第58章
これは確実に貴ちゃんのせいだ。ばか野郎。だって他には誰も触れようがない。腹が立った。
でも、落ち込むよりは怒りのほうがましかも知れない。さすがに貴ちゃんがそこまで計算してやったとは思わないけど。
貴ちゃんと小田原の見えない組をワゴン車の前で待機させ、僕と幸で探すことにした。考えてみるとすごく気まずそうだが、それならこっちだって負けてないな。
「悠、ごめんね。私、まだちょっと整理できてなくて。正直、混乱してる」
「俺も混乱してるし、みんなに何回も説明してるせいで、何かを言い忘れててもわからないんだよ。だから、二人には動かないでいてもらうんだけどな」
「四条さん、起きそうにない?」
「……今んとこ、まったく気配もない」
「て言うか、悠、やらしい」
「は?何が?」
「だってそれ、体の感触とか、楽しんでるんでしょ。はあ、ほんと男ってそういうとこが」
「ちょ、ちょっと待てよ。だって第一、俺以外が触れたらリセットなんだし」
「でも、だったら別に連れてくる必要ないじゃん。車で寝かせといてあげればいいじゃん、重いでしょ」
幸が正しかった。僕は頭が回っていないのか、それとも幸の言う通り楽しんでたのか、置いてくるという選択肢が自分では浮かばなかった。
一旦戻って、くれぐれも触れないように、と二人に注意してから美弥子さんをワゴン車の後部座席に寝かせ、再出発。
「ねえ、訊いていい?」
「……何だよ」
「四条さんのこと、好きだよね?」




