2話、王様から話を聞く
「おおっ、勇者だ!」「勇者が現れたぞ!」
「これはすごいことだ・・・」
勇者だ勇者だと騒ぎ立つ声。
一体ここは・・・
「勇者様!ようこそおいでくださいました!」
目の前には、金髪でドレスを着た少女がいた。
見ただけでも王女様だと分かるような、豪華な出で立ちだな。
俺と王女を取り囲むように、周囲には階級が高そうな人や占い師っぽい人や兵士が立っている。
心臓がバクバク鳴り始める。
「どうも」
「こちらでお城の者とともに、勇者様が来るのをお待ちしていました!
私シャルーネと申します」
「僕は、リュウです」
「リュウ様、我々のために異なる世界から赴いてくださって感謝します。
どうぞどうぞこちらへ、国王様が待っています」
「はい・・・」
何も言える雰囲気じゃなかった。周りには大勢の人がいて、王女様がすごい笑顔で俺に話しかけてくるし。
そのまま俺は国王様のところまで案内される。
兵士たちが並んで大勢配置されて、レッドカーペットの先に国王様が一番で座っている。
俺は国王様の前までつれてこられたが、困った。
こういう場合、相手は王様なんだしひざまずいたりしたほうがいいのかな?
よく分からないので立っていることにした。
「勇者よ、よくぞ来てくれた。感謝する」
「ありがとうございます・・・」
感謝するってありがとうって意味だよな。ありがとうってのにありがとうって言っておかしかったかな?
でもなんかこういう場合ってありがとうって言ってしまうんだよな。
「事情を話そう。これまで世界を脅かしていた『旧魔王』が一ヶ月ほど前に勇者によって倒された」
ん?勇者がもう一人いるのか?俺だけじゃないのか?
「しかし、一週間前に占い師が新たな魔王の出現を感知してな。しかもその魔王は旧魔王よりも強い力を持っているという。勇者は『新魔王』と戦うための準備をしている。
そして最も大きな懸念、それは『闇の勢力』が各地で活動していることだ。闇の勢力の目的は恐らく『邪神』の復活を見て間違いない。
事態はとても重苦しいものだ。
転生勇者よ、現生勇者と協力し世界を救ってくれ」
俺が転生勇者で、元からこの世界で勇者となったのが現生勇者か。
新魔王と邪神か。とてもやばそうだな。
「旅の支度のためにわずかだが金を用意している。使ってくれ」
国王の側近らしき人が近づいてきて中身の入った袋を手渡す。
「勇者よ、頼んだぞ」
やっと動いてもよさそうな雰囲気になったな。大勢の人からジッと見られるのは非常に気が落ち着かない。
俺は国王様に礼をすると気持ち早めに歩き出した。早くこの場から逃げ出したい。
さっきからずっと心臓がドクドクと言っているのが鳴り止まない。
大勢の人から見送られながら、俺は城を抜け出た。