第60章
「……だって、だって、悠の一番はいつも私じゃないんだもん」
「それ、どういう意味だよ?」
「私が、私が勇気出して、好きな人いる?って訊いた時だって、悠はさ、大田くんのお姉さんが好きだからって言ったじゃん。結婚するって言ったじゃん」
幸は肩を震わせ、ぽろぽろ涙を零し始めた。くしゃくしゃに崩れた表情がたまらなくて、僕は幸を抱きしめてしまっていた。嫌われたってどうせリセットされるだろう、という最低な考えから生まれた行動だった。
「そんなの、小学生の時の話だろ。本気にすんなよ」
「だって、だって……」
「……この世界もまたリセットされると思う。今の幸の記憶も消えてしまう。だから俺、今すげえ汚いことやってる。ごめん」
「私、悠のこと忘れないよ?忘れたくない」
「……幸、キスしていいか」
「え……うん、いいよ。
でも、今だけは、私だけ見ててね」
青空。
幸がほんの少しでも覚えていてくれるかと思い、期待と気まずさの両方が心にあった。でも、やはり覚えてはいなかった。
罪悪感がひどく、もうあんなことはしないと決めた。
東も行き止まり。西へ向かう。
青空。
入れる建物を調べてみる。
青空。
美弥子さんを強めに叩く。反応はない。幸が触れてみる。
青空。
青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。青空。




