どうしてこうなった……
いや、なんでこのタイミングでリアが……
「予想通り、あの夢は真実でした。なら亮太はここにいるかなと予想し」
「私がですよっ、私が推理したんですよ!」
「来たというわけです……」
あ、ラミアもいたんだ……
「で? なんで神様になる資格がショートカットっていう魔術なんだよ」
「……私にも分かりません!!」
久しぶりに会ってだいぶはっちゃけてるな、リア
ただこのキャラ、ものすごくイラッてくる。
「……じゃあなんで出てきたときあんなこと言ったんだっ?」
あんなこととはもちろん『私が答えましょう!!ババンッ!!』の所だ。
「ノリです」
俺は遠くのリアに向けて手をかざす。
『重力魔術』
「ギュッと」
「ん?……はっ!痛い痛い痛い痛いっ!!!」
「ふー、ちゃんと話せ。ノリで話すな」
「りょ、了解です……」
頭をさすりながら、ゆっくりと立ち上がる。
うん。さすがにノリだけでさらに状況をややこしくされると本当に腹が立つ。
こっちはいろんな情報がありすぎていろいろとパンクしてんの。
ちょっと進むの早くない?
「……私がこの世界に生れた時、神として生れた時に唐突に頭に入ってきた情報です」
「神の権能、この世界での全ての情報が頭にインプットされる。それは普通だが……」
「……ならなんでリアとカルタさんは違う智識なんだ?」
「…………。わからん……」
「わからんかー」
「……はい」
……まぁでもいいか、それがわかったところで俺の結論はかわらない。
「……とりあえず、さっき言った魔術を使えば、出来るかもしれない……世界を救うことが……」
「……へぇ、おもしろい」
褐色の男が言う。
「だが、それは俺の上の方、オーディンも諦めた事をすると言うことだ……それが出来るのか?」
「わからない……」
「ふっ、なら……」
「でもっ」
でもさ……
「俺はやらなきゃと思う。世界を救うとかじゃなくて、俺の仲間を……彼女たちを救うためには……」
「……あーやだやだ」
褐色の男が槍を右手から左手へと持ち替える。
「これだから諦めの悪い子達は……」
「はい?」
気配が変わった。
これは……神の気配……
「我が身には三つの魂が宿っている……一つは魔族クロムゼス……一つは我が配下ルーク……そして我……」
「っ、クロムゼス! この国の……」
似てると思ってたけどそういう……
「我が名は……」
背中から虹色の光沢を放つ翼が生える。いや、生えると言うより現れたという方が正しいか……
その翼は明らかに異常なまでの魔力を内包している。これがこいつの魔力の正体か……
闘技場全体が揺れる。
「我が名はオーディン……この世界で2番目に強き神なり……」
空中へと羽ばたき、周囲にかぜがうまれる。
「奴を殺す駒は揃い。世界を維持する石を壊すのも時間の問題だ」
「おいおい……マジでついていけねーよ」
「……それは同感」
「私は亮太さんに会えたから無問題です」
こいつまじでさぁ……空気よもーよ。
「……この世界は終わりだ。どれだけ頑張った所で……終わった世界は盛り返せない……」
「なぜだっ!!なぜそんな事を言える!!!」
「それはお前が……もう一人のお前が一番分かっているだろう……」
「もう一人の俺?」
「……なぁ亮太よ……」
「ちょっと遅くなっちゃったよー」
「なぜわざわざこいつらを連れてきた」
すると、吹き抜けになっている闘技場上空からチャラくなった俺と紅い髪の女性、それに……
「おいおまえらはやいぞ、そんないそぐひつようがあるのか?」
「なんで私が……」
「これ私いる必要あるですか?」
「リアいたんなら転移で来れば良かった……」
ナラマ様、師匠、歩、エルタだ
彼女らが来たとたん、すぐにチャラい俺が説明を始めた。
再開を喜ぶ暇もなしか……
「……この世界を壊すことでしか救えない理由……それは…………俺だ……」
「俺?」
「つまり、神野亮太は壊すしかない原因を作っている」
チャラい俺がパンと手を鳴らす。
「その原因は力だ……」
チャラい俺がそう言うと、紅い髪の女性が補足説明をする。
「力、それはこの世界ではあり得ない大きさの力だ。間違いなく世界を滅ぼす要因となる」
「……いやっ俺はそんなことしなっ」
「でも実際に俺はその力でリアを救い、エルタを助けた。その結果世界は危機に陥っている」
「……それは、そうだけど……」
「……だから消すしかないんだよ」
いや、でもまだ可能性が……
「タイムリミットはもう2時間しかないから……試すことはできないよ……」
……は?
