第73章
「頼む。悠一朗と一緒にでもいい。いや、こいつにも付き合ってもらうつもりだ。どんなことでもする。だから協力してくれ」
その言葉で辻褄が合わなくなった。僕は状況を見失い、混乱して幸のほうを見たが、目が合うと幸までなぜか耳を真っ赤にして目を逸らした。
小田原は貴ちゃんがこんなことを言いだしてショック状態なのかと思ったら、「あの、私からもお願いします」と一緒に頭を下げていた。
そこで、ようやく僕は気づいた。
「……そうか。みんなも、やり直したことを覚えてるのか」
「ああ。何回も何回も同じ時間を過ごしたのも、変な世界に閉じ込められてもがいてたのも全部、今なら思い出せる」
「悠、い、言っとくけど、私だって全部覚えてるんだから」
「あの、私もうくげっほげっほげほ」
私だって全部覚えてる。幸の言葉の意味がわかり、僕も一気に顔が熱くなった。
あの果てしない繰り返しの中で、もしかすると小田原も貴ちゃんに?
「四条さん、俺は三年前をやり直したい。姉さんが笑って生きてる世界で暮らしたいんだ。だからあんたが知ってること、できること、全部教えてほしい。……頼むよ」
「……大田さん、わたしは、何かを強く思ったり感情が昂ぶったりした時、それだけのことで、世界を歪めてしまうみたいなんです。
生まれた時からずっと、こうなんです。それでいつも考えてて……わたしは、ただ生きていることでみんなに迷惑をかけてしまっている……交通事故まで起こしてしまって、わたし、時々、もう消えてしまいたい、って」
「美弥子さん、事故はもう終わったんです。俺の体も治ったし」
「でも、その左腕、わたしのせいで」
「いいんです。これも。……だから、俺からもお願いします。貴ちゃんに、世界をやり直させてやってほしいんです」




