第57章
「なあ、小田原。俺さ、貴ちゃんがあそこまで戻ったのは、小田原のおかげだと思ってる」
「私なんかが?えへへ、そんなわけないよ。だってさ、私なんて」
「小田原。小田原、聞いて。貴ちゃんさ、高校受験の時、俺がいくら一緒に高校行こうぜって言っても、俺は中卒でいい、って突っ跳ねたんだ。
でも結局は出願しててさ、その時に言ってた。オンラインゲームやってるんだけど、なんかひたすら励ましてくれる熱い奴がいて、気がついたら高校行くことになってた、ってさ。本当だぜ」
「……へえ、桐島くんも、ずっと優しいままだね」
「嘘じゃねえよ。嘘なんか言ってない」
思わず大声で怒鳴ってしまったせいで、小田原は怯えたように後ずさりした。
「……ご、ごめんなさい、卑屈で」
「ごめん。今のは俺が悪い。……だから小田原には感謝はしてるけど、謝ってほしいことなんか俺にはないから。できたら、これからも力になってやってほしい」
「……うん、私なんかでいいなら。あーあ、なんで私、こんななのかな。ブスって損だよね。性格まで歪んでるし」
「俺も貴ちゃんも、小田原のことをブスだなんて言ったこと一回もないよ。この間うちで久し振りに会った時なんか、可愛くなってたよな、って二人でびっくりしてたもん」
「げっほげっほげほ、そ、そんなことないよ全然」
「もうちょっと自信持って、ぐいぐい行けよ。クリアできるかも知れないぜ、貴ちゃん」
その時、後ろから幸の呼ぶ声がした。一人で小走りに近寄ってくる。
「なーんだ、二人とも全然進んでないじゃん」
「色々あったんだよ。で、何かあった?」
「……世界が途切れてたの」
「え?」
「大田くんがね、この世界は走っても疲れない、とか言ってどんどん進んで行くから、私も追いかけてたんだ」
「ばかだな、あいつ」
「そしたら、しばらく行ったところでもう緑に覆われて進めなくなってて」
「貴ちゃんは?」
「携帯で撮影してから追いかける、って」
青空。




