夏祭り
8月ももう終わりまして、なぜに今更と思うかもしれません。遅れてすみません。
「パパ!ここでいいの?」
エリーが机の隣に椅子をおく。
「いいよ、ありがとうエリー。お礼はあとで持ってくよ」
今日は一年に一度の夏祭りである。
この街の夏祭りは、国内でも有名でこの時期になると多くの観光客が旅をしてやってくる。
お祭りは、夜からで街のメインストリートは多くの住民が出している出店で埋まる。
この街の住民ならば、領主様に許可を求めればよっぽどのことがない限り出店の許可を出してくれる。
それだけではない。
ある程度の物は領主様のご好意により、貸し出しが行われている。太っ腹である。
そして俺も、今年は『ノグサ』の近所の人と一緒に合同で出店を出すことにした。
夜には、エリー面倒をどちらかが見ることになるので、一人で店の客をさばくことになる。
いつもなら、それも可能だが今日は夏祭りである。客も沢山来るだろう。
一緒に出店してくれるのはこちらとしても都合がよかった。
「ミハエルさん、おはようございます。今日は晴れてよかったですね。今年は綺麗な花火が見られますね」
「そうですね。去年は雲で花火がよく見えませんでしたからね」
声をかけてきたのは、お隣のポーロさんである。年も結構近いので、なにかと馬が合う。
もちろん、今年の出店も一緒に出店するメンバーの一人である。
その後は、他のメンバーも合流して準備を進めた。昼にはマリエルの持ってきてくれた、ご飯を食べて昼過ぎくらいに準備は完了した。
少しずつ日も傾いてきて、出店のある大通りは人が増えてきた。今年は例年よりも多いんじゃないか?
「おつかれさまでーす。材料持ってきたぞ」
声をかけてきたのは、俺の元パーティーメンバーたちである。材料の用意を頼んでいたのである。今回俺たちが出すものは、「ノグサ」の商品の一部と肉である。しかし、ただの肉ではない。約半年かけて作り上げた特製スパイスをかけるのである。売れてもらわなきゃ困る。
何度実験用の素材を取りに行ったことか…
徐々に暗くなってくると、人通りも増していく。多くの人の目当ては暗くなってきてから、行われる花火というものだが出店目当てでくるものも増えてきている。花火とは炎の魔法を打ち上げた後に、他の魔法などと空で混ぜ合わせたものらしい。バレウスに詳しいことを教えて貰ったのだが、俺にはここまでしか理解できなかった。
「いらっしゃーい」
どこからか、客を出店に集める声が聞こえた。
するとそれを合図とするように、様々なところから客の呼び込みが聞こえてきた。
「俺たちも始めるか!」
俺は『ノグサ』の売り物棚の脇の椅子に腰掛ける。俺はこっち担当だ。俺以上の適任者はいないはず。
「いらっしゃーい!おいしいお肉だよーー」
メインの肉担当は、基本的には俺以外の大人たちである。もちろん俺の元パーティーメンバーもである。
俺と一緒に作業をしてくれるのは、子供たちである。エリーも近所の仲のいい友達を誘ったようで、子供は全員で3人だった。
子供たちは最初は張り切って頑張ってくれるのだが、すぐに飽きてしまい人混みの中に入ろうとしてしまうので、ここで肉担当のマリエルが3人を連れて、出店を周りに行った。
「肉完売でーす!!」
ダニが大きな声をだした。
嬉しいことに肉は完売したようだ。
なかなかに人気だったようで、花火が始まる前にはもう売り切れていた。
売り上げも黒字ということで、大満足の結果である。
こちらはというと、持ってきたものはいつもよりもちょっと売れたかなーぐらいだった。
しかし、嬉しいことに貴族の依頼が入ったので満足できる結果となった。
パッーン ドーン
大きな音がして空を見上げると、上空には大きな花が咲いていた。花火が始まったようだ。
あちこちから歓声があがる。
「おつかれさん。ほら食えよ」
肉を焼き終えた鉄板で軽く調理した野菜や肉を食べながら、花火を見る。
「花火きれいだね!」
「うん。そうだね」
「来年もまた、エリーとパパとみんなでみたいな!」
「そうだね。またみようか!」
そう言って、エリーは膝の上に乗ってくるが朝から準備と疲れたようで、眠ってしまった。
確かにみんなでまたみたいな。
そしてまた時は巡る。