表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/77

第18章

「いた、痛いよ、やだ、もう……許して」


 幸の声が震えていて、やっと僕は変な誤解をされていることに気づいた。


 僕はあまりに動揺していたせいで、無理やりキスを迫るみたいな感じになってしまっていた。肩を掴まれた幸は首筋まで真っ赤になって涙目。


「ごめん。いや絶対何もしないから、俺の眼を見て。頼むから」


 幸がおそるおそる僕を見上げると、たしかに右眼だけが、僕の腕と同じ深緑色をしていた。


 この緑には何かある。そう確信した僕は、空のことを思い出し「幸、じゃあ今度はあっちを見て。あのマンション二つの隙間」と指差した。


「悠、それ昨日も言ってたよね。あの……そっち見てる時に何かしたりしないよね?」

「何かって何だよ」

「はっ、べ別に」

「マンションの間だからな。ちょっと見てろよ、えーと……あと1分くらいで見えると思うから」


 僕は携帯電話で時刻を確認しながら、いつものように空が裂けるのを待った。今日は二人で。


 もし幸にも見えたなら、これは何か運命的なことなのかも知れない。運命?そういう考えが浮かんで、また僕は僕がわからなくなる。


 幸にも見えてほしいのか?僕は。あの緑色が、二人だけに。


 もう一度時刻を確認しようとした時、幸が「な、何あれ」と甲高い声をあげた。幸が驚くのは当然のことだ。


 しかし、もはや僕に新鮮な驚きはない。その世界の異常に、僕は体の一部分まで蝕まれているのだから。


「幸、右眼つぶってみて。たぶん緑、消えるから」

「うん。え、あれ、消えた?」

「じゃあ今度は左眼」

「あ、また見える……ぼんやりしてるけど。何なの?悠、何これ」

「それは知らねえよ。けど俺にもあの緑色は見えてる。この腕の緑色だって、今までは誰にも見えなかったんだ。俺以外には」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