物語は終わっていない
エルタ・師匠サイド
「はぁ、なぜこっちの方が難しいんだ……」
隣にいる亮太の師匠(および私の師匠)がため息を吐き、憂鬱そうにそう呟く。
それとは関係なくわたしは別の事を考えていた。
……リアと一緒にやるはずなのになんで俺様はここにいるんだ?
いや、理由はわかるが……
姉が、あれ?私の出番は?的な事を言ったあと、リアが「私一人でゲートを作るので、亮太の師匠さんの補助してください」て言ったのが理由な訳だが
上を見ながら一人思う。
よく一人でできるなー。
正直、初期設定(本当に作者が考えてた事の方の意味)は神最強のはずの俺様が霞んで見えるぜ
まぁでも、俺様が補助しなくてもけっこうなんとかなりそうだな。
……ただ一人チャラ男が『えーー、せっかく二人の珍しく連携してるとこ見れると思ったのにー」なんて場違いなことを言っていたが。
モノローグ説明終了
「なんか言ったっ!!!?」
「なんでもなーーい!!!」
そう返すのを見ながら、私自身の準備を始める。
タイミングは師匠が合わせるらしいので俺様は自分のタイミングでやればいい。
「あ、そうそう、エルタ、お前姉と話さなくてよかったのか?」
「……俺様は、別に今じゃなくてもいいかなって思ってるだけだ」
「ふーん。まぁ弟子の家族にどうこう言う程私もお人好しじゃない……けど、そうも言ってられないんじゃないか?」
「世界が壊れるからか? だから今こうやって、」
「いや、そうじゃなくて」
あ? 何言ってるんだ?
てっ!?
「うぃーす、エルタちゃん。私だけやることないから来ちゃった」
「……まじか……」
……いや、今からやることがあるんだ。
どっちにしろ話すことはできない。
「ちょっとまっててくれ、世界救った後に話すから……」
「うん。待つよ。その代わりちゃんと話してね」
「……あぁ、当たり前だ」
「ならよし」
「じゃあ、もうそろそろ無にするの外殻まで達する頃だ。ちゃんとすんだぞ」
なんなんだ。
この時間。
意味あるのか?
……いや…………
意味はともかく……
覚悟はついたな……
「んじゃいくぜっ!!!」
「さっさと終わらせて恋ばなするわよーっ!!」
「ふぇ!!??」
とりあえず、俺様は世界を救う為にこの世界の魔力を転移させた。
だが、それは世界を救うと言うには、あまりにゆるく……楽しい瞬間だった。
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よし、じゃあもうそろそろ俺の出番だな。
補助として、しっかりと仕事をさしてもらうとしよう。
その瞬間、大きな地震が起こる。
星を真ん中から消しているんだ、これぐらいの揺れ当たり前だ。
そして、その揺れを合図に、俺は魔力を流し込む。
やり方は俺が死ぬことをつたえられた時に教えてもらった。
「さてさて、俺も本気出しますかっ!!」
俺は地面に手を当てて、魔力を込める。
俺の役目は実は歩に魔力を与えるだけじゃない。
俺の役目は……普通の人間に魔力を与えて、転移に耐えられるようにする。
普通の転移は、魔力保持量関係なくできるが、それはこの世界が魔力に満ちているからだ。
宇宙にそんなものはない。
だから、元からある程度持たさなければならない。
だから、魔力を送らなければならない。
だから俺は……
「本当にこれでいいんだよな……俺……」
光の粒子が、地面から溢れている。
神秘的な光景だな。
最後の光景としては及第点だ。
うん。
完璧だ。
世界を救うために自身が犠牲になる。
未来、みんなに認めてもらえる。
うん。
これでいいんだ。
これで……
ー その日、世界が消えた ー
ほんの少しの浮遊感が、自分の体を支配する。
正直、実はほとんど意識がない。
感覚がほぼなくなっているのか、自分が立っているのか倒れているのかも分からない。
『本当にそれでいいんですかっ』
ぼやけた視界に、つんざく耳に声が聞こえる。
ほとんど聞こえないが、確かに声がする。
『本……それ………い……かっ』
だが、その声は少しづつ遠ざかって行く。
『………』
そして新な世界が幕を開けた。
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世界は救われた。
だが、人々はその救われたという実感を得ていなかった。
当たり前だ。
ラミアが想像したのはこの世界だ。
ある程度世界を知ったラミアは、ほとんど同じ大地を創った。
エルタやカルタ、そしてカンナが転移させた建物などもほぼ原型を留めた状態で転移させることができた。
むしろ世界の人々はこの出来事を厄災として将来記していくだろう。
ラミアの創造といっても、完璧ではない。
位置がずれたり、凹凸を間違えたり。
それにより転移させた物が崩れる事象が世界中に起こった。
だから、人々の記憶には、何故か建物が崩れまくった日、位の認識なのだ。
だが、それが本当に救うと言うことなのだろう。
相手に心配させる余裕も与えずに
世界を救う。
本当の意味で彼は救ったのだ。
この世界を……
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世界を創ったすぐあと
景色は殆ど変わらなかったが、一瞬の浮遊感と、温かい魔力奔流が世界を救ったと実感さしていた。
でも、あの温かい魔力はなんだったのか
みなそんな事を考えていた。
そして知った。
その魔力がなんだったのかを……
「ふ、ふざけないでください!!」
「亮太たっての希望だったからな……」
確かに世界は救われた。
だが、そこに本当の意味で救った者は居なかった。
「そ、そんなの……そんなの!!」
そんな事実に、打ちのめされていた人物達がいた。
「せっかく会えたのにっ……」
会えたのに……そう言いながら元の口調も忘れ
ラミアは涙を流す。
「本当に他に方法はなかったんですか……」
表情の落ちたリアが、静かに呟いた。
その落ちた表情はどこか不気味で、そして悲しかった。
「なかった」
その言葉が3人の胸に突き刺さる。
「ふじけんなよっ!」
エルタは叫ぶ。
心のままに、昔のように衝動を爆発させる。
だが、昔とは違った優しい気持ちを……
「やっと……やっと……全部のしがらみからっ」
自分のことのようにそれぞれが想う……。
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きっとこの結末はバットエンドなんだ。
だが、主人公にとってはハッピーエンドなんだ。
そんな、自分勝手なハッピーエンド
それは、身勝手なバットエンド
だがこれは……
エンドを気にしないでいいラブコメである。
本当のハッピーエンドはまだ終わっていない。
問答無用なハッピーエンド
本物の主人公に彼はなるのだ。




