? おかしいと思うよね?」
「先ほどからのお話と言うのは何ですか? カトーも陛下も、頭大丈夫ですか?」
「あかん、話を戻そうか。そうそう、あの魔石助かったよ。あれで帝都に、防御結界が張れたし」
「では、今度は魔石の・大を置いておきましょうか?」
「あぁ、ありがとう。でも、もういらないな。それと言うのも、ナザールが言うには発生器がもうすぐ壊れそうだと知らせてくれた。あと1回、もてば御の字だそうだよ。それに決壊装置を誰に、直せるという訳でもない。でも気持ちは嬉しい。貴重な魔石なのに、癒しの魔法に使ってくれた方が良いかもしれん。さ、これはここまで来てくれたおみやげだ。ワシなりに、この世界の事を調べて書いてある」
「でも、魔石は置いてきます。やっぱり、アンベールさんも気になっていたんですね。実は、ある論文を手に入れているんです。転生者だと思うんですが。この著者も日本人だったのは間違いないです。カンなのですがこのムンデゥスには随分と多くの日本人が来ている様です」
「やはりそうかも知れん。ワシもそう感じていた。アァそうだった。魔石の礼だった。これに釣り合うものが、すぐには用意できんが、ナゼール、カレー粉以外で何とかしておいてくれ」
「また、こんな時にご冗談とは。分かりました陛下。カレー粉と最高の物をお渡しいたします」
「ごめん、ナゼール。でも、カレー粉は少しだけな」
「エーと、アンベールさん。その文献というのは、惑星ムンドゥスのアレキ文明と言う題なんです。第1部、起源と変遷に関する考察。第2部、大魔法文明の世界観。第3部、文明の崩壊と陸上決戦兵器の背景。第4部、崩壊後の世界と残された遺産という論文なんですが、第1部の起源と変遷に関する考察。第1章ケドニアの起源しかないんです」
「ワシには、時間がないのが残念だ。カトー君、是非、研究を続けてくれ」
「もちろんです。アンベールさんも、そんな弱気にならないで朗報を待っていて下さい」
転移者の2人、自分と遺跡都市で合羽を着ていた。転生者の3人。人型決戦兵器を作った者、ミレアに貰った論文の作者とケドノアの皇帝アンベール。知らないだけで、まだ他に居るのか? 興味は尽きないが、今、帝国にとって重要なのは魔獣の事だ。
「それはそうと、聞けば、要塞からの報告では対魔獣用兵器が有るという事だったが」
「それなんですが、有るにはあるみたいですが、探し当てれませんでした」
「そうか、見つからなかった事は、残念だが、あきらめるのはまだ早いのだろう?」
「もちろんです。アーティファクトなんです。龍の巣にあった、対魔獣用の兵器だそうです。転送ステーションだと思われたドラゴンの巣の場所は、山々に囲まれ急峻な崖の為、今でも人が寄り付く事はまず出来ません。量産された物であれば、倉庫に置かれていたでしょうが、おそらく転送されて他に移されたと思います」
「どこかに、運ばれた後だと言う訳か」
「時間が有れば、魔法の秘密も解けるような気がするんですが。これまでに集めた情報だけでは、どうしようも無いです」
「カトー君とは、もっと前に会いたかったな。色んな謎が解けただろうに」
「陛下、僭越ですが話を、その夢のような、雲をつかむようなとでも言いますか、対魔獣用兵器に戻されては」
「そうですね。アンベールさん、余計な話でしたね。今は、対魔獣戦ですね。対魔獣用兵器は、一つはあるんです。驚かないでください、僕の知っているドラゴンは、その対魔獣用兵器を実装しているんですよ」
「ドラゴン! 実装!」
「実装! ドラゴン!」
「エェ、今は何処にいるか分かりませんが。おそらく、もう暫くすればイリア王国のドラゴンシティの北で、落ち合う事になっています」
「エー、そうなんですか。何とかなりませんか。そのドラゴンの対魔獣用兵器」
「今は何ともお約束できませんが、会う事が出来れば、お役に立てると思います。でも、威力は聞いていませんが1個ですからね。魔獣を完全に排除するには、数がいると思います」
「その通りですな。では、その時には良しなに」
「あぁ、俺からも頼む。カトー伯爵、エミリー少佐、これから公使館で色々あるんだろう、忙しい時にすまなかったね」
※ ※ ※ ※ ※
皇帝府の馬車で、イリア公使館までお土産付きで送ってもらえた。公使館では、伝言で事情は知っていたので直ぐに帝都からの脱出となった。お土産には、10個の箱と皇帝からの紙束が有った。その馬車には、探していた6頭の馬が含まれていたので、同行しているウーゴが予備の馬が出来たと言って喜んでいた。
「カトー伯爵、エミリー少佐も間に合って良かった。あと1日、遅かったら帝都から退去していました」
「オスカル公使、大変だったでしょうね。これが、カシミロ殿下からの退去指示書です」
「了解しました。第一城区に馬車が用意してあります。公使館の14人のうち、8人が先に移動していますし、避難準備も済ませてあります」
「魔獣が、帝都の包囲をする前に出ましょう。途中までですが、同行して些かなりとも力添えいたします」
「オォ、有難い。王国一の魔法使いと言われるような、カトー伯爵に同行頂けるなら、願ってもない事です」
第一城区の事務所に移動し、馬の世話をしていてくれた近くの農夫達に、礼を述べ、幾ばくかの金を渡して帝都の北門から出た。これから、イリア遠征軍本体に向けて4台の馬車は、西へ1100キロはあるだろう道を進むのだ。
「アンベール皇帝は、どうでしたか? 帝都に残られるとの事でしたが」
「そうみたいですね。帝国としてはナゼール宰相が、北のバハラスに皇室と供に移動され、備えられるとの事です」
「やはり本当でしたか。皇帝らしいですね。で、結界の話は出ましたか?」
「えぇ。やはり、かなり難しそうでしたね。残念ですが、あと1回。それも、完全とは言えなさそうです」
「それでは、カトー卿はアーティファクトである対魔獣兵器を探す事が急務となりますな」
「ハイ、およそ600年前のアーティファクトですが、皇帝から資料を頂いたので、この逃避行の目途がついたら探しに行きたいと思います」
「それは、ご苦労な事ですな。ではそれまでご一緒という事でよろしくお願いします」
4台の馬車は、通常より早く1日に80キロ移動している。さすがに初日は移動を続けたが2日目からは土魔法で家を建てている。家の中でも、揺れる馬車の中でも、皇帝から貰った資料には様々な情報が記されていた。だが今は当面必要だと思われる資料を繰り返し読みながら考えていた。どうやら、ヒントは龍の巣と、獣人の里らしい。
帝都からおよそ350キロ、移動する馬車の中で光を感じた。帝都方向から、爆発音が聞こえてきたような気もする。魔核弾頭の2発目なのだろうか?
引き返すことも考えオスカル公使とも相談したが、対魔獣兵器を探す事の方が優先していると決した。4日目には、ここまで来れば一安心と公使達と別れて対魔獣兵器を探しに出る事になった。何十万の魔獣は、あたかも時間を味方につけているようだ。時と共にその数は増える一方だろう。




