第56章
小田原は話しているうちに泣きだして、会話もかなり混乱したが、内容はこういうことだった。
小学校でいじめから自分を守ってくれた貴ちゃんを、小田原はずっと好きでいて、貴ちゃんが当時遊んでいたオンラインゲームのアカウントを僕から聞き出し、男の振りをして近づき、ずっと一緒に遊んでいたらしい。ゲームなんてほとんど知らなかった小田原にも、貴ちゃんは優しく教えてくれた。
かなり親しくなってから、少しずつ現実世界の話もするようになっていって、貴ちゃんが変わってしまった理由を聞かされた。
小田原は貴ちゃんの傷に触れてしまった罪悪感に襲われ、でも何とかして貴ちゃんを支えたかった。
幸が僕のほうに勉強会を提案したのも、半分は小田原を思ってのことだった。僕の邪推も、まあ当たっていたらしい。だから必死に努力して、綺麗になった精一杯の自分を貴ちゃんに見てほしかった。
「……だから、四条さんを初めて見た時は私、びっくりしたなあ。すっごく綺麗で、黒髪で、聞いてた大田くんのお姉さんに似てたから……んん、今でも思うもん。四条さんに大田くんを会わせたくないって。
最低だよね、彼女でも何でもないのにね。でも、その寝顔見てるだけでもわかる。私なんか絶対かなわないよ……」




