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第31章

 美弥子さんが帰り、女子二人は溜め息をついていた。有名な女優と会ったような気分なのだと思う。


 しかも、女優だと実際の態度にはがっかりさせられそうなものだが、美弥子さんは違う。


「四条さん、ほんと綺麗だったね。悠なんかずっとにやにやしてたし」


 自覚できていなかったが、本当に幸の言う通りなのだと思う。


 勉強の切りがついたところで、僕らも解散ということになった。


 玄関まで三人を見送ろうとしたら、貴ちゃんが僕を呼んだ。二人で家の近くをぶらぶら歩きながら話をしよう、という意味だ。


 なんだか昔に戻ったような感じがした。小さい頃、別れ際にはいつもこうしていた。


「おまえが言ってた緑色の情報、見つけたぞ」

「ほんとに?ネットとか?」

「そう。掲示板に昔から出没してる野球ファンのおっさんの話なんだが、そいつは球場で選手が緑色に光ってたのを何回も見てるらしい。その緑の選手は必ず活躍するとか。期間限定で」

「期間って、光ってる間だけってこと?」

「そうらしい。予言が間違いなく当たるから、確変のおっさんと呼ばれてる。ただ、実際そいつが書き込む文章自体はおかしいんだよな。何て言うか、頭に問題がある感じの」


 その人も頭を打って、見えるようになったんだろうか?僕もいずれそうなるのか。不安に駆られた。


 それに加え、この緑色が人体に居つく意味。やはり霊的な何かだと考えるべきか?現に僕の左腕にも、自分のものとは思えない力がある。


「貴ちゃん、前も言ったけどさ、やっぱこれ霊とかそういうの……なのかな?」

「何とも言えないところはある。特定の人間にだけ見えるってのも、正直言って見えない俺にとっては信じがたいし。実際に見ないと何とも、ってとこだな」

「うん……幸にこの左腕が緑色に見えたのも、幸の眼が緑だったのも結局、あの時だけだったんだ」


 貴ちゃんは親友だ。これまでも、二人の間に嘘はなかったと思う。しかし、そもそもこんな非現実的なことを信じてもらおうというのは無理なのかも知れない。


 公園まで来てしまって、僕らはブランコのそばで足を止めた。昔よく遊んだブランコが、もう今は低すぎた。

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