花火
その次の日から俺は国葬という名の交流会の準備をすべく動き回った。この催しの本当の目的は人を集め身の回りの人々の確認をすることにあった。
正直なところ俺は恐れていた。死にかけていた俺の元に秋がやってきて生き返ったように、いつか誰かが俺をまた死の淵へと戻そうとするかもしれない。
それを防ぐためにも身の回りの人間の内警戒すべき人間を事前に確認し、また頼れそうな人間を見つける必要があった。
この国の葬儀について調べるうちに、地球で言うところの灯篭流しのような風習があるらしいと判明した。船に死者に見立てた木の像を乗せ火を放ち川に流すというものである。
前の戦いで死んだこの町の住民は10000ほどであるらしいとも確認できたが、さすがに10000もの船と木の像を用意する事は出来ないので1000の船と木の像を用意する事にした。
幸いなことに貯蓄は十分であったので十分その費用はまかなえそうであった。
他に俺は花火を上げようと思ったが、どれだけ人を探してもこの町に花火職人は居なかった。
というよりは花火という概念がそもそもないようである。
俺は考えた末に花火を自作する事にした。
花火の作り方は結構簡単であるのでおそらく他の職人の協力があれば作れるだろう。
そして俺はその後一週間館から一番近かった工房で過ごした。
工房にはダリオンという名の老職人とエリーという名の少女が住んでいた。
俺が葬儀を行う際に使う小道具を作りたいと言ったところダリオンは快く了承してくれた。
話によればダリオンはエリーの祖父であり、エリーの両親は前の戦いで戦死したとのことであった。
ダリオンは寡黙であり、あまり多くを話さなかったがエリーはむしろ珍しい客人に対して興味隠さずに話しかけ続けた。
元々体が弱く学校にもあまり行けず、こういった作業やたわいもない話にあこがれていた俺にとってこの一週間はとてもいい思い出になった。
花火を制作している途中に俺は銃を作ることを思いついた。花火と砲の作りはさほど変わりない、まずは比較的製造が簡単である大砲をこの葬儀が終わったら作ろうと予定した。
今のところ中央政府の人間と会ったことは無いが、その際に多くの提案をし実力を認められればもっと俺の生存確率は上がるかもしれない。
明日は葬儀の当日である。
夜空を見つめながら俺は死について考えた。