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第67章

「え?悠、それどういう意味?」

「俺だけは美弥子さんに触れてもリセットされない。ずっと美弥子さんが目を覚まさないってことは、この世界は本当に美弥子さんの夢の中なのかも。仮にそうだとして、とにかく俺はどこかで繋がってる」


「……なんで悠が繋がってるの?何か、やらしいんですけど」

「いや、それは美弥子さんの意識がなくなる時、最後に触れてたのが俺だから、ってだけだと思う」


 その時、貴ちゃんの顔から血の気が引くのを、僕は見た。


 そうだった。僕が最後に触れていたのは。


「ゆ、悠、それだと、夢を見てるのはその女じゃなくて……ひょっとして、この世界に俺たちを閉じ込めたのも……」

「そうなのかも知れない。貴ちゃんの姉さんだ、って可能性はある。おまえに殺人犯として生きてほしくない、って思いがそうさせたのかも」


「……何てこった……姉さん」


 貴ちゃんはその場に座り込んでしまった。貴ちゃんが悲しむ顔を見るのは、三年振りだった。お姉さんが亡くなって以来だ。


 あれから三年もの間、悲しみという感情だけが欠落してしまったように、貴ちゃんは僕の前でも、どこか感情のない機械のようだった。


 幸に背中を押された小田原が、ためらいながらも貴ちゃんのそばに寄り、そっと背中をさすっていた。

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