第23章
受験生にとって夏休みは大事な時期、体調管理に注意せよ、問題など起こさぬように。
といった内容を教員が長々と喋り続けていたが、終業式なんて行う意味があるのだろうか?大事なはずの時間を消費して。
口うるさく言えば子どもがその通りになるのなら、世界には神様しかいなくなるはずだ。
といった内容を、歩きながら、久し振りに帰りが一緒になった貴ちゃんに話した。
返事は「悠は今でも熱いよな。俺そういうの、もうどうでもよくなってるわ」とやる気がない。
「悠みたいなのが教師やればいい気もするんだけど、変に正義感みたいなのがあったらあったで、嫌になって結局やめちまうんだろうな」
貴ちゃんの言いたいことはわかる。しかしそれを認めては、日本の行く末があまりに暗すぎる。
「じゃあ大田くんのほうが、教師に向いてるかも知れないね?やる気も正義感もぜーんぜんないし」
後ろから声がした。いつも通りの鬱陶しい喋り方。こいつこそ教師に向いている。
でも考えてみると、幸は幸なりに、うまく割り込む頃合を見計らっていたんだろう。
「うお、出たなツンデレ委員長」
「はい?何それ。大田くん、勉強会の話、もう聞いてるよね?」
「聞いてるけど、まじで俺も行くの?委員長様は悠と二人っきりがいいんじゃないの」
「な、そ、意味わかんない。て言うか、私のほうだって結華も呼んでるし。大田くん、ちゃんと勉強する気あるの?」
貴ちゃんがちらと僕の表情をうかがいつつ、話を続ける。
「大丈夫。やる気あるある。シャーペンの芯とお菓子もいっぱい買っといたしな。それで、どこでやるの?」
「うん、私は市立図書館が良いんじゃないかな、って」




