第64章
「そうか。悠、おまえに妙なものが見えるようになったのも、その女に関わった時だろ?さっき姉さんが乗り移った時だって、女なら別に委員長か小田原でもよかったはずじゃないのか」
たしかに、あの事故現場のガードレールも美弥子さんが近づいた時だけ異常が起きた。美弥子さんが世界にバグを生み出してしまう原因なのか?
というより、この容姿や性格、お嬢様具合から考えて、美弥子さん自身がもうバグだとも言ってしまえそうな気さえする。あまりに完璧すぎる。
貴ちゃんと公園のブランコで話していたことを思い出した。こんな美人がもし、傷ひとつなく生きてこられたのなら、そこには何か普通でない理由があるはず。
第一、さっき男に襲われた時だって、僕らがいなかったら。
「あ、あの大田くん、それって霊とかそういうので言うと、霊媒、みたいな感じなのかな」
「お、メガネのオタク知識出たな。まあ俺が思うには、下手したら霊そのものかも知れんがな」
「えっ、それ四条さんが、ってこと?」
「見た目からして不自然だろ。普通に写真撮ってもCGかと思うくらい……ん」
「貴ちゃん、どうした?」
「その女、体に緑色の部分はあるのか?」
「眼だけな。まあ今の幸も同じ……あ、それなら美弥子さんにも緑色は見えてたはず、なのか?」
「え、あの、桐島くんは四条さんに腕のこと、まだ何も言ってないの?」
「その女は悠を事故に巻き込み、そのせいでバグを植えつけてしまった。だから罪滅ぼしのために、あるいはその直し方を知ってるから、事故の怪我が治ってもおまえに関わろうとしてくるんじゃないか」
「ああ、そういうことなのかもな……」
「悠、すごく残念そうだね。恋愛感情じゃないみたいで」
「そんなことねえよ別に。納得してるんだよ」
僕に胸騒ぎを起こさせ、ここまで連れてきたのも美弥子さんなのだろうか。きっとそうだ。僕は現場からかなり離れたアニメイトの前で、危険が美弥子さんに迫っている、と直感したんだから。
しかし、じゃあこの世界は何なんだ?美弥子さんは世界すらねじ曲げるような力を持ってるのか?




