第29章
「で……あのさ。なんで二回連続で俺んち集合になったんだっけ?」
「だって、やっぱり四人で集まれるっていうの、けっこうハードル高いんだもん」
「ご、ごめんね。桐島くん、次はうちでできるようにするから」
「まあでも昔から、悠の母上様は器大きいよな。ほんと……あら」
「はーい。貴ちゃんが褒めてくれたところで、母さん西瓜切ってきちゃいました。ささ、どうぞ」
「計ったようなタイミングだな」
皆でやるから、僕も何とか続けられている。しかし勉強というのは本当に地味な作業で、これを自主的にできる人の思考がどうなっているのか、僕には想像できない。
おそらく机の上でしか使うことのないであろう知識を、僕達は無限に詰め込んでいく。世界史なんて、それが本当にあったことかもわからないのに。
玄関の呼び鈴が鳴ったのに気づき、僕の意識が外に戻った。
勉強会も多少だれてきて、しばらく無言が続いていた時だった。
「はーいはーい、今開けまーす」
さっき遊びから帰ってきていた妹の声と、階段を下りる足音。ちゃんとインターホンで確認したのか?
と思っていたら、「悠兄、美弥子さんだよ」と呼ぶ声がした。
唐突な訪問。僕は動揺、「今日、来るって言ってなかったよな……」と無意識に呟いてしまっていた。
それでさらに慌てて立ち上がろうとしたので、幸が「え?誰なの?」と怪しむように訊いてくる。
「あの、この前言ってた、事故の……」と僕が中腰の姿勢で言いかけた時、ドアが開いた。




