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第62章

「美弥子さん、聞こえますか?俺、もうどうしていいかわかりません。あなたと話したいです。俺がどこかで間違えたんですか?」


「事故に遭ってから、病院で初めてあなたと会った日、俺まったく眠れなかったんです。こんな綺麗な人見たの初めてで、しかも泣かせてしまって、なぜか撥ねられた自分が悪者みたいな気がして……」


「メイクとか薄いのに、ほんと人形みたいですね。ハーフなんですか?黒髪だし、日本的な美人だなと思ってたんですけど……髪、触ってみてもいいですか」


 もう僕は投げ遣りになっていた。現に今も歩くのをやめ、寝かせた美弥子さんに語りかけ続けている。はたから見れば、僕は体温のない人形に恋する変人だろう。


 美弥子さんの頭を間近で見ていて、ふと艶やかな髪の生え際だけ少し色が違うことに気づいた。黒髪は地毛じゃないようだった。


 僕の手で美弥子さんの目を開かせてみた。右は黒なのに、左眼だけが緑色だった。よく見ると、左眼の周囲が少し赤くなっている。男に殴られたのか。どうも、その時に取れたのかも知れないが、普段の黒のほうがカラーコンタクトらしい。


 なぜ美弥子さんはわざわざ日本人らしく振舞うのか?僕はおそるおそる、傷つけないよう、左眼に少しだけ触れてみた。




 青空。




 青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。

青空。青空。青空。青空。青空。




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