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俺、神様になりました。  作者: 商 秋人
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最終回 日常への扉

ラミアが泣き止んだのは、外が夕焼けに染められ始めたぐらいの時だった。


「す、すみません。てっきり死んだものかと……」

「まぁいろいろあって……」

「よ、良かったです」


ラミアの赤面した姿が目に入り少したじろぐ俺

そんな光景をみながらラミアの姉がからかったかのような声で声を掛けてくる。


「おいおいお二人さーん。なに二人の世界にはいってんの?」

「えっ!?」

「あ、すみません」

「はぁ……ラミアちょっとこっちにこい」


ちょいちょいと手招きするラミア姉

おいおい、急にどうした……


「……に…………行か………う?」

「え!?」

「サ………イズ……な?」

「……わ、わかりました」


ラミアよ。

ちょう聞こえてるぞ、何がわかったんだい?


「亮太さんっ、とりあえず行きますよ!!」

「え? どこに?」

「リア達のところです!」

「あ、なるほど」


そうだな。

ゆっくりするのもいいが、今は向こうを安心させたい。

ラミアは俺を死んだと勘違いしてたんだ。

多分リアやエルタ、師匠やナラマ様もそう思ってるだろう。


「で? どこにいるんだ?」

「……さっき別れたばかりなので近くに居ると思いますが……転移してたらちょっと……」

「うげ」


向こうは魔術を全快で使えるんだ。

どれだけ速く移動できるか……考えただけでたまったもんじゃない。


「お姉ちゃんは亮太さんが捕まったのを紙にして貼り出してください」

「んー了解」

「私は先程の書類を用意しておきます」

「……で? 俺は?」

「そっちもさっい言いましたよ」

「とりあえず行ってください、亮太さんっ」

「どこに?」

「街にです!」


街にでるってなんで?


「なんで?」

「なんでもです!!」

「ラミア会ったばかりでなんだけど……」

「なんですか!」

「ビックリマーク多くてなに言ってるか分からんよ?」

「なんですかそれ!!」


なんだろうこれ?



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そんなビックリマーク多めのラミアに無理やり追いやられ、現在……久しぶりによく泊まっていた宿屋に来ていた。


「あ、おっちゃんだ」


俺は、筋肉隆々の宿屋店主に挨拶する。

ちなみにこのおっちゃんが好きなものは妻と娘だ。

とってもいい人である。

これ昔言ったけ?


「お、犯罪者じゃねぇか」

「ひ、ひどい返しだな……」

「事実だろ?」

「まぁ山壊したのは悪いと思ってます」

「ふっ、俺はかまわぁしねぇよ。かんけぇねぇかんな」


相変わらずいい人でよかった。

俺がこの国で犯罪者でも対応が変わらない。

こういった人柄が、この宿屋が人気の秘訣なのだろう。

人気かどうかは知らんが……


「それより、捕まったって聞いたが大丈夫か?」

「……なんかなんとかなったよ」

「冒険者は辞めたのか?」

「まぁ、もうする気はないな」

「お金はどうする?」

「まだ考えてない」

「ふーん。そうか……」


質問攻めだな。

こんな喋る人だったけ?


「そういうえば……なんでここに来たんだ?」

「ん? あぁ」


ここに来た理由ね

別になんの気なしに来たわけだが。

多分誰かと喋りたかったんだろうなぁ、俺。


「誰でもいいから喋りたかっただけだよ」

「……そうか」


俺は、一区切り会話を終わらす。

やや会話を一区切りするタイミングが悪いとも思ったが、話しててやりたいことを思い出した。


ばたりとドアを開けて空を見る。

その空を見つめながら、ポツリとつぶやく。


「行くか……」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



俺が来たのは、商業区だ。

……あってるよね? 区画の名前?


「相変わらず騒々しくて楽しいな」


行き交う馬車が、地面にある小さな岩や、石を車輪で踏みながら進む。忙しそうな商売人達が、そこかしこで呼び込みをしている。


「どこに売ってたかなぁ」


俺が探しているのは、始めにリアにあげたネンドロイド風エルタ姉を売っていた店である。


「あれ?」


記憶を紐解きながら、歩いていると一人見覚えのある女の子が歩いていた。


「……これ一つ下さいっ」

「まいど!!」


綺麗な金髪と蒼い目が目立つ、小さな女の子が背伸びしながら野菜(多分じゃがいも)を貰い、お金を渡す。


「……メルだ……久しぶりに見たな……」


メル……

俺が半日だけ師匠をした少女である。住んでいる所はカルマニア王国である。

そして、リアのいとこ。

マクスウェルの孫である。


それにしても……まったくもって変わらない姿をみて安心する。

3週間しか経ってないから変わる変わらないもないとおもうけど。

 話しかけてみるかっ


「おう、久しぶりっ」

「ん?」


少女は振り向くと、少しだけ瞬きをする。

周りの喧騒が、少し大きく聞こえるぐらいの沈黙が流れて、メルが声を上げる。


「リョータ?」

「おうっ」

「………」

「お?」


バチコーン!!

