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第30章

「こんにちは。悠一朗さんの具合は如何かと思いまして伺ったのですが……ふあ、みなさまお勉強中みたいで、お邪魔してしまってすみません」


「おー、また出たなリアル天使」

「貴ちゃんやめろって。あ、こんちは」

「え、こんにちは……え、え、ゆ悠、この人、モデルさん?」


「初めまして。わたし、四条美弥子と申します。聖沢大学の一回生です」


「あ、は、初めまして私桐島くんの同級生で小田原と言いますよろしくお願いします……幸ちゃん幸ちゃん、私こんな綺麗な人初めて見たよ」


 やはり女子もこういう反応になる。


 今日の美弥子さんの長い髪は緩く編んであって、そこがいつもと違うけれど魅力は少しも変わらない。


 ただ、貴ちゃんだけは大した反応もしないで、美弥子さんにも平常の接し方をしている。かえってそれが不自然だ。そう言えば初対面の時もこんな感じだった。




 妹が美弥子さんの座布団に続いて西瓜を持ってきたと思うと、僕の背中を拳で叩いて去って行った。痛えな。


「みなさま、受験勉強なんですね。わたしも去年の今頃はどきどきしながら勉強してました。ああ大学ってどんなところなんだろう、って」


 美弥子さんは自覚してなさそうだが、その言い方だと合格した後のことしか考えていないような感じがする。


 そして西瓜を食べ終えた美弥子さんが指を少し舐めたのを僕は見逃さなかった。可愛すぎて頭がおかしくなりそうだ。しかし隣に幸がいるので、何か気まずい。


 今日の美弥子さんはやけに饒舌で、会話は彼女を中心にして質疑応答のようになっていた。


 程なく、「もしよろしければ、みなさまでオープンキャンパスにいらしてはいかがでしょうか?早いほうは八月の三日と四日にありますし」と美弥子さんが口にしてしまう。


 二人きりで大学を案内してもらえる、という淡い期待は崩れた。


 しかしまあ、どうせ二人きりではうまく行かないだろう。浅はかな考えだった。

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