「なっ!! ……いやまて、あと三日はあったんじゃ!! なんで急に……」
「世界が見つけちゃったんだよ、リアとエルタ、それに亮太を」
「……なんで逆に、これまで見つからなかったんだ?」
「君達は基本三人で行動してたでしょ? あれで存在を相殺してたんだよ」
「相殺?」
「簡単にいえば電気器具に対するEMPみたいなもんだよ、天敵だね」
「なら離れてからの一ヶ月は?」
「エルタとリア、亮太とナラマ様……こんな感じだね」
でも……なんでこんな急に……
「嘘じゃないのか?」
「……ほんとだよ。オーディンだってある程度待って、譲ってここまで来たんだ」
「……わざわざ説明せんでよい。要らぬ言葉だ」
「まぁまぁ……とにかく時間がないから……もうそうするしかないってわけ」
「……お前らなにかしてたんじゃないのかよ?」
「俺達は確かにいろいろしてたさ。いろいろして、試してやりきった。でも無理だった」
「そんな簡単に諦めていいのかよっ、せっかく自分の事を認めてくれるひとが出来たかもしれないんだぞ!!」
「…………」
本当にいいのか?
これでいいのか?
こんな結末で……いいのか?
……いや、待て……
こいつは本当に諦めてるのか?
だってそれじゃ……なんであんな遺跡で話したり
こっちの世界に来たりしたんだ?
その瞬間……彼は不適に笑った
「この世界には敵がいない……」
「は?」
「歩をだしたのはなぜだろう?」
「え? わ、私?」
「何言ってるんだ?」
「一つだけ……方法があるかもしれないぜ」
な……
「お前が考えた方法ってショートカットを時空という概念にとばす。そして体内でもうひとつの魔術を生成する。それは過去だ。その魔力に概念を込めたショートカットを放つ、その魔力を世界全域に覆うように発動させる……であってるか?」
「…………そんな感じだ……」
てかよくわかったな……
「でもそれをしても出来るかも程度で時間をかけてしようとしたが、時間はもうない」
「だから諦めるしかってお前が……」
「俺じゃねぇよオーディンが勝手に言っただけだろぉー」
「む、心外だ。我は責任をもって様々な方法を試して無理だったのだ、勝手をした訳ではない」
「……そこ気にすんなよーちっさいなー」
「でも実際に出来るのか? 世界も救って仲間を救うことが……」
「できる……」
……まじか……てか展開まじ速いな……
なんか感傷に浸ったり絶望したり考えることもなく進んでいる。
いいのかこれで?
「…………」
もう一人の俺が黙り混む。
お? なんだなんだ
「亮太、いや俺よ。ひとつ……いや、ここでは言えないから……よし、《転移》」
チャ(以下略)が魔方陣を出現させる。
俺は粒子と化しそのばから消え、ゆっくりと景色が変わった。
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周りを見渡すと荒野だった。
クレーターがたくさんあるので、恐らく俺が修行していたところだろう。
「で、なんでこんな風に、秘密みたいにして言う必要があるんだ?」
「……ひとつずつ説明していきまーすっ!!」
テンション高いなぁ
「……これに必要なのはこの世界にいる人間全員ぶんの魔力が必要だ……そこはわかってた?」
「あぁ、だって一人を過去に送るのは、その人の魔力を過去に送ることだからな……」
「そう、でもそれは最低限必要な数だ。実際に必要な数はその千倍はゆうに越えるだろう」
「まぁ……そのあたりもそう思ってたよ」
「それに世界そのものを過去に送るなんて、さらに魔力を使う」
「わかってる……でもそれぐらいしか方法はない」
「わかってないよ、だってそれじゃ絶対に無理だからね」
「なに?」
なんでそんな事がわかるんだよ
「だってもう試したんだよ、君がこの時代にいくまでに……僕の魔力じゃ足りなかった」
「……じゃあ無理なんじゃ……」
「…………考え方を変えるんだよ……」
「考え方……」
過去を変える以外に方法なんて……
「世界を創るんだよ」
「はいぃ?」
つい素っ頓狂な声をだしてしまう
「物を造ることができる異能者を君は知っているだろう?」
「……ラミアの事か?」
「あぁ」
「でもラミアの能力は制限があった、世界を創るなんて、そんな大きな物を造れるはずがない」
「異能って、どういうものか知ってるか?」
「……魔術では再現不可能な特殊能力……だったか?」
「そうだ」
「でも、ならなおさら無理じゃないか? だって魔術の四属性が無い世界なんて、生きていけないじゃないか……」
だって、空気も土も炎も水も無い世界、生きていけるとはとてもじゃないが思えない。
「なら魔術で創ればいい……」
「……それは……確かに……そうだが……」
「その世界にならみんなで、要石を必要とせず生きていける……」
「……そうか……そうなのか」
少し……いや、大分希望が見えてきた。
「でも一人、犠牲になるかもしれない……」
「なっ、それって」
「あぁもちろんお前の親しい人じゃない……お前の一番知っている奴だよ」
……それって……
「もしかして……俺か?」
「……そうだ。俺だ……」
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