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第51章

 この世界のどこかに、元に戻る何かがあるはずだ。確証はないが、そう信じるしかない。


「前は大学の門の前で、緑色で入れなかったから立ち止まったんだ。


それで、貴ちゃんが美弥子さんを叩き起こせば何とかなるかも、って美弥子さんの手に触れた瞬間、俺は一学期の昼休みに戻された」


「なあ、緑色に触れたらだめ、ってのは確かなのか?」

「……正直、わからん。まだやってない」

「じゃあ、試してみるか」

「いや貴ちゃん、ちょっと待ってくれ。戻されたら、また半月も繰り返さないといけないんだぞ」

「でも、その間の記憶はないんだろ」


「……けど、かえってそれが怖いんだよ。自分がのうのうと同じことを何回も、気づかずにやってるなんて」

「そうだとしても、また戻って来れるんなら手当たり次第にやるしかないんじゃないか?」

「それも確かじゃない。下手したら、この世界ごと消えて死ぬかも知れない。わからないんだ」


 女子二人は動揺しているし、話について来れるはずもなかった。


 貴ちゃんの理解が早すぎるのだ。いつも二次元に生きてるからか?と言うより、現実を生きていないのか。


「……仕方ないか。そうだよな。貴ちゃん、やってみる」


 覚悟を決め、僕が手近な緑に触れることにした。それは建物の壁。




青空。……




 ……美弥子さんは糸が切れたように僕にもたれかかってきた。




「なあ、貴ちゃん、この状況、初めてか?」


「……ん?どういう意味だ?」

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