気を失いました。



ーここからはダイジェストでお送りしますーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


メルに殴られた。

理由は心配かけたから。

なんでぇ?


まぁ、そんな殴られたのち、リアの親父が会いに来た。

そして謝られた。

君を少し試すつもりだったんだが、本日に申し訳ない事をした……それと、君をなめていたとも……言ってくれた。

あと、娘を救ってくれてありがとうとも言われた。


メルはそんなお爺さんにプンスカ怒っていたが、俺が許したので、少女もあきらめていた。


俺が魔術を、使えなくなったことは一応言った。

そんなに話は広がらなかったが、なんとも言えない表情をしていた。


その後家の場所を教えて貰ったがすぐに別れて、欲しかったネンドロイド店を探しに行ったが、もう移店したらしく行けなかった。


泊まる場所は王城で寝ることになった。

それに伴ってラミアの父母に挨拶した。

すっげー場違いだった。

結果余った部屋を貸してくれた。

すっげー場違いだった。


そんな感じで、街を歩き、いろんな知人と話ながら、毎日を過ごした。



そしてそんな日々が一週間続いた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その日俺は、王城のリビングに呼び出された。

衛兵はいないが、俺の大切な人たちがそこにいた。


「……い、生きてた……本当にっ」

「あ、まぁ……」


リアとエルタ、ナラマ様と師匠

……あと何故か歩

全員が集まった。


「はいはいっ!! そのムードもういいから!! さっさと発表します!!」


まぁ、ラミア姉によって悲しいムードは根絶されていた訳だが


「おいおい、せっかくの再会をぶち壊すなよ」


師匠、あなたのその喋り方がすでにムードをぶち壊しております。


「なんのはっぴょう?」


顎にてを当てた、頭の良さそうな仕草をするナラマ様。

もうっ、ナラマ様は変わらず可愛いな!


「それは、ラミアあなたから説明しなさい」

「え、なんで?」


え? なんで関西弁?


「あなたが準備したんだから当たり前でしょ」

「あ、あぁ……わかりました」


おほん、と咳き込んだあとに意を決したように口を結ぶ。


「ふー……よし」


……


「ここのみんなで、学校に行きませんか!」

「は?」

「ん?」

「はい?」

「?」

「え?」

「……うん?」


え、あえ?

学校? 学校?


「「「「「「「えっ、

   この世界に学校あんの!!」」」」」」


「ありますよ!! ていうかなんでこの世界出身のあなた達も知らないんです!!」

「「気にしたことがない」」


リアとエルタが口を揃えて言う。

君たちなんだかんだ言って仲いいよね。


「ほら、とにかく一週間後に転入する手続きしたので、さっさと準備してください」

「おぉ……でもいいのか? お金とか」

「ふふ、私はお姫様ですよ。これぐらいちょちょいよちょいです」


うわ、姉にそっくりだなこの妹。

ラミアにもそういった一面があって少し安心したが……


「ほらほら行きますよっ。もう馬車も用意していますし、ほらほら」

「ラミア全力ですね」

「リア、よく見ろ。目元」

「あ、スッゴいクマだ」


にしても、学校か

だいぶ楽しみだな


「ほらいくよ? りょうた」

「ん? あぁ」



ラミアが皆を先導して、リアとエルタが話喧嘩しながらついていく。


そんな目の前の景色はとても美しく……

俺は生きててよかったともう一度強く思った。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



この物語は、主人公になりたかった少年が、主人公になった物語だ。

だが、主人公になった彼は、そんな自分の夢より強く願ったのだ。

彼女たちと一緒にいたい。

彼女の涙を見たくないと……


そして気づいたのだ。


主人公なんてどうでもいい


誰かと一緒に楽しく生きれればそれでいい



それぐらいでちょうどいいのだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ラミア……眠い。学校行きたくない」

「エルタっそんな事言ったら亮太にきらわれるよっ」

「うぅ……大丈夫。亮太は心が広い」

「もぅ!!」



「なぁ、生徒会長ってカンナにそっくりなんだが……」

「かんなってあなたでしょ?」

「いや、私が探してた人」

「きいてみれば?」

「……もし違うかったらどうするだよっ。恥ずかしいだろ!」

「いまさらかまととぶってんじゃねぇよ」

「ん? なんか言った?」

「……いや」



「私って最後まで空気でしたね。亮太さん」

「いや、そんなことないって」

「だって、もうみんなに、見えるようになってるのに王城の時だれも声掛けてくれませんでしたよ?」

「……あぁ、まぁ……うん」

「それも否定して下さいよぉ」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



それぐらいで……ちょうどいいのだ。




